「Wynona Earp」鑑賞

Wynonna Earp, Season 1
Syfyの新シリーズ。IDWから出版されているボー・スミス(DCで「ガイ・ガードナー」とか書いてた人ね)の同名コミックが原作らしいが、すまんおれ原作の存在知らなかったよ。

舞台となるのはアメリカの田舎町パーガトリー。伝説の保安官ワイアット・アープが開拓したというこの町に、彼の子孫であるワイノナ・アープが叔父の葬式のため数年ぶりに帰郷してくる。実はワイアットが法のもとに処刑したという77人の悪者たちが悪魔となって蘇っており、「レヴェナント」と呼ばれている彼らを倒せるのはワイアットの子孫だけなのだが、すでに戦いで父親と姉を失ったワイノナは自らの運命を嫌って町を離れていたのだ。しかし帰郷しているあいだに町が悪魔に狙われ、妹が誘拐されたことを知った彼女は、悪魔を倒せるワイアットの銃「ピースメーカー」を抱え、悪魔たちから町を守ることを決意するのだった…というあらすじ。

ワイノナの味方には彼女の妹や政府の超常現象部門のエージェント、あと蘇ったドク・ホリデイ?なんかがいるのだが、レヴェナントを倒せるのはアープ家の年長者でワイアットの銃でのみ、とか微妙にややこしい設定があるみたい。ワイノナもケンカが強いんだか弱いんだかよく分からないし。

カナダで低予算で撮影された典型的なSyfyのアクション番組といったところですが、全体的なノリは意外と悪くない。出演者も比較的無名の人ばかりなものの、主演を務めるメラニー・スクロファーノも役にはまってるのではないかと。まだ荒削りなところが多い印象は否めないが、もっと洗練してくればそれなりに楽しめる番組になるかもしれない。

「ANOMALISA」鑑賞

Anomalisa
チャーリー・カウフマンの新作。以下はネタバレ注意な。

元々は10年くらい前に音声のみの劇として上演されたものを、ストップ・モーション・アニメとして映像化したもの。人形の動きとかが、むかしアダルトスイムでやってた「モラル・オレル」に似てるな、と思ったら共同監督のデューク・ジョンソンは「オレル」のクリエーターだったディーノ・スタマトプーロスのもとで働いていた人なんですね。

舞台は2005年。仕事のためにLAからシンシナティにやってきた中年男性のマイケルは、ひとりホテルにチェックインしたあと、かつての恋人に会おうとして彼女をバーに呼び出す。しかし久しぶりの再会もケンカで終わり、寂しく部屋に戻った彼は、別の部屋に宿泊しているリサという女性に出会う。彼女に魅かれるものを感じたマイケルはリサを自分の部屋に誘い、二人は親密な夜を過ごすのだったが…というあらすじ。

デューク・ジョンソンの姉の元夫をモデルにしたというマイケルの声を演じるのがデヴィッド・シューリスで、シャイな女性であるリサの声を演じるのがジェニファー・ジェイソン・リー。その他のキャラクターの声はすべてトム・ヌーナンがあてていて、マイケルの元彼女などから男の声がするのは変に感じられるけど、すべて意味があるんすよ。

アニメーションの出来も素晴らしく、人形の表情がものすごく豊かで人物の感情を的確に表現している。ホテルのデザインなども丁寧に作り込まれていて非常に美しい。一方で「コラライン」などでは消されていた顔の目の部分の継ぎ目がそのまま残されているし、やけに艶かしいセックス描写なんかは人形を使う必要があったのかと思ったけど、これもまた意味があって、人形アニメでないとできなかった表現がきちんと隠されてるわけですね。

話のプロット自体は比較的シンプルな反面、最後のセリフも含めて「ん?」と感じるようなところがいくつかあるわけですが、観終わったあとでそれらについてよくよく考えると、ちゃんと意味が隠されていることに気づくのですね。ホテルの名前とか。

思うに自分と他者とのアイデンティティの境界が大きなテーマになっていて、海外では内容についてある1つの解釈が主流になっているようだけど、それが正しいと思うかどうかは観た人の判断にまかせます。鑑賞後にいろいろ考えさせられる作品であった。

あーげましゅよーあーげましゅよー。

「The Forbidden Room」鑑賞

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「バットマン vs スーパーマン」観た反動でアート映画も観ましょうね、ということで。

カナダにガイ・マディンという映画監督がいまして、サイレント映画や初期のトーキー映画のスタイルを踏襲したビジュアルの作品を作ることで知られてるらしいのですね。単に「アーティスト」みたくサイレント映画を再現しているというよりも、もっとカットアップの手法を用いたり、撮影シーン自体を一般公開したりして、いろいろ前衛的なことをやってるそうな。まあ俺も詳しくは知らなかったのですが。

そして昨年のサンダンスで公開されたこの作品も、50年代のジャンル映画のパスティーシュみたいになってまして、「らしい」映像があまり脈略もなしに2時間こってり続くという内容になっています。最初はオッサンが風呂の入り方について語る公共メッセージのような映像から始まり、溶けて爆発しかねないゼリーとともに潜水艦に閉じ込められた兵士たちの物語になり、そこに木こりがひょっこり現れ、今度はその木こりが女性を取り返すために盗賊団のアジトに乗り込む話になり…といった話が、きちんと説明されないままずっと続いていくの。あとは他人の尻に魅かれる男性が脳手術を受けるさまが歌にのって語られたり、保険詐欺を強要するガイコツ女たちが登場したり。訳わかんないでしょ?

でも映像をただ並べているわけではなく、ときどき鋭いジャンプカットなんかもあったりして、それなりに入念な作り込みはしてるみたい。役者もウド・キアーやシャーロット・ランプリング、マチュー・アマルリックといった有名どころが出演してたりするのだが、映像が鮮明ではないために誰が誰なんだかよく分からなかったな。

1つ1つのシーンを観ると、意外と面白いところは多いんですけどね、これを2時間観るのはしんどかったな。でも批評家には例によって絶賛されてるようで。「バットマン vs スーパーマン」などとは全く別の世界の作品なのでしょう。

「A Sailor’s Story」読了

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DCコミックスやデルなど戦争ものやウェスタンのコミックを描いていたサム・グランズマンが、第二次大戦における自分の従軍の経験を綴ったコミック。元々は1987年と89年にマーベルから出版された2冊を合本して、ドーバー社が昨年出版したもの。

真珠湾攻撃から1年後の1942年の末、18歳になったばかりのグランズマンは海軍への従軍を希望し、駆逐艦USSスティーブンスへと配属される。狭い船のなかに乗組員の男たちがひしめくなか、スティーブンスはパナマ運河を渡りハワイへ抜け、さらにサイパンなどに配属され、グランズマンは様々な出来事を経験して一人前の海の男へと成長していく。

内容は日本軍との戦闘よりも駆逐艦の日常生活に多くのページが割かれているが、こないだ他界した水木しげる同様に、兵士たちのおかしな日常というのは実際に経験した人じゃないと描けないですね。赤道を通過する際の儀式とか、船を脱走して中国の娼館に行った話とか、艦の中は暑苦しいので甲板の上で寝ようとした話とか、我々には想像もできないような話が次々と語られていく。またスティーブンスの内部や武装についても詳しく説明がされており、ミリタリーマニアの人にはたまらない内容になってるんじゃないでしょうか。
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しかし日本軍と違うなあと思うのは、艦の食事は常に新鮮で大量にあり、コーヒーは飲み放題。空母にはアイスクリーム製造機があるのに駆逐艦にはないと愚痴をこぼせるほどの贅沢さ。当時のグランズマンはキザっぽくポニーテールを結わえ、自ら機関士への異動を志願したにもかかわらず、想像とは異なる職場であることを察した彼は、毎日のように上司の目を逃れて仕事をサボり、しまいにはまんまと別の部署へと異動してしまう。これ日本軍だったら上司にリンチされて半殺しの目に遭っていたのではないか。

こういう楽しげな日常生活が描かれる一方で、戦争の惨禍についてもきちんと説明がされており、船員の何人かはPTSDを発症してある者は頭がおかしくなり、ある者は何もせずにただ甲板に座りつくしている。また戦争の後期になると日本軍が神風特攻を行うようになり、噴煙をあげて戦闘機が艦に突っ込んでくるさまが驚異とともに描かれていた。
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スティーブンスはミッドウェイや沖縄でも激戦地からは離れていたようだし、グランズマンも機関室にいたはずなのでどこまで戦闘を実際に目撃してたのかはよくわからないけど、大空を舞う日本の戦闘機を彼は龍にたとえ、日本人兵士をちゃんと敬意をもって描いている。また戦争によって破壊されつくしたマニラや、サイパンの集団自決によって海に浮かぶ死体などについても描写がされていた。
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グランズマンはいま91歳だがまだ存命で、第二次大戦の物語はここに収録されたものの他に数多くの作品を描いている。たしか神風パイロットについて詳しく扱った作品もあったはず。この本の評判がよければドーバー社はさらなる再販を企画しているらしいので、彼の作品がより多くの人の目に触れることに期待します。

「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」鑑賞

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公開したばかりなので簡単な感想を:

・アクションシーンが多くてそれなりに楽しめはするものの、全体的にはなんか観ていて疲れる、マイケル・ベイ作品のような映画。さすがにザック・スナイダーってベイほどアホではない(と思う)からコミックからの引用を散りばめてはいるものの、「ウォッチメン」同様に原作の要所要所をつまむのに忙しくて、全体としては盛り上がりに欠けてしまっている感じ。尺は長いのにカメラワークは単調だし、キャラクターの内面は描かれていないし、この監督はどうもストーリーに力を入れないね。

・話の舞台がどこなのか分からないシーンがいくつかあったが、そもそもメトロポリスとゴッサムって岸をはさんで見通せるくらい近くにある設定なのか?それでワシントンDCへは飛行機で行く距離?

・「エクスカリバー」って公開時はR指定だったはずだが、ウェイン家では子供にも見せるんですね。

・出演者ではメインキャストよりもホリー・ハンターの演技がいちばんよかったと思う。出演が途中までなのが残念。

・ワンダーウーマンはカッコいいものの、ガル・ガドットは英語力がどうも不安だな。私服の時はアマゾンというよりもモサドのエージェントのようであった。

・アメコミを長年読んできましたが、両者の母親の名前がどちらもマーサだということは気づかなかった。これは素直に脱帽する。

・バットマンのクリエーターの新クレジットは、「シーゲル&シュスター」とは違って「ケイン with フィンガー」なんですね。

・夢オチを2回も使うな。アホか。

個人的にはやはり、監督がスーパーマンの魅力を分かってないんじゃないかという点がいちばん気になりましたね。他の星から来た異質の存在として描くのもいいけど、スーパーマンってそれだけじゃないだろうと。本国では批評的に酷評されている一方で興行的には大成功しそうで、今後のDCコミックス作品もこの暗いトーンで続々と映像化されるのかと思うと、どうも不安を感じずにはいられないのです。