「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」鑑賞


ネタバレせずに語ることは難しいけど、まだ観てない人も多そうなので白文字にしますね。個人的にはどうもしっくりこない内容であったよ。
(以下白文字)

・これ言ったら元も子もないんだろうけど、ファースト・オーダーってなんであんなに強大なんだ?前回の銀河帝国だって武器や軍艦は共和国のものをそのまま流用してあそこまで大きくなったのに、帝国の残党であるファースト・オーダーはたかだか30年で帝国以上の装備を揃えて、共和国軍を完全に駆逐する寸前まで行ってるわけ?まあ話の都合上、強大な敵が必要だったのは分かるのだが圧倒的な戦力の差にはずっと疑問を抱きっぱなしだったよ。

・さらにカイロ・レン(ベン君)には10年以上前からスノークの魔の手が忍び寄っていたわけで、これを考えるとルークたちの勝利してる期間て本当に短かかったなあ。これでスノークがいかに恐るべき敵であるかがきちんと描かれればよかったのに、結局はカイロ・レンのかませ犬であったよ。じゃあ代わりにカイロ・レンいかに恐るべき敵であるかが描かれるかと思いきや、相変わらず猫背の情緒不安な若造で、スノークの親衛隊を倒すのに苦労してる有様だし。あんなのがリーダーで大丈夫かファースト・オーダー。「ローグ・ワン」でダース・ベイダーの無双っぷりがきちんと出ていたばかりに、相変わらずの強大な悪役の不足が嘆かわしい。あとでっかい大砲をラストの脅威に持ってくる展開、そろそろやめませんか。

・そんなファースト・オーダーに追われる共和国軍ですが、後ろから撃たれながら全速力で逃げるという、文字どおり尻に火がついた展開に。主人公たちを切羽詰まった状態に置くというのは間違いじゃないと思うんですよ。ファースト・オーダーがもっと前にジャンプすればいいんじゃないかとか、ジャンプがあんな強力な攻撃方法になるならとっくに武器化されてるよね、と突っ込むのは置いておいて。ただ緊迫した状況にありながら、その解決案が「カジノ惑星に人を送る」というのはアンバランスなのではないか。舞台がカジノ惑星になったとたんに話が間延びするのですもの。そしてそこに登場する、ベネチオ・デル・トロのDJ!なんかスゴいキャラクターなのかと思ったらそうじゃなかった!彼、あれで終わりじゃないよね?あとでどこかで話が回収されるよね?そうでないと出た意味がないのでは。

・キャラクターの点では旧作のキャラクターたちにはふさわしい場が与えられた一方で(アクバー提督は除く。あれちょっとひどくないか)、フィンの立場が結構微妙だった印象を受けた。前作はフォースの覚醒していないレイと同等の立場でいいコンビだったものの、今回はレイが完全に主役になって、ダメロンもリーダー格になったので手持ち無沙汰な感じが。ジェダイというエリートではなく庶民的なキャラクターとしての視点を与えてくれるのはいいのですが、その割にはどうも前作に比べて活躍してなかったよな。

・スター・ウォーズ作品としては最長の尺を持ちながらも、アクションが次々と続くので決して中だるみするような内容ではない。ただその一方で話の展開は意外なほど少なくて、レイはジェダイとして完全には覚醒せず、上述したようにカイロ・レンも究極の悪役にはほど遠いし、そもそもカジノ惑星っていく必要あったののか?という気はするよね。3部作の真ん中として、話の設定にも結末にも時間を割く必要はない余裕があったのは分かるが、今後のディズニーによるSW映画(エピソード9で終わる訳はなく、永遠に続く)は、これからみんなこんな内容になっていくのかなと一抹の不安を抱かずにはいられなかった。

・とはいえラスト30分のクライマックスは手に汗握る面白さなんだけどね。ジェダイじゃなくてもフォースは使えるとか、「スター・ウォーズらしさ」(それが何であれ)の固定観念に果敢に調整したという意味では賞賛されるべき作品でしょう(実際はエピソード1〜3がその役目を果たしているのだが、ファンのお口には合わなかったようで)。次作はまたJJ・エイブラムスが戻ってくるらしいので、例によって過去の作品を焼き直した、あまり冒険をしない内容になるだろうから、今はこの、次はどうなるかわからないという気持ちを吟味しておきましょう。

「HAPPY!」鑑賞


グラント・モリソンがライターのイメージ・コミックスの作品を原作にした、SYFYの新シリーズ。

ニック・サックスはカタブツで有能な刑事だったが、汚職事件に巻き込まれて屈辱的な退職に追い込まれた過去をもち、今はヒットマンとなって自暴自棄な生活をしていた。それでも腕の立つ彼はクリスマスの近づいた晩に殺しの依頼を片付けるものの、その際に狙撃されて救急車に担ぎ込まれる。精神が朦朧とするなかで彼の前に現れたのは、青くて翼を持った陽気なユニコーン、ハッピーだった。ニックにだけ見えて、彼に語りかけてくるハッピーを幻覚の産物だと見なそうとしたニックだったが、ハッピーは彼の知らないことも知っているふしがある。ハッピー曰く、彼はヘイリーという少女のイマジナリーフレンドであり、サンタに扮したサイコ野郎にヘイリーが誘拐されてしまったため、訳あってニックに助けを求めてきたのだという。そんなハッピーはやはり幻覚なのではないかという疑念を抱きながらも、病院から脱出しようとするニック。しかし彼が殺しの相手から聞かされた、財産にアクセルするパスワードを狙って、別の殺し屋たちがニックの命を狙うことになり…というあらすじ。

原作コミックのアートを担当したのが「トランスメトロポリタン」や「ボーイズ」で知られるダリック・ロバートソン。なんつうか下品で暴力的なスタイルを特徴とした人でして、コミックも小汚い格好のニックが人をブン殴っていくという、グラント・モリソン作品にしては比較的異質な内容であったのを記憶している。

その一方でモリソン自身が第1話の脚本を共同執筆していることもあり、話の展開はかなりコミックに沿ったものになっていた。病院でニックを狙う殺し屋なんかはうまく脚色がされて話に厚みが出ているし、「ハードコア・ヘンリー」を彷彿とさせる過激なカメラワークも話の内容によくマッチしている。第1話で原作の4分の1以上を消化しているので、これからはどんどんオリジナルの展開になっていくのかな?

主役のニックを演じるのはクリストファー・メローニ。「ロー&オーダー:SVU」のシリアスな刑事役で知られる役者だが、もともとはコメディ畑の出身ということもあり自堕落なニックがよく似合っている。そんな彼を翻弄するCGのユニコーン、ハッピーの声を務めるのがパットン・オズワルドで、まあオズワルドの出てる作品にハズレはないよな。あとは別の殺し屋役でパトリック・フィッシュラーなども出ています。

まあこの高いテンションをどこまで保持できるかがシリーズ存続のカギなんだろうが、第1話は結構面白かったですよ。これをきっかけにグラント・モリソンの作品の映像化がもっと進まないかな。ロバート・カークマンくらいの扱いは受けてもいいと思うんだが。