「ヤン&エヴァ・シュヴァンクマイエル展」鑑賞

原宿でやってるヤン&エヴァ・シュヴァンクマイエルの展覧会を観に行く。シュヴァンクマイエルといえば「不気味なストップモーションアニメ」の作家としてのイメージが強いけど、意外にも今回はコラージュやペイント画といった二次元アートが中心のものだった。

展示品は比較的近年の作品が多く、触覚をテーマにしたものや「不思議の国のアリス」をテーマにしたもの、さらには江戸川乱歩の「人間椅子」にインスパイアされた一連の作品などが揃い、老いても相変わらず積極的に作品を作り出していることがよく分かる。個人的には最初に展示されてた、博物図鑑のイラストをコラージュしてつくった不気味な架空の動物群がよかったかな、荒俣宏と大伴昌司とボルヘスあたりをかけあわせた感じで。コラージュのセンスが独創的というか、そもそもどういう発想力をもってしたらあんな作品を生むことが出来るのかと非常に感心。ただし奥さんのエヴァによる一連の絵画はなんとなくシロウトっぽいような感じがしてあまり好きになれなかった。しかしああいった不気味な作品をセコセコと何十年も作り続けている夫婦ってのは凄いよな。仕事をしてないときとかは普通の生活を送ってるんだろうか。

というわけで非常に面白い展覧会だったけど、やはりシュヴァンクマイエルは動画作品のほうがいいなあ。

新型iPod発売

hero_overview_20070905.png

音楽鑑賞については第2世代iPod Shuffleで十分なので、そんなにiPodには興味ないのですが、新発売のiPod touchは電話機能のないiPhone、要するに高機能のPDAとして使えるかなと思ってるんだけど、テキストとか表の同期・読み込みってどこまでできるんだろう。でもBluetooth搭載してない段階でダメかも。複数のマックとケーブルなしで気軽にデータをシンクできれば非常に魅力的なんですが。米国ではiPhoneの価格がガクンとさがったそうで、いっそそれを買えばいちばん高機能でいいのかもしれない。

あとiPod Nanoの進化は必然的なものなんだろうけど、あの小さい画面でビデオとかカバーフロー機能をつけたからって、どのくらい実用性があるのかは甚だ疑問。

とりあえず個人的には、年末に出るとされるフラッシュメモリ搭載の薄型ノートブックの発売を信じてセコセコと金をためときます。

「BIG LOVE」鑑賞

512mhsqc-jl_ss500_.jpg

前から観たかったHBOのドラマ「BIG LOVE」の第1話がビデオキャストとして無料配布されてたので早速鑑賞。これは一夫多妻の形で暮らすモルモン教徒の家族の生活を描いたもので、アメリカでは現在でもこうして暮らす人々が2万から4万人近くいるんだとか。

主人公を演じるのがビル・パクストンで、彼の3人の妻がジーン・トリプルホーンとクロエ・セヴィニーにジニファー・グッドウィン、共演にブルース・ダーンとハリー・ディーン・スタントン(!)とキャストの面々は非常に豪華。スタントンのオヤジはいつ見てもカッコいいなあ。あとクロエ・セヴィニーはどんどん顔がジェイク・ギレンホールに似てきてるような気がする。

モルモン教徒の生活を批判したり風刺するような描写はなく、3人の妻と7人の子供たちという大所帯における人間ドラマを真面目に扱った作品になっている。ただし主人公の両親がいるコミューンに住む人々はちょっとフリークっぽく描かれてるかな。実際の彼らの生活がどんなものなのかは想像もつきませんが。第1話の展開は期待してたよりも地味だったけど、アメリカでは来年シーズン3が放送予定ということで、様々な出来事が家族に起きるみたいだ。

ちなみに主人公は大規模なホームセンターを経営する金持ちという設定。多くの女と暮らすにはそれなりの金がかかるってことかい。チェッ。まあ女性に金を貢がせた例もこないだ日本であったみたいだけど。

「Little Dieter Needs to Fly」鑑賞

51g-7l-ff5l_ss500_.jpg

こないだやっと劇場公開されたヴェルナー・ヘルツォークの映画「RESCUE DAWN」のもととなった、ヘルツォーク自身によるドキュメンタリー「Little Dieter Needs to Fly」を鑑賞。

これはディーター・デングラーというドイツ生まれのアメリカ人に関する作品で、子供の頃に目撃した飛行機の素晴らしさにとりつかれたディーターは18歳のときに単身アメリカへと渡り、夜学で勉強しながら大学を出て空軍に入り、念願のパイロットとなる。しかし折しもアメリカはベトナム戦争に突入しており、ディーターも戦地へ向かわされて戦闘機に乗るが、ベトナム軍に撃墜されて捕虜になってしまう。そこで地獄のような拷問を半年にわたって受け続けた彼は、ある日ほかの捕虜たちと脱走を決行する…。というのがおおまかなプロット。

いちおう戦争ドキュメンタリーなんだけど、むしろ空を飛ぶという夢にとりつかれたディーターの姿に話の焦点はあてられており、この1つの夢に向かって突き進んでいく男の姿というのは「アギーレ」や「フィッツカラルド」に似たところがなくもない。もっともディーター本人は温厚にベトナム人たちとも会話するような老人で、キンスキーのようにトチ狂ったところはまるでない。飛行する夢、という点ではJ.G.バラードにも通じるところがあるのかな。ディーターが受けた拷問の再現として、彼の手を後ろで縛ってベトナム兵と一緒に走らせるシーンとかがあるけど、よくあんなこと承諾したよなあ。本人も「思い出が甦って心臓がバクバクした」みたいなこと言ってるし。あとジャングルに生きるベトナム兵の知識と、ジャングルでの遭難を軽視したアメリカ軍の教育映画が対照的に紹介されてるのがちょっと面白い。ああいうのを観ると、アメリカ軍がなんで負けたのかがよく分かるような気がする。

ヘルツォークのドキュメンタリーとしては地味な部類の作品だけど、これが「RESCUE DAWN」でどう映画化されてるのか興味深いところです。

「麦の穂をゆらす風」鑑賞

51cxb9fzwul_ss500_.jpg

ケン・ローチの「麦の穂をゆらす風」を鑑賞。時代設定とテーマ的にはローチの「大地と自由」に近いものがあるが、実質的にはニール・ジョーダンの「マイケル・コリンズ」の裏話的作品といった感じか。アイルランドの歴史に詳しくない人は「マイケル・コリンズ」を先に観といた方が背景を把握しやすいかもしれない。

1916年のイースター蜂起から1922年の内戦にいたるまでのアイルランドの歴史は波乱の連続なので、何をどう映画化したって面白くなるわけだが、この作品では田舎の若者たちの観点からとらえた独立戦争の姿がうまく描かれていて秀逸。ときどきプロパガンダっぽくなるけど、まあそれはローチ作品のお約束ということで。あとローチ作品にしては集団シーンとか先頭シーンがずいぶん凝ってる(金がかかってる)んじゃないかな。気になったのは主人公の扱いで、ノンポリの医学生が義勇軍に加わって殺人を平気で行うようになり、しまいには兄をもしのぐラジカリストになるまでの描写がえらく希薄ではないかと。

あと当時アイルランドがイギリスと結んだ協定が正しかったとは口が裂けても言わないが、あれがそのまま国のバックボーンとなって今日まで続いている現状を考えると、協定に反対する主人公たちにはどこか空しいものを感じずにはいられない。これに関しては「多くの犠牲を避けるために、仕方なしに協定を結んだ」という「マイケル・コリンズ」の描写のほうが悲壮感があって良かったと思う。まあこれは俺のような部外者が軽々しくコメントすることじゃないね。

それにしてもアイルランドって、衣装と小道具さえ用意すれば簡単に1920年代の風景の撮影ができてしまうんだなあ。