「エンドレス・ポエトリー」鑑賞


原題「Poesía Sin Fin」で、アレハンドロ・ホドロフスキーの新作。2年くらい前にクラウドファウンディングで製作費を募っておりまして、25ドルほど出資したのでございます。それで5月くらいに作品は完成してダウンロード可能になってたんだけど、不親切にも英語字幕が提供されてないので鑑賞できず、仕方なしにネット上に転がってた字幕ファイルとあわせて観るはめに。でも字幕のタイミングがずれまくってたうえにフランス語の会話の部分がぜんぶ抜けてたな。字幕が提供されてないのは欧米の出資者にも不満が出ているようだし、そのあと出資者に提供されたサントラのダウンロードもアメリカ国内でのみ可能と、どうも今回のクラウドファウンディングはアフターケアがいまいちのようでしたね。日本での試写イベントに招かれる権利はあるんだろうか(もう行われた?)。

内容は完全に前作「リアリティのダンス」の続編で、同じ役者が演じるホドロフスキー一家がチリのサンティアゴに移住してきたところから話は始まる。父が経営する商店を手伝いながら、医者になることを強制されるアレハンドロ少年だったが、本人の夢は詩人になることであった。そして青年になった彼はエンリケ・リンやニカノル・パラといった詩人や芸術家に出会い、自分もまたスタジオを持って芸術性を開花させていく、という物語。

「リアリティのダンス」は記憶喪失になった父親の帰還などのマジックリアリズム的な要素が多分にあったが、こちらは比較的ストレートに自伝的な内容になっている。それでも小人の女性などといったホドロススキー的な描写はいろいろ出てきますが。予算もなんとなく低予算のようだけど、セット芸術などは印象的だし、画面の色使いなども美しいシーンがいろいろ出てきていたな(撮影はなんとクリストファー・ドイル)。あとたまに「黒子」が出てきて、画面上の小道具を片付けたりする演出が斬新でございました。

前作に続いてホドロフスキーの父親役を演じるのが、ホドロフスキーの息子のブロンティス。さらに青年時代のホドロフスキーを演じるのがブロンティスと17歳くらい年の離れた弟のエイダン・ホドロフスキーで、つまり兄弟が親子の役を演じているというわけ。ホドロフスキーの母親を演じるのはこちらも前作に続いてパメラ・フローレスだが、今回はホドロフスキー青年とねんごろな仲になる女性詩人ステラ・ディアスの役も一人二役で演じていて、どことなく近親相姦っぽい雰囲気がありますね。

息子二人に加えてホドロフスキー本人も狂言回し的に随所で登場。クレジットを見るとスタッフにもホドロフスキーの親族がいるようで、もはや家内制手工業のような映画作りになってきたな。ブロンティスの娘もモデル兼女優をやっているそうで、いずれ続編に登場してくるのでは。でもホドロフスキーは実際は姉がいたようだけど、不仲だったそうで劇中ではいなかったことになってるのが手厳しいな。

前作を観たときほどの衝撃はなかったけど、それでも非常に独創的な出来の作品であり、一見の価値はあるかと。どうもホドロフスキー(88歳!)にはこの自伝的な内容の話を5部作にする構想があるらしいのだが、本当にできんのかそれ。いずれパリにおいて「デューン」を撮ろうとする逸話が出てきたりするのだろうか。

なおクラウドファウンディングの出資者に対する謝辞はいちおうあるものの、最後にパーっと出るだけで自分の名前を確認するようなことはできなかった。まあ期待してたわけじゃないんだけどね。チェッ。

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