「カウボーイ&エイリアン」鑑賞


エクステンディッド版を観たんだが当然どこがどう長くなってるのかは分からず。というかただでさえ抑揚のない映画がさらにダラダラとした展開になっていたような。

原作のコミックをまったく知らないことを踏まえたうえで言わせてもらうと、起承転結の「転」が抜けてるような作品。すべての映画に起承転結を求めるわけではないけれど、『エイリアンが来た=>身内がさらわれた=>エイリアンを追跡する=>彼らをやっつける』という展開は味気ないでしょ。エイリアンの意図などをもっと早い段階で明らかにして、それに対して主人公がどう戦うか、という流れにしたほうがよかったような気がする。おかげでエイリアンが人間を何のために捕獲してたのかとか、主人公のあの武器はなぜあそこにあったのかといった点がきちんと説明されてないんだよな。単に凶暴で怖いエイリアンというのは「ATTACK THE BLOCK」みたいなパニック映画でなら通用するかもしれないけど、こういう長尺の映画ならもっときちんと悪役を描くべきだろ。

あと気になったのが登場人物の多さで、彼らの描写に中途半端に時間を割いているものだから話が全体的に散漫になってしまってたな。アダム・ビーチのインディアンとか、サム・ロックウェルの医者にあそこまでキャラを立てる必要はなかったろうに。その一方で主人公は記憶喪失だし、ハリソン・フォード演じるオヤジはしかめ面してるだけでさほど活躍しないし、どうも主人公たちのキャラのほうが弱いのではないかと。

とはいえガタイのいいダニエル・クレイグには寡黙なカウボーイの役は(外見だけでも)ハマっていたな。一方でハリソン・フォードは実生活そのままのガンコオヤジを演じてるだけで、もうちょっと演技しようよ、といった感じ。「恋とニュースのつくり方」ではこの演技の幅の狭さをうまーく役にはめてたんだけどね。あとはポール・ダノとかウォルトン・ゴギンズとか出てるのにあまり見せ場がなくて勿体ないなあ。

その題材ゆえにコメディっぽくなると当初は考えられていて、製作側が必死にそれを否定した経歴のある映画だが、確かにもっと痛快な活劇っぽくしたほうが良かったかもしれない作品。

「Tucker & Dale vs Evil 」鑑賞


日本でもトレーラーが一部で話題になってたホラーコメディ。というか純然たるコメディ。

ウェストヴァージニアの湖畔へキャンプにやって来た大学生たち。彼らは途中で立ち寄った店でタッカーとデールという2人のヒルビリーに目をつけられて不気味に感じるが、実はタッカーもデールも単なる気のいい田舎者であった。しかしそんなことを知らない大学生の1人が夜中に彼らの姿を見て驚いて昏倒してしまい、タッカーたちが彼女を介護のために自分たちの小屋に連れて行ったことから、残りの大学生たちは彼女が猟奇的な殺人犯に誘拐されたと思い込み、『救出』を試みるものの、勝手に自滅して1人また1人と凄惨な死を遂げていく…という内容。

タッカーを演じるのは「トランスフォーマー3」のアラン・テュディックで、デール役は「REAPER ~デビルバスター~」のデブ君。彼らに介護される女子大生は「30 ROCK」の悩殺美女アシスタントの子が演じてたのか。役柄がまったく違うから気付かなかったぞ。

「悪魔のいけにえ」とか「13日の金曜日」みたいな「田舎で惨殺される大学生」もののコンセプトを裏返した発想は見事だと思うものの、脚本や演出がその発想に追いついていってないところがとても残念。そもそもトレーラーがおいしいところ(=死亡シーン)を殆どバラしてしまっているため、本編を観ていてあまりサプライズがなく、変に話の進行に予定調和がとれたものになってしまっていたよ。トレーラーを無理に長尺にした映画という感じ。

またタッカーとデールも大学生たちもみんなが「いい人」たちであることが冒頭から明らかであるため、大学生が次々と死ぬところもだんだん素直にわらえなくなってくるんだよな。彼らの1人がサイコ野郎になる展開とかは面白かったんだけど、もうちょっとヒネリが欲しかったというか。冒頭の伏線(?)もうまく回収できてなかったし。

アイデアは素晴らしいのにそれをきちんと活かせなかったのが勿体ない作品。トレーラーは面白いんだけどね…。

「マネーボール」鑑賞


とても丁寧な脚本だなあ、というのが第一印象。アスレチックスの苦境が説明される所から始まり、セイバーメトリクスへの出会いと実践の過程に主人公の過去や私生活の描写が絡み合い、選手たちと親密になるのを避けていた主人公がやがて彼らと親しくなっていくという人間的な成長の様子も描かれ、スポーツの見せ場もちゃんと押さえられているというムダのないストーリー展開。ハリウッドのトップレベルの脚本家2人が関わると、こういう教科書のような脚本が出来上がるのかと納得。

でもまあ逆に話がまとまりすぎていて、ちょっと小ぢんまりとした出来になっている感もなくはない。20連勝がかかった試合での雰囲気とかは大変スリリングなものの、スポーツ映画に特有のカタルシスを与えてくれる作品ではなかったような。金持ちチームとの違いも年俸によって表されるため、いまいち戦力の差などもはっきりせず、「小が大を制す」快感は感じられなかったかな。尤もこれをスポーツ映画として観るべきではなく、ビジネス映画としてとらえるべきなのかもしれませんが。

そしてスクリーンを観ながら何を考えていたかというと「ソダーバーグならどう撮っただろう」ということでして、よく知られた話だがこの映画はもともとスティーブン・スダーバーグが監督する予定だったのが、スタジオの意向によって彼は降板させられたんだよな。選手を本人たちが演じ、セイバーメトリクスがアニメで紹介され、ジョナ・ヒルの代わりにディメトリ・マーティンが起用されていたというソダーバーグ版「マネーボール」がどんな出来になったかは知るよしもないが、この完成版よりももっと冒険的な内容になっていたんじゃないかと思う。

「HELL ON WHEELS」鑑賞


最近ちょっとゴタゴタが続いたものの、相変わらず質の高い作品を放送しているAMCの新シリーズ。

舞台となるのは1865年のアメリカ。南北戦争が終わり奴隷だった黒人たちは解放され、西部のさらなる開拓に目が向けられるなか、大陸を横断する鉄道の建設が進められ、ユニオンパシフィック鉄道のトーマス・クラーク・デュラントは工事を牛耳って多額の富を手にしようと画策していた。その工事現場にやって来たカレン・ボハンノンは南軍の兵士だったが、最愛の妻を北軍の兵士に殺された過去を持ち、その兵士たちを探して復讐するために現場で働くことになる…というような話。これに元奴隷の黒人とか、測量技師の夫をインディアンに殺された女性とか、キリスト教の洗礼を受けて西洋文化に目覚めたインディアンの若者などが話に関わってくるみたい。

金もかかってるし作りも決して悪くはないんだけど、ウェスタンとしてはちょっと微妙な出来かもしれない。主人公のボハンノンが第一話ではあまり活躍しないし酒に潰れたりしててカッコ良くないのがその原因課と。周囲が一目置くくらいにやたら強く、復讐に燃える男というくらいの描写を見せてくれないと。全体的にどうもウェスタンとしての様式美に欠けてるんだよな。別に「許されざる者」とか「トゥルー・グリット」のようなレベルを求めてるわけではありませんが。

物語のヒールとなるトーマス・クラーク・デュラント(って実在の人物なのか)を演じるのはコルム・ミーニー。俺の大好きな俳優ではあるものの、気のいいオヤジという役柄のイメージが強いのであまりこういうギラついた悪党の役が似合ってるとは思えなかったな。彼を全く知らない人が見たら違う印象を抱くんだろうけど。あとはラッパーのコモンなんかも出演していた。

期待してたほどの出来ではなかったとはいえ、AMCの作品だし今後の展開はもっと面白くなっていくんじゃないだろうか。どうも地上波ネットワークなどでもウェスタンの番組の企画が次々と進行中らしいが、ケーブル局の強みを活かしてタフなウェスタンを作って欲しいところです。

「THE EXES」鑑賞


去年の「HOT IN CLEVELAND」みたいに、レトロな感じのシットコムを製作しているケーブル局「TV LAND」の新作シリーズ。

妻と離婚して家を出たばかりのスチュアートは、弁護士のホリーの紹介で、彼と同様に離婚を経験した男性2人とアパートをシェアすることになる。彼と一緒に住むのはプレイボーイのフィルと内気なオタクのハスケルという性格が正反対の2人で、彼らは几帳面なスチュアートを疎ましく感じていたものの、反対側の部屋に住むホリーの助けもあって3人のあいだには奇妙な友情が生まれるのでした…というような話。

男性3人のドタバタ話、というのはそのまんま「HOT IN CLEVELAND」の裏返しになるのかな。有名どころの役者だと「Scrubs」のドナルド・フェイゾンが出ているぞ。まあ「フレンズ」あたりをベースにしたシットコムで目新しいところは全くないんだけど、逆になんか懐かしい気分で安心して観られるような感じ。これが地上波ネットワークの新作だったならばその凡庸さに文句言いたくなるところですが、TV LANDの作品なので大目に見たくなるわな。こないだの「Last Man Standing」なんかよりも面白かったと思う。