「ドクター・フー」シリーズ5 終了

キャストが一新されただけでなく、作品の統率者がラッセル・T・デイビスからスティーブン・モファットに変更されたこともあって、全体的に荒削りというか、行き先を模索してるような印象のあったシリーズであった。でも最後の2エピソードは大変素晴らしい出来だったので、このクオリティが続くようなら将来は明るいだろう。

今シリーズでいちばん良かったのは何といってもマット・スミス演じる11代目ドクターで、その不思議さと奇妙さが混じった雰囲気が大変素晴らしく、デビッド・テナントの10代目のイメージを良い意味で完全に払拭することに成功している。彼のコンパオンとなるエイミーはちょっと表情が乏しいような気がするもののいい感じだし、その婚約者であるローリーが脇役からどんどん重要な役になっていくところも良かった。

引っかかるところがあるとすれば、アレックス・キングストン演じるリバー・ソングか。全13話中4話に出てきて、それでも彼女が何者なのか分からないというのはどうかと。でも次のシリーズで他の謎とともに彼女の正体が明らかになるはずなので、あっと驚くような展開が待ち受けてることを望みます。

俺にとってのベストであるシリーズ3の出来には達していないものの、非常に楽しめるシリーズであった。個人的なお薦めは「The Eleventh Hour」「Victory of the Daleks」「The Lodger」および最後の2話あたりかな。シリーズ6はニール・ゲイマンによるエピソードもあるらしいし、今から期待しときましょう。

「PIONEER ONE」鑑賞

製作費はすべて募金によって賄われ、クリエイティブ・コモンズのもと無料で公開された、インディペンデント系のTVシリーズの第1話。

地球に向かって落ちてくる人工物がある日発見され、それはアメリカの国土に放射線をまき散らしながらカナダのカルガリーに墜落する。調査に向かったアメリカのエージェントたちが発見したのは、旧ソ連の宇宙服を着た謎の人物だった。彼の手記などを調査した結果、彼は火星に建造されたというソ連のコロニーからやってきた人物らしいことが判明するのだが…というような内容。ウォーレン・エリスのSFコミックに話は似てなくもない。

全体的にいい線はいってるんだけど、惜しいなあという出来。風呂敷を広げすぎたというか、国を揺るがす大事件を扱ってるはずなのに、登場人物も少ないしロケーションも限られているなど、製作費の無さがあちこちに感じられる内容になっている。役者の演技も大根だし音声も聞き取りにくいし。もうちょっと工夫したアプローチがあっても良かったんじゃないかと思うけどね。例えばニール・ブロムカンプの短編なんかは短くても彼の才能を感じさせる出来になっていたけど、この作品は物語をカバーするのに全力を使い果たしちゃいました、というような感じがするのが非常に惜しい。

公式サイトではまた募金が集まったら残りのエピソードを作るって書いてあるんだけど、どうすっかな、数ドルくらいは募金してあげようかな。

「RED」トレーラー


ヘレン・ミレンやモーガン・フリーマン、ブルース・ウィリスにジョン・マルコヴィッチという爺さん婆さんが銃をぶっ放す「RED」(Retired, Extremely Dangerous)という映画のトレーラーが上がっていた。これって原作はウォーレン・エリスのコミックなのか。全然知らなかったよ。

最近は「ジョナ・ヘックス」とか「キックアス」などといったコミックが原作の映画が不調なので、この「RED」についても一抹の不安を抱かずにはいられないのですが(しかも「ヘックス」同様にマルコヴィッチが出てるし)、仏頂面でマシンガンを連射するヘレン・ミレンは絵になるなあ。

「PERSONS UNKNOWN」鑑賞

NBCの新作シリーズで、主人公たちが意味不明の状況におかれて、ゆっくりゆっくり謎が明かされて行くという、いわゆる「LOST」的な作品。数年前はこうした「LOST」をパクった番組が山ほど作られてたんだけど、ことごとく失敗して、昨年の「フラッシュフォワード」も撃沈したから、もはやサマーシーズンにこういう番組は追いやられるようになったんだろうか(尤も今秋には「THE EVENT」というのが来るみたいだけど)。

話の主人公となるのは、アメリカ各地から何者かによって誘拐されてきた6人の男女。彼らは古風なホテルのなかで目を覚まし、外に出てみるとそこは閑散とした小さな町だった。しかも彼らは足に何かのデバイスを埋め込まれ、町から出ることができないようにされていたのだ。そして彼らの行動はすべて監視カメラによってモニターされていた。彼らをここに連れてきたのは何者か?そしてその目的は?…というのが大まかなプロット。

いかにもセットであることが分かる町のなかで主人公たちがウロウロするだけの話なので、安く作られたんだろうなあ…というのが第一印象。「ユージュアル・サスペクツ」の脚本家であるクリストファー・マッカリーが企画した番組らしいが、あの映画並みのクオリティを期待してはいけません。舞台が小さな町、という点では「プリズナー」にちょっと似てるかな。あと町にはいちおう住人がいるんだが、主人公たちにご飯をふるまうのが何故か中国人の集団で、「英語を話さない不気味な奴ら」として描かれているのが不快。これが黒人とかヒスパニックの集団だったら放送できてなかったと思うよ。

もとから13話しか作られない予定らしく、その点では「ハーパーズ・アイランド」みたいなミニシリーズ的な扱いになるのかね。あれよりかは謎の盛り上げ方とかも巧いし、ずっと面白いとは思うけど、次も観たいという気にはならなかったな。ウィキペディアであらすじだけ追ってればいいや、という感じの作品だった。

「Batman: City of Scars」鑑賞

バットマンのファン・ムービーだそうな。映像がうまく埋め込みできなかったけど、こちらのサイトでフルに観ることができるぞ。

内容はアーカム・アサイラムから脱走したジョーカーが政治家の息子を誘拐したうえ、7月4日の祝日に惨事を巻き起こそうとするのをバットマンが阻止しようとするが…というようなもの。ジョーカーのほかにもハーレー・クインやミスター・ザズ、さらにはヴェントリロキストなんていうなかなか通好みのキャラクターが登場していた。あとクレジットによるとブラック・カナリーも出てるようなのだがどこにいたのか分からず。

アクションとかガジェットも凝っていて、遊園地での撮影などを見る限り結構金をかけて製作しているみたい。ただし約30分と比較的長尺のせいか、すこし話が散漫に感じられたかな。同じバットマンのファン・ムービーだったら、数年前に話題になった「DEAD END」のほうがクオリティは高かったかな(人それぞれでしょうが)。

こういう優れたファン・ムービーが作られると「ハリウッドの映画より面白い!」という意見を必ずといって目にするのだけど、バットマンの場合は「ダークナイト」という大傑作があるからなあ。特にヒース・レジャーのジョーカーを超えるジョーカーは今後出てこないと思うぞ。むしろ「デアデビル」とか「パニッシャー」あたりのファン・ムービーを誰か作ってくれないかな。