「THE GOSPEL OF US」鑑賞


「ザ・サンドマンの表紙の人」ことデイヴ・マッキーンが監督した映画。ただし彼が細かい演出などをしたわけでなく、ウェールズ出身のマイケル・シーンが同郷の詩人オーウェン・シアーズの小説をもとにした劇をウェールズの町ポート・タルボットで3日にわたって開催した光景を撮影したものらしい。

ベースとなるのはキリストの受難劇で、シーンが演じるのは「教師」と呼ばれるボロをまとった男性。海で洗礼を受けた彼はサンドウィッチを皆に分け与え、テロリストを説得したりして人々に慕われる存在になるものの、やがて警察に連行されて公開裁判にかけられ、頭に有刺鉄線の冠をかぶせられて磔にされることに…というのがものすごく大ざっぱな話の流れ。決して明確なストーリーがあるわけではなく、抽象的なシーンが連なっているような感じか。

ストーリーにおいて聖書の登場人物はすべて現代的になり、ローマ兵は高圧的な警察部隊になり、主人公を裁くのはスーツを着た地元の政治家であり、さらに神は高台から見下ろす工事現場のオッサン、という姿で登場していた。

そして劇といっても町全体が参加した大きなイベントのようなもので、シーン以外の役者はおそらく地元の劇団の人たちかな。それをとりまく人々は一般の市民で、シーンと役者たちのやりとりをビデオカメラとかで撮影してる姿がさらに撮影されているという、ちょっとシュールな映像もあったりします。おまけに地元バンドのマニック・ストリート・プリーチャーズのライブが突然始まったりと、何が何だか。

こうした設定ゆえにマッキーンの前作「ミラーマスク」に比べるとドキュメンタリーっぽい要素が強いものの、映像の加工や音楽などは彼が加えているため、セピアっぽい色調やソフトフォーカスが多用されたマッキーン的な映像は意外と多用されていた。彼の作品のファンなら観て損はしないでしょう。

映画館よりも美術館でかかってるアートフィルムという趣きが強い内容であったが、悪い作品ではなかったよ。

震災ボランティア2012


昨年に引き続き行ってきたのだよ。連休前だったこともあり新幹線が混んでて行きは立ち席という憂き目にあったが、無事仙台に到着。

昨年は破壊された車がまだ転がってたようなところもずいぶん整理されて、復興の進展が目に見えて進んでるところがある一方で津波の被害が甚大だった地域ではまだ家屋が破壊されたままだし、受け入れ先が不明なガレキがうず高く積まれていたりと、完全に以前のようになるにはまだまだ長い時間がかかるんだろう。

ボランティアセンターのスタッフは昨年は地元の人たちが多かったような気がしたけど、今年は関東から何度も来ているリピーターの人たちが核となって参加者をまとめていました。自分たちの仕事があるのに、身銭を切って週末に車をとばしてやってくる人たちだから偉いよなあ。別に政治思想などに基づいているわけでもなく、単純に人助けのためにみんな遠方からやってきているわけで。

俺があてがわれた作業は大豆畑の雑草苅りで、津波によって海水に浸かった畑では稲作ができないため今年は大豆を植えて、来年に稲作の再開を検討するのだとか。昨年のガレキ片付けよりも作業的には楽だったのでいい感じで進む。それでも疲れたけどね。

ボランティア活動も一段落したということで、俺が行った七ヶ浜町のボランティアセンターも11月以降は活動を縮小していくらしいですが、人手が必要な作業はホームページ上で随時告知していくようだし、東北にいなくても手助けできることはいろいろあるだろうから、自分のできるところからやっていけばいいのではないかと。こういう行動のほうが、ピクニック気分で反原発デモに行くよりも世の中のためになると個人的には思うのです。

「Revolution」鑑賞


こんどNBCで始まる、「スーパーナチュラル」のクリエーターによるシリーズ。プロデューサーにJJエイブラムスが名を連ねていて、第1話の監督をジョン・ファブローが務めていた。

ある日突然、世界中のあらゆる技術が停止し、電力はおろかエンジンや電池も使用できなくなる「ブラックアウト」と呼ばれる現象が発生する。これによって世界の文化は壊滅し、人々は中世並みの暮らしを強いられることになった。そして舞台は15年後。若き少女チャーリーが暮らす集落に、その一帯を支配する私設軍の一味がやってくる。彼らはチャーリーの父親が「ブラックアウト」の原因について何か知っていることをつきとめ、彼を確保しにきたのだ。しかし生じた小競り合いによって父親は死亡し、チャーリーの弟は私設軍によって誘拐されてしまう。チャーリーは弟を救出するため、父親の言葉に従ってシカゴに住むという叔父を探しにいくのだが…というような話。

最近はめっきり減った「LOST」ライクな話で、文明が廃れた世界を舞台にしてる点は「ジェリコ」に似てるかな。ボウガン持って戦う少女が主人公なのは「ハンガーゲーム」あたりも意識してるんだろうか。エンジンが使えないのに銃は使えるとか、原始的な暮らしをしてるのにみんな化粧はバッチリで、夜はロウソクをふんだんに使った優雅そうな暮らしをしてるとか、いろいろツッコミどころがあるのには目をつぶろう。

むしろ気になるのは世界観がどうもみみっちいことで、集落からシカゴまで一昼夜くらいで到着するし、シカゴであっという間に叔父を見つけるし、どうも世界規模の話というよりも箱庭で行われてる物語という感が否めないんだよな。文明が荒廃したあとの世界の描写は「ウォーキング・デッド」や「フォーリング・スカイ」のほうがずっとリアルだったような。

キャストには「ブレイキング・バッド」で圧倒的な威圧感をもった悪役を演じたジャンカルロ・エスポジートがここでも私設軍の士官という悪役を演じてるけど、やはり「ブレイキング・バッド」と比べると地上波向けというか怖さが全然無いですね。あとのキャストはよく知りません。

「ブラックアウト」の原因についていろいろ伏線が張られたりはしているのだけど、「THE EVENT」や「フラッシュフォワード」みたいにどうにか1シーズン続いて、適当に謎が解決されて終わるような番組じゃないかなあ…。視聴率が低迷しているNBCに、こういう話がズルズル作品は向いてない気もするのだが。まあでも「LOST」ライクな番組ということで日本ではどこかの局がいずれ放送するのでは。

八丈島旅行


最近はいまさら夏休みモードになっててブログの更新が滞ってるのですが、週末に八丈島へ個人旅行してきたので簡単な手記を。

羽田から早朝の便に乗ったら1時間もしないうちに到着。オンボロなレンタカーを借りて島巡りをすることに。コンビニやマックなどが無いことは聞いてましたが、飲食店やスーパーなども数えるほどしかなく、本屋は一軒、パチンコ屋が二軒くらい。当然映画館やDVDレンタルなども無く、ここは本当に東京都なのかと思うばかりの過疎っぷり。かといって観光客向けの設備などが充実してるわけでもなく、看板や標識が色褪せた、時代に取り残された感の強い島でしたね。郵便局と駐在所は多かったかな。

そんな町なかを通ってから三原山をぐるっと廻り、底土のビーチへ。ビーチといっても火山島なので黒い火山岩がむき出しになってるわけで、沖縄みたいな遠浅の砂浜のようなものはなし。足のつかない深さのうえに海流の流れが速く波も強いので、スノーケルだけで潜ったら結構怖かったよ。スキューバダイビングするとウミガメとかが見られて楽しいようですが。でも魚がチラホラいました:

あまりビーチで長居することもできず、あとは民俗資料館に向かう。江戸時代から罪人の流刑地として「発展」した島ということで、詐欺で捕まった商人によって芋焼酎がもたらされたとか、島の風俗文化を書き記した偉い人がそもそも江戸で女子供を含む7人を惨殺してたとか、なかなか裏のある歴史が面白かったですよ。島人の起源は漂着した妊婦が息子と交わってできた子供たち、という手塚治虫の「火の鳥」を彷彿とさせる伝承も興味深いな。島流しの場所なのに、そこで罪を働いた人は横の八丈小島(生活環境が過酷すぎて現在は無人島)にさらに島流しにされたらしい。

ホテルに一泊したあとは八丈富士を目指す。車で行ける登山口から頂上までは300メートル程度ということで余裕こいてたものの、山道の傾斜がきつくてすぐバテる。それでもどうにか辿り着いた山頂は、火山なのでカルデラになっており大きな窪みに木が生い茂ってるジャングル状態。火口のなかに神社があったり、カルデラ一周のコースなどもあったのだがサンダル履きではキツかったので下山することに。見晴らしはよかったですよ:

あとは水着で入る露天風呂に入ったり、時間を適当につぶして夕方の便で帰る。スキューバとか釣りといった目的があればもっと楽しめたんだろうけどね。とりあえず1泊2日でぜんぶ見て回れるような場所でした。

「ドクター・フー」シリーズ7開始


やっと始まりましたよシリーズ7。最近はイギリスとアメリカで同日に放送されるようになったので欧米の人たちはみんな首を長くして待っていて、知らぬは極東の日本人のみ。

前にも書いたようにシーズン6はサイレンスやらリバー・ソングやら「宇宙最古の質問」などといった謎というか伏線が乱雑していていまいちスッキリ楽しむことができなかったのですが、少なくともこのシリーズ7の第1話はサスペンスが満載で、最後にホロリとさせてくれる優れたエピソードであった。

今回のシリーズに先駆けてウェブで公開されたミニエピソードで示唆されたようにエイミーとローリーの夫妻が別居状態でいるところから話が始まり、ドクターが2人の仲を修復しようとするばかりでなく、ダーレクの集団に3人は拉致され、ダーレクの監獄だという惑星に送り込まれることに。そこで彼らが出会ったのは…という話。エイミーとローリーに代わってシリーズ途中から新しいコンパニオンになる女の子も出てきて、あれ彼女はクリスマス・スペシャルで初登場するんじゃ…と思いきや意外な展開が待ち受けていて面白かった。ジェナ=ルイーズ・コールマン演じる新しいコンパニオンは可愛くていいなあ。ドブスのローズの時代から大きく進展しましたな:

このあとはまた話がいろいろ複雑になってくるんだろうが、リチャード・E・グラントやダイアナ・リグなどといった俺好みの役者が出てくるらしいので期待せずにはいられない。そろそろ謎を一つくらい解決してくれてもいいような気もするけどね…。