「Nemo: The Roses of Berlin」読了


『リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン』最新作だよ。前作「Heart of Ice」から思ったよりも早いタイミングで続編が出てきたな。主人公は前作と同じジャンニ・ダカール。この後はネタバレ注意な。

舞台は1941年。第二次世界大戦の戦火が世界を揺るがすなか、ジャンニの娘は15歳にして征服者ロビュールのもとへ嫁ぎ、ジャンニは夫のブロードアロー・ジャックとともに海賊業に専念して、アデノイド・ヒンケル率いるトメニア(「Black Dossier」にも出てきたナチスのアナローグね)の船を襲撃していた。しかしそんな彼女のもとに、ロビュールとジャンニの娘が乗った飛行船「The Terror」がトメニア軍によって撃墜され、2人が捕獲されたという知らせが入る。愛する娘たちを救出するために、夫と2人で急いでベルリンに潜入するジャンニ。しかしそれはヒンケルたちが仕掛けた罠であり、彼女たちを待ち受けていたのはドイツ版「リーグ」こと「黄昏の英雄たち」の残党たちであった…という展開。

人外魔境が舞台だった前作とは一転して、今回は人でごったがえすベルリンでの冒険活劇となっている。「黄昏の英雄たち」は以前にも「Black Dossier」で言及されているが、そのメンバーはロボット・マリアやカリガリ博士、ドクトル・マブゼなど。また前作からの因縁の的も登場するぞ。登場人物などの元ネタは戦前のドイツ映画からとってきているものが多いかな?たぶん俺が見逃しているネタも多々あるはずなので、ここはジェス・ネヴィンズ氏あたりがまた注釈用のウェブサイトを立てることに期待しましょう。なおドイツ人のキャラクターの多くは当然ながらドイツ語で話していて、アラン・ムーア作品の常としてそれらの対訳は用意されていない。これが以前に出てきた火星語とかだったら普通に読み飛ばすのだが、ちゃんと意味のあるドイツ語が読めないというのは何か損した気分になってしまいました。

なおちょうどこれを読む前に、ムーアのやたら長いインタビューを読んでおりまして、「ムーアの作品は女性が暴行を受けるものが多い」という批判に対する反論をムーアが行なっていたりするのだが、この作品では50歳を目前にしたママさんのジャンニが同じく女性の敵たちを相手に死闘を繰り広げ、女性のパワーのようなものをひしひしと感じられる内容になっていたな。圧倒的な戦力差があるはずなのにジャンニたちが強すぎるような気もしたけど。

そして次作は1975年の南米を舞台にした「River Of Ghosts」という題名になるらしいぞ。ネモ三部作の最終巻らしいが、年代的に主人公はジャンニの娘になるのかな?あとムーアは魔術の手引書である「The Moon and Serpent Bumper Book of Magic」なる本も執筆しておりまして、こちらも面白そうなので年内にには刊行して欲しいと願っているのであります。

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