「Don’t Trust the B—- in Apartment 23」鑑賞


ABCの新シリーズ。別名「Don’t Trust the Bitch in Apartment 23」もしくは「Apartment 23」で、日本では「23号室の小悪魔」って題名になるんだっけ。前も書いたように、変にリスキーな題名にしたって見返りは少ないと思うんだけどね。ABCっていちばん保守的なネットワークなのに何をしたいのやら。

大きな期待を抱いて田舎町からニューヨークにやって来たジューンは、仕事の初日に会社が摘発されて閉鎖されるという憂き目に遭い、会社が用意してくれたアパートを追い出されてしまう。このまま故郷に帰るわけにもいかず、ルームメイトつきの部屋を探した彼女は、クロエという女性が住む23号室のアパートへと移ることになる。しかしクロエは天性の詐欺師で、いままで多くのルームメイトを騙して財産を奪ってきたばかりか、ジューンの婚約者まで寝取ろうとするのでした…というようなプロット。

小悪魔クロエを演じるのが「ブレイキング・バッド」で大変素晴らしい演技を見せてくれたクリステン・リッター(はあと)。彼女の元彼氏という設定でジェームズ・ヴァン・ダー・ビークが本人自身を演じていて、未だに「ドーソンズ・クリーク」のドーソン役だけで知られ、最近はあまり売れてない俳優、という実際の境遇を的確にとらえたキャラクターになっている。これはうまく扱えば面白くなりそうな設定なんだけど、他のキャラクターとどこまで馴染むことができるのかはよく分からんね。そしてジューンを演じるのがドリーマ・ウォーカーという女優なんだけど、ちょっとケバくて田舎娘に見えないのが残念。もっと素朴な外見にしたほうがクロエとの対比が目立っただろうに。

女性中心のアパートメントものということで、「NEW GIRL」に近いノリがあるかな。女性同士の軽快なやりとりがある分、個人的にはこっちのほうが好きかもしれない。あとはやはりジェームズVDBの存在がどこまで話にうまく絡められるかがポイントだな。みんな「ドーソンズ・クリーク」って憶えてる?トム・クルーズの奥さんが出てたそんな番組があったんだよ!

「BEST FRIENDS FOREVER」鑑賞


これまたNBCの新作コメディ・シリーズ。

サンフランシスコに住んでいたジェシカは夫と離婚したことから、ニューヨークにいる親友のレノンのところに引っ越すが、そこにはレノンのボーイフレンドであるジョーも同居しており、彼らと暮らすことになったジェシカは何となく気まずい立場に置かれ…といった感じのプロット。

ちなみに「レノン」って女性のファーストネームでもあるのね。ジェシカとレノンをそれぞれジェシカ・セント・クレアとレノン・パーハムという女優が演じていて、彼女たちがこのシリーズのクリエイターでもあるらしい。ゲームばかりやってるボンクラのジョーは「HAPPPY ENDINGS」のゲイの人に似てるなあ、と思ったら元々彼がキャスティングされてた役なのか。

昨日の「BENT」同様に、コメディとしてはジョークが足りないんじゃないの、といった感じの作品。その一方で恋人同士のケンカとかがリアルに描かれてたりするので、どこらへんでどう笑っていいのか戸惑ってしまうな。出演者の演技は巧いし男女関係を描いたドラマとして観るとそんなに悪くないんだけど、シリーズとしてどうやって話を続けていくことが出来るのかは不明だな。まあシットコムを第1話だけで判断するのは非常に難しいところではあるのですが。あと黒人とイタリア人がちょっとステレオタイプ気味に描かれてるのが気になる。

最近よく「AV CLUB」では「マルチカメラのコメディは廃れたのか?」みたいなことが書かれていて、まあ個人的にはマルチカメラのシットコムってそんなに好きではないものの、この作品みたいな登場人物も少ない恋愛コメディだとマルチカメラのほうが向いてるんじゃないかと思う。単にシングルカメラのコメディには「アレステッド・ディベロップメント」という大傑作があるためにどうしてもあちらと比較してしまうだけかもしれませんが。

第1話の全部がアップされてた:

「BENT」鑑賞


最近はケーブル局にさえも視聴率で負けて、凄惨な状態になっているNBCの新作シリーズ。これコメディ…だよね?

離婚した夫がインサイダー取引で服役中のアレックスは、1人娘のチャーリーを抱えたシングルマザー。彼女は引っ越した家のキッチンを改装しようと大工のピートを雇うが、彼は元ギャンブル中毒の女たらしで、アレックスも口説こうとしてくる始末。肝心の仕事もいい加減なためアレックスはピートをクビにしようとするものの、彼にチャーリーがなついたこともあり彼を再び雇うことに。こうしてアレックスとピートは微妙な仲になり…というようなプロット。

アレックスを演じてるのがアマンダ・ピートなんだけど、彼女はどの作品でも肩に力の入った真面目で幸の薄い女性を演じてるような?そしてこの作品の第1話は、彼女が主演してそうなロマンチック・コメディ映画の最初の30分かと勘違いするような内容であったよ。おカタいキャリアウーマンがボンクラの男と出合い、最初は反発するもののやがて恋仲になる…というような黄金のパターンのやつ。それはそれで結構だが、TVシリーズでそれやると話が続かないんじゃないかしらん。

そしてボンクラのピートを演じるのはデビッド・ウォルトン…って誰だ?「キッズ・オールライト」のマーク・ラファロに少し似てるかな。彼の父親を演じるのがジェフリー・タンバーで、アレックスの娘のチャーリーを演じるジョーイ・キングって「ラモーナのおきて」の主役の子なのか。あとは「Friday Night Lights」の人なんかも出演している。

最近のトレンドに乗っ取ってシングルカメラのスタイルをとっているものの、話のプロットとか音楽の使い方から察するに「フレンズ」みたいなマルチカメラのシットコムにしたほうが良かったんじゃないかな。コメディにしてはジョークが少ないし、ドラマにしては話が凡庸だし…という煮え切らない感想が残る作品。とはいえ本国での批評家の評判は高いようなのですが、NBCが全然宣伝しないまま放送したため視聴率はヒドいものだったらしい。よってあっという間に終了するであろう作品。

「ヒューゴの不思議な発明」鑑賞


これ大変素晴らしい映画ではないですか。まさかスコセッシが人生のこの時点においてこんな作品を作ってしまうとは。

フィクションのなかに史実を丹念に織り込み、少年の物語でありながらも年老いた男の人生の情熱を語ってしまう巧みさ。すべての人には存在意義があるという観念のもと、映画にしかないというハッピーエンディングが現実にも訪れ、すべての愛が成就する見事さ。どこまでは原作に基づいているのかは知らないけど、子供の頃は喘息のため外に出られず、窓から外界を眺めていたというスコセッシの、映画に対する愛情なしではこんな作品は作られなかったであろう。

3Dによる撮影はものすごく画期的というわけではなかったが、それでも最近のとりあえず3Dで撮ったような映画よりも画面構成などが細かく練り込まれ、3Dで観ても損はなかったと思う。サシャ・バロン・コーエンの顔のアップとかにも効果的に3Dが使われているのが良かったな。ただその反面CGが多用されていくつかチャチに見えてしまう光景があったのも確かで、おもちゃのネズミとか博物館の火事とかはもうちょっとリアルに描いても良かったかもしれない。あと映画史でいち早くギミック撮影を用いた人物の話をギミック撮影で語る、というメタな要素があることも重要だな。

というわけで個人的には大変素晴らしい作品であり、映画への愛情を語った作品としてはフェリーニの「インテルビスタ」を彷彿させるものだと思うのだけど(子供の頃に観たあの映画は大好きなのです)、ヤフーの映画掲示板とか見ると「期待はずれ」とか「主人公が発明してないじゃん」などという意見が大半で残念なところですね。別に「映画を観るならメリエスのことくらい知っとけ!」などと上から物を言う気は全くないのですが、みんな少年が魔法を使うファンタジー映画だとでも思ってたのかな。確かにトレーラーだけだと話の内容が分かりにくいものの、期待を良い意味で裏切ってくれる作品だと思うけどね。それに原作小説の題名が「ヒューゴ・カブレの発明」なので、邦題もそんなズレてはいないよね。

いつもなら他の人が映画についてどういう意見を持とうと気にはしませんが、映画好きとしてはこの作品だけは意地でも弁護しないといけないような気がする。これはファンタジー映画じゃないし、発明も(あんまり)出てこないけど、でも素晴らしい傑作なんだよ!いまから木戸銭握って映写小屋へ向かえ!

「ファミリー・ツリー」鑑賞


アレクサンダー・ペインの7年ぶりの監督作品。

主人公のマットはハワイに済む弁護士で1800年代からずっと一族に引き継がれてきた膨大な土地の相続人でもあったが、法律によってその土地を売却する必要に見舞われていた。そんなとき妻のエリザベスがボート事故により回復する見込みのない昏睡状態に陥ってしまう。やがて彼女が死を迎えることを2人の娘に伝えるマットだったが、実はエリザベスが不倫をしていたことを知り…というようなストーリー。

妻の死をベースにしながら、娘たちや親族との和解や妻の不倫相手探しなどがハワイの大自然をバックに描かれ、とてもいい感じ。急な話の展開や派手な出来事などがあるわけでもなく、ただ話が進んでいくだけなのに2時間弱の長尺でもまったく飽きさせない。ここらへんはアレクサンダー・ペインの巧いとこだよね。逆に今までの彼の作品がダメだった人はこれも好きになれないかも。

主演のジョージ・クルーニーも非常に良い演技を見せてくれて、仕事第一だったために妻や娘たちの面倒を見ることができず、今になって必死に家族をまとめようとするダメ男を、ユーモアとペーソスをもって絶妙に演じきっている。まあクルーニーが寝取られ男を演じるのは多少無理があるけどね。脇を固めるロバート・フォスターやジュディ・グリアー、マシュー・リラードなども、出番は少ないものの好演を見せている。いちばん良かったのは長女役のシェイリーン・ウッドリーかな。

同じ監督の「アバウト・シュミット」や「サイドウェイ」同様に、どこがどう良かったのかきちんと説明することが難しいんだが、1人の男が出会いや別れや細かいことをいろいろ経験しつつ、少しずつ変わっていくところがいいんですよ。ただ冒頭で「ハワイに住んでるからって、別に楽園に住んでいる訳じゃない」みたいなセリフが出てくるんだが、やはりハワイの生活ってえらく楽しそうなんだよなあ。あと全編を通して流れるハワイアン・ミュージックは賛否両論あるみたい。

地味といえば地味な内容なので、観る人の年齢や性別などによって感想がいろいろ変わってくる作品かもしれないが、自分はとてもいい作品だと思いましたよ。