映画スタジオ観察

トロントに来て住むところも見つかったし、滞在に必要な申請も行ったわけで、だんだんやることがなくなってヒマになってきた。仕事もそう簡単には見つからないだろうし。かといって一日中家にいるのも何なので、トロント南部にある映画スタジオ地区を見に行く。

場所はダウンタウンから南東に位置する所で、どうも大きなスタジオ群が2つはあるらしい。当然のことながらどのスタジオも塀に囲まれてガードされているので詳細は分からなかったが、かなり大きなサウンドステージが建っているのが遠目に見えた。あの中でセットが組み立てられ、撮影が行われているのだろう。聞いた話では現在でも別のスタジオの建設が進められているらしい。前にも書いたようにカナダの映画産業はややスランプに陥っているわけだが、それでも一つの産業として政府がスタジオ建設に助成金を出しているそうな。日本とはそこらへんが違うよな。

スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー

アメリカでの評判(と興行成績)がイマイチだったので、あまり期待しないで観にいったらとても良く出来た作品だった。セットデザインとかライティングとかが徹底的に40年代くらいの映画のスタイル(特にフライシャー兄弟の「スーパーマン」のアニメ)にこだわってるので、それで好き嫌いがはっきり別れるところもあるだろうが、個人的にはアール・デコのデザインは好きなのでかなりツボにはまった。

ストーリーは冒険活劇の王道を行くような内容だけど、「Mr.インクレディブル」同様に、変なヒネリを入れたりせずに直球勝負をしているので素直に楽しめるんじゃないだろうか。途中で飽きさせないくらいの展開とアクションは十分あるし、思わずニヤリとさせられる場面が多いのも嬉しい。ゴジラが一瞬出てくるのには笑ったし、アンジェリーナ・ジョリーの役はニック・フューリーのパロディでしょ?ラストの痛快な台詞も最高だった。

文句を挙げるとすれば役者の演技で、ジュード・ロウはやけに低い声で話しているのでセリフが聞きづらかったし、グウィネス・パルトロウに至ってはまるで死んだ魚のよう。「自立した強い女性」をイメージしているのはいいけど、40年代SF映画のヒロインならもっと叫んだり微笑んだりしなきゃ。ちなみにアンジェリーナ・ジョリーは10分くらいしか登場せず(インパクトが強いからいいけど)、ジョヴァンニ・リビシは相変わらず永遠の脇役に徹しています。

興行成績が不振だったのと、プロデューサー夫妻(ジュード・ロウとサディー・フロスト)が離婚したことを考えると続編が作られることはまずなさそうだけど、それこそパルプ小説みたいに続編がどんどん作られたら面白そうなのに。

ちなみに映画に登場する空飛ぶロボットを、宮崎駿のアニメのパクリだと非難する人がアメリカでも日本でもいるみたいだが、もともとあれは前述のスーパーマンに登場したロボットを宮崎駿が転用したものなので、誤解なきよう。

トロント3週目突入

トロントに来てから2週間が経過したわけだが、毎日が新しいことの発見なので1日がえらく凝縮されているような感じがして、日本にいたのが遠い昔のような気がしてしまう。大したことがないまま毎日が過ぎていった日本での生活とは大違いだ。ここでの生活に慣れていくにつれ、いずれは時間の進みが早くなっていくのだろうか。

今日はとりあえず就職センターに行き、履歴書などをプリントアウトしてくる。職員の人に映画とテレビ産業に関する資料をもらった。なかなか役に立つかもしれない。昼食はセンター近くのフィッシュ&チップスの店でとる。ちゃんとビネガーが用意されているイギリス式なのはいいけど、やけに油っこくて全部は食べきれなかった。その後は部屋にもどって、就職用の資料の整理などをするが、途中でつい寝てしまう。仕事や運動をしてるわけでもないのに、最近よく眠れるのは、慣れない生活をしているので気がまいってるのだろうか。

MR.インクレディブル

今日も就職用の情報収集…をしたかったのだけど、今日が初日の「MR.インクレディブル」の誘惑に逆らえず、吸い込まれるように映画館へ。平日の昼間だったからか、思ったよりは混んでいなかった。子供連れも多かったけど、学校はどうしたんだろう。

映画の感想は、とりあえず今年最高の作品。今までのピクサーの作品の中でも一番面白いかもしれない。ピクサー作品について誰もが認めていることだけど、とにかくストーリーがよく出来ている。「シュレック」みたいに時事ネタとか二流のパロディに頼らずに、きちんと正攻法のコメディ/ストーリーで勝負して、成功しているのが素晴らしい。「スパイ・キッズ」に似ているという意見もあるらしいが、むしろ設定は「ファンタスティック・フォー」に似ているかな(特にラスト)。もう実写版のFFは観なくてもいいや、というくらい、スーパーヒーロー映画のツボを見事に押さえている感じがした。もちろんCGの出来も驚異的で、アニメ映画というよりも実写のアクション映画に近い雰囲気が味わえる。非のうちどころがないのであまり多くの感想は書かない。とにかく観に行け。俺もまた観に行く。

ちなみに「エピソードIII」のティーザーが冒頭にくっついてたけど、それなりに面白そうだった。まあ話の大まかな流れはもう分かってるので、どこらへんを期待すればいいのか微妙なところではあるのだが。ピクサーの次回作「Cars」のティーザーもあったけど、「MR.インクレディブル」を超える作品になるのだろうか?

就職の電話のかけ方講座

就職センターでまたワークショップに参加する。本来ならば「移民」とか「難民」の肩書きを持つ人が参加するべきワークショップに、ワーキング「ホリデー」で来ている人間が参加するのは何となくバツが悪いのだけれども、タダだし非常に役立つのでまあ許してもらおう。

今回のテーマは「就職用の電話のかけ方」で、これはてっきり「求人欄を見て、人事部に電話をかける際のマナー講座」みたいなものかな、と思ってたら全然違った。なんとカナダには「求人欄などに掲載されていないけれども空いている職」が求人欄に掲載されている職の3〜4倍近くあり(「隠された市場」と云うのだそうな)、その職を得るためにマネージャーに電話して、「仕事は何かないですか」とたずねるのが就職のコツらしい。しかも求職のテクニックとして「受付係や人事部をうまくかわして、マネージャーに直接電話しろ」と教えられたのには驚いた。日本でどこかの課長とか部長に電話して「すんません、仕事ありませんか」と聞いたらふつう門前払いをくらわされるか、ブラックリストに載せられるよな。この他にも「同業種の会社でどこか人を探してるところがないか聞け」とか「直接会ってもらえるように頼め」など、なかなか興味深いテクニックを教えてもらえた講座だった。

これに限らず、とりあえず何かあったら人に尋ねる、というのがカナダの流儀らしいことが何となく分かってきた。そうなると英語が流暢に話せないことは最大のデメリットになるわけで、今後のことを考えると不安になってくる次第である。