ミシェル・ゴンドリーの新作「The Science of Sleep」がDVDで発売されたので早速鑑賞。
うわっはっはっは。なんかえらく笑える作品だった。
父を亡くしてメキシコから母の住むパリへと移ってきたステファンは芸術家志望の青年。新しい職場での退屈な作業には失望するものの、アパートの隣に住む音楽家志望のステファニー(シャルロット・ゲンスブール)に惹かれていくようになり、そこから彼の現実と夢の境界があいまいになっていく…というのが話の大まかなプロット。夢見がちな青年が同じアパートの女性に恋慕して妄想を抱く、という意味では「めぞん一刻」に通じるものがあるのかな。
とにかくステファンの夢のシーンが秀逸で、最先端のCGなんかには頼らずに逆まわしやストップモーションを多用したチープな特撮(ゴンドリーが監督したドナルド・フェイゲンの「snowbound」のPVに似てる)が実に味があっていい。段ボールでできた撮影スタジオとかハリボテの町並みとか、こういうのはアイデアの勝利だよね。1秒間だけ過去や未来に行けるタイムマシンなんてのも非常に面白い。この夢のシーンの滑稽さはとても文章では書き表わせられないので、ぜひご鑑賞あれ。
ただし話の大半は現実世界での出来事を扱ってるので、あまり特撮だらけの作品を期待してると肩すかしをくらうかも。「エターナル・サンシャイン」もそうだったけど、特撮を単なる現実逃避の表現として使わず、むしろそれによって恋愛の切なさを強調しているところが巧みなところか。主人公たちの芸術活動が芸大の生徒みたいで(うちの近所にたくさんいる)なんか青くさい気もするけど、いくつになっても夢を見るのは大切だよってことですかね。
「エターナル・サンシャイン」ほどではないものの、非常によくできた作品。チャーリー・カウフマンの脚本がなくてもゴンドリーは面白い作品が撮れる、ということを証明したものになるのかな。今年公開予定の「Be Kind Rewind」にも期待したいところです。