「クライ・ベイビー」のミュージカル閉演

さいきん開演したばかりのような気がする、ジョン・ウォーターズの「クライ・ベイビー」のミュージカル版が早くも閉演するそうな

こないだのトニー賞で何も受賞できなかったのが直接の原因らしいが、最優秀ミュージカルにノミネートされておきながら、受賞できなかったという理由で閉演するというのはシビアだよなあ。既に支払った制作費をどうにかリクープしようとする映画と違い、ミュージカルは上演すればするだけコストがかかるから打ち切りの度合いが高いということなのか。

「ヘアスプレー」は今でも上演されてるらしいから、これでウォーターズ作品のミュージカル化の流れが途切れないでほしいところです。次は「セシル・B・ディメンティド」か「ポリエステル」あたりでどうでしょ。

「MANT!」鑑賞

ジョー・ダンテ監督の、俺が死ぬほど好きな作品「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」(観ろ!)の付属作品である「MANT!」をついに観る。これは「マチネー」の主な舞台である映画館において公開されるホラー映画という、いわゆる劇中劇的なもの。

下の動画を観てもらえれば分かるように、内容は50年代のB級ホラー(具体的にはウィリアム・キャッスルの作品)のパスティーシュ。キャッスルの得意技だった怪しいギミックももちろん含まれていて、何の脈略もなく場面が映画館の中になり、劇中の観客が実際の観客に向かって「あなたの後ろに怪物がいるわ!気をつけて!」なんて叫ぶシーンがあったりしてすげえ楽しい。残念ながらフル尺の映画ではなく20分ほどのものだが、放射能によってアリと同化した男が凶暴化し、しまいには巨大なアリの怪物になって街を破壊する、というのが主なストーリー。人とアリの怪物だから「MANT」。なーんて安直なネーミング。

でもB級ホラーをバカにしたパロディには決してなっておらず、ちゃんと50年代に活躍した役者たちを起用するなど、ダンテの屈折してるようで実直な(あるいはその逆)オマージュがひしひしと感じられる佳作になっている。「マチネー」はDVDも入手困難になっている状況だが、ぜひまた観たいなあ。B級映画監督を描いた作品としては「エド・ウッド」よりも優れていると個人的には思っているのです。

これが「MANT!」のトレーラー:

でこっちが「マチネー」のトレーラー:

宮崎勤の死刑執行

彼の犯行範囲ってうちの実家に比較的近くて、犠牲になった子の一人が、俺の中学の先生の息子と小学校(幼稚園?)で隣の席同士だった、なんて話を聞いたことがあったっけ。

今になって考えると筋金入りの猟奇殺人者だったわけだが、当時発展していた「オタク文化」を、彼の存在が良くも悪くも世の中に広く知らしめることになったんだよな。こないだの秋葉原の事件もそうだったけど、アニメやゲームが好きなオタクを「悪」や「異端」とみなすメディアの風潮の発端は20年前の彼の事件に辿り着くんだろうな。

まあキモオタはバッシングの対象に最適なんでしょうけど、世の中の悪事の大半は「普通の悪い人」によって行われているわけで、別にオタクが猟奇的な存在であるわけではないんだけどね。以前に六本木のディスコで行われた「スター・トレック」のファンクラブのパーティーに招かれたことがあるんだけど、ディスコの上の階では黒服たちのパーティーが行われていたらしく、階を間違えた黒服たちがファンクラブのパーティーに入り込んできてたわけですよ。その光景を見て感じたのは、ヤバそうな雰囲気を持ってるのは明らかにトレッキーたちではなく黒服たちであるということと、それでも社会的に「認められてる」のは黒服たちなんだろうな、ということ。オタクよりもヤクザたちを取り締まったほうが世の中安全になるはずなんだが。

まあ何にせよ、幼い子どもたちの命を奪った事実は変わらないわけで、もし地獄というものがあるのならば、彼にはそこでずっと苦しんでほしいところです。

「Superstar: The Karen Carpenter Story」鑑賞

こないだボブ・デイランの伝記映画「アイム・ノット・ゼア」を監督したトッド・ヘインズが無名時代に作った、カレン・カーペンターの生涯を描いた短編映画「Superstar: The Karen Carpenter Story」を観た。

これはカレンをはじめとする登場人物の殆どがバービー人形によって演じられているのが特徴で、カレン・カーペンターのお人形劇というのはゲイの監督にはたまらん題材だったろうなあ。ただし内容はまるで明るくなくて、威圧的な母親のもとで育ち、自分の体型を気にして拒食症に陥っていくカレンの姿を、暗くもはかなく描いている。低予算作品ながらセットのデザインとかは凝っていて、話の後半になると人形の姿が痩せていくのが妙にリアルだったりする。初期のデビッド・リンチが作っていたアニメに雰囲気は似てるんじゃないのかな。

内容が内容だけにリチャード・カーペンターが観て激怒したことと、カーペンターズの楽曲の使用について権利料を払ってなかったことでリチャードに訴えられ、いまでは公開禁止になってしまった作品だが、そこは21世紀、Google Videoでちゃっかり観えちゃったりする。俺みたいにカーペンターズのファンでなくても楽しめる小品。