ダコタ・ファニング主演のインディペンデント系映画。日本では9月に「500ページの夢の束」という邦題で公開予定。キノフィルムズ、作品をいろいろ買うのはいいのだけど日本公開がいろいろ遅いと思うの。以降はネタバレ注意。
ウェンディは自閉症の女の子で、オークランドの施設に暮らしていた。簡単なバイトとかはできるものの人とのコミュニケーションが苦手で、感情が高まったりするので姉の赤ん坊にも合わせてもらえない状況。そんな彼女が大好きなのは宇宙大作戦こと「スター・トレック」で、オリジナル・シリーズはおろかスピンオフ・シリーズのキャラクターなどを熟知し、周囲のオタクどもからも一目置かれる少女であった。そんな彼女はパラマウント・ピクチャーズがスター・トレックの脚本コンテストを開催していることを知り、自分が手塩にかけた500ページもの脚本を送ろうとするものの、最後の最後までこだわったために郵送できる締め切りを過ぎてしまい、仕方なく彼女はパラマウントまで脚本を手渡しに行こうと、周囲の誰にも告げずに人生初の長旅に出るのだったが…というあらすじ。
感情の表現がうまくできないスポックとウェンディを重ね合わせるセリフがあったり、コミュニケーションが下手な彼女がクリンゴン語を使って会話するシーンなどがあるものの、スター・トレックはそんなに大きなテーマとして扱われているわけではない。そもそもスター・トレックって一般人から脚本を受け付けているほぼ唯一のTVドラマであることは有名で、なんで脚本コンテストなんかやるの?と思うのだが、CBSでなくパラマウント・ピクチャーズ主催なので映画版の脚本なのだろうか。でもウェンディの脚本って「スポックがディープ・スペース・ナインに赴いてウォーフの助力を請う」なんていうファンフィクションまがいの内容のようで、それって映画化するのかなり難しいのでは。そもそも500ページの脚本(つまり約500分の内容)なんてハリウッドで誰も読まないだろ、とは思うものの、まあそこらへんに愚痴を言っても仕方ないか。あと脚本をメールで送ればすべて解決したんじゃね?と思いたくなるが、いちおう投稿の規定は「印刷されたものを郵送」だそうな。あとパラマウントのオフィスにあんな簡単に入り込んだりできないからね!
内容は比較的凡庸なロードムービーだが、主人公がバスから降ろされたり、道中出会ったカップルに財布とられたり、乗った車が事故ったりと、いろいろ災難がてんこ盛りでなんかお腹いっぱい。施設から消えたウェンディを探して彼女の姉や施設の管理人も心配して苦労するわけでが、周囲に迷惑をかけていることを主人公が認識していないために、観ていてなんかモヤモヤするところがあったよ。いちおうコンテストの優勝賞金をゲットすれば姉に迷惑をかけずにすむ、という目的をウェンディは抱いているのだが、自閉症という設定にしたことで逆に彼女の決心が曖昧なものになっていたような。もっと普通の内気な女の子を主人公にしても良かったんじゃないの。そのほうが、自分の抱える問題に向き合って解決しようとする彼女の行いがもっとスッキリ描けたと思うのだが。
ダコタ・ファニングは例によってFull Retardにならない自閉症者の演技をしていて、まあ型にはまっているといえばはまっている。彼女を施設で面倒みているのがトニ・コレットで、彼女の姉を演じるのがアリス・イブ。ご存知のようにアリス・イブって「スター・トレック イントゥ・ダークネス」に出演してるので、そこらへん何かメタな展開があるかなと期待してたけど何もなかった。この映画、スター・トレックを題材にしている割には、あまりトレッキーが喜ぶネタがないのが寂しいところである。パットン・オズワルド演じる、クリンゴン語を話す警官なんてのは出てきてたけど。
まあ凡作。