広島の原爆記念日に触発されたわけではないけど、かつて社会現象を巻き起こした作品なのに観たことなかったな、と思いyoutubeにあがってた低画質のものをチマチマと観る。
ウィキペディアにも日本語版記事があるので詳細はそっちを見てもらうとして、冷戦の緊迫状態にあった1983年に、アメリカとソ連との核戦争、およびその結果を描いたTVムービー。エクスプロイテーション的な内容ではなくて、当時はその生々しさが話題になって高視聴率を稼ぎ、なんと現在においてもアメリカ史上で最も視聴されたTVムービーなんだとか?日本でも当時は大きく話題になってましたね。126分とTVムービーにしては長尺だが、原爆が落ちてからの後半はCMなしで放送されたのか。
話はカンサスを舞台に、医者とその家族、結婚式を控えた娘のいる家族、基地に派遣された軍人たちの日常生活が、東西ベルリンにおける米ソの軍事衝突を境に緊迫感が高まっていき、やがて核ミサイルに襲撃され、廃墟となった土地で生きるさまが描かれていく。
なんでカンサスかというと核ミサイルの基地があるので軍事的なターゲットになっているそうな。アメリカ各地にも核ミサイルが落ちたようなことが示唆されるけど、高層ビルが吹き飛ぶようなシーンは出てきません。というかミサイルの発射シーンや核爆発で森や建物が崩壊する映像は明らかに軍の記録映像の使い回しで、まあ劇場映画とかに比べると低予算だったんだろうなあと。
キノコ雲の特撮なんかは悪くないんだけどね。原爆の被害もピカッと閃光が走ったらすぐに人が骨になっている感じで、「はだしのゲン」よろしく人の皮が焼けただれたり火脹れで顔が腫れ上がるような光景は全くなし。こういう作品は「ゲン」や「風が吹くとき」のように観る人にトラウマを与えてなんぼだと思うのだが、家族向けネットワークのABC放送ということでキツい映像にはいろいろ規制が入ったらしい。放射能によって人々の髪の毛が抜け落ちていく描写とかは頑張ってました。
監督は「スター・トレック」シリーズや「タイム・アフター・タイム」といった娯楽作で知られるニコラス・メイヤーだが、テーマのせいか演出はかなり淡々としている。つうか退屈の域。最初の1時間で戦争に向けて事態がエスカレートするさまが描かれ(ラジオでのニュース放送がメインだが)、中間地点で原爆が爆発、後半は生き残った人々が無気力なまま暮らし、やがて放射能により何人かが絶命していく。銃を持った自警団みたいなのが出てくるのがアメリカ的だなとは思いました。
出演者は故ジェイソン・ロバーズを筆頭に、「ポリス・アカデミー」でブレイクする前のスティーヴ・グッテンバーグや髪のあるジョン・リスゴーなどが出ていて今から見ると比較的豪華なのだが、いかんせん話が淡々としてるので目立った演技はなかったかな。
30年前に比べると世界情勢も変わってきているので、現代ではそのまま通用しないような要素もあるし、これが例えばテロリストによる核の起爆や北朝鮮のミサイルといった出来事だったらいろいろ話は変わってくるのだろうけど、こないだの震災を含め、大災害に遭ったあとの人々はどう生き延びるのかという所はいろいろ考えながら観ました。とりあえず食料の備蓄と懐中電灯の準備は日頃から行っておきましょう。