そのあまりにも素っ頓狂な内容から、今年のサンダンス映画祭で賛否が真っ二つに分かれた作品。何も知らないほうが楽しめると思うので、以降はネタバレ注意。
乗っていた船が難破したことで無人島にひとり残されたハンクは絶望して首吊り自殺を試みるが、海岸に打ち上げられた男性の遺体を発見する。腹にガスがたまっているせいか無限に放屁を続けるその死体をいじくっていたハンクは、やがてその猛烈な放屁を使ってウォータースキーのごとく水上を走り、別の海岸へと漂着することに成功する。そして彼はその不思議な死体をマニーと名付け、背中に抱えたまま人里を求めて森林をさまようことにするが、死体だったはずのマニーに生気が戻ってきて…というあらすじ。
題名は「スイス軍の男」ではなく「万能ナイフのような人」を意味しており、死体のマニーは放屁で水上を走れるだけでなく口から生水を出したり、手がハンマーのようになったり、火花を発したり、チンコがコンパスになったりと、至れり尽くせりの万能ボディ。
しかしさすがに死体を相手にハンクが喋るだけの内容では厳しいわけで、意外と早い段階でマニーに生気が戻ってきて、生きるとは何か、恋とは何かといったことについてハンクと語り合ったりします。ここらへんは「ウォーム・ボディーズ」みたいなアートシネマ風のゾンビ映画に近いものがあるかも。ハンクとマニーのBL要素もあるよ。
でも内容はアートシネマというよりも、放屁とチンコの出てくるシュールなコメディといった感じ。監督二人は「NTSF:SD:SUV」とか「Funny Or Die」のエピソードとか撮ってた人たちらしいので、あの手の番組が好きな人は楽しめるんじゃないでしょうか。劇中の展開を歌った歌をかぶせてくるあたり、かなり「狙ってる」印象も受けたけど、それが気になるかどうかで観る人の印象が変わってくると思う。
ハンク役はポール・ダノで、毎度ながらの「周りの状況がよく分かってないウブな青年」を演じてます。対するマニーを演じるのがダニエル・ラドクリフで、半ケツになったり燃え盛ったりと文字通り体を張った演技を行ってます。最近の彼は「ハリー・ポッター」みたいな役にタイプキャストされることへの反発か、キワモノな役を演じることが多いような。しかしイライジャ・ウッドもそうだったが、ファンタジー映画のキャラクターって、そもそもタイプキャストされるものなのかな。そこまでファンタジー映画って多く作られてないと思うのだが。
あとは最後に有名な女優がほんのちょっと出てます。彼女に関するラストの展開がいまいちよく分からなかったので、あれの解釈についてネットなどで調べてみます。それとなぜかシェーン・カルースがチョイ役で出ていた。
何とも評価しづらい作品ではあるが、バカバカしそうな内容を予算かけてしっかり撮ってしまうあたりは褒めるべきではないかと。「ハリー・ポッター」を期待してはいけないよ。