「CATCH-22」鑑賞

米HULUで始まった、ジョーゼフ・ヘラーの同名小説が原作のミニシリーズ。

第二次対戦中、イタリアの孤島に陣を構えてイタリア本土に爆撃を繰り返すアメリカ空軍の基地を舞台に、戦争における正常性の消失と狂気の台頭を風刺的に描いた原作は今でも根強い人気を誇る小説なわけですよね。おれ学生の時に読んで強い感銘を受けて、そのまま続編の「CLOSING TIME」を原書で読んでそのツマらなさにガッカリしたのも今となっては良い思い出です(あれホント読まないほうが良いよ)。

過去に1970年にマイク・ニコルズによって映画化されていて、かなり原作をはしょっていたものの、あれはあれでよく出来た作品だったと思う。今回のは6話のシリーズということで尺は長いものの、意外と原作と相違があるような?

原作は一貫としたプロットがあるわけではなく、「牛乳配達」と呼ばれる定期的なイタリアへの空爆を繰り返すうちに兵士たちがジワジワとおかしくなっていく、言うなればダウナー系の作品であったが、それに比べるとTVシリーズ版は若干早急な作りになっているかな。特に主人公の爆撃手ヨッサリアンが、とっとと任務を終えて除隊しようとするさまがドタバタ喜劇っぽく描かれているというか。

ブラック企業のノルマのごとく、任務を完了したとみなされる出撃回数の目標がいつの間にか上がって永遠に達成できそうにないなか、病気を装ったり気が狂ったふりをして除隊しようとするヨッサリアンの前に立ちふさがるのが、かくも有名なキャッチ22こと「自分が気違いだと申請した者はすぐに除隊できる、ただし自分が気違いだと申請する者は気違いと認めない」という規律である。原作(と映画版)に比べて今回のヨッサリアンはキャッチ22のことを知って驚愕するなど、なんとなく全体的に若い感じがする。

まだ数エピソードしか観ていないが、意外なのは原作の主要なプロットである「スノーデンが床にぶちまけた秘密」がまだ登場していないこと。原作だとそれを経験したヨッサリアンがいかに人が変わり、果たして彼が目にしたものは何だったのか、というのが最後に明らかにされるわけだが、あれそのまま最後に持ってくるのかな。

そのヨッサリアンを演じるのがクリストファー・アボット。彼が主演した映画「James White」って評判よかった気がするがまだ観てません。あとはプロデューサーのジョージ・クルーニーが軍の中尉を演じているほか、ヒュー・ローリーやカイル・チャンドラーなどが出演している。

俺の好きなキャラクターであるメイジャー・メイジャー・メイジャー少佐は原作だとヘンリー・フォンダに生き写しで、役者を引退したフォンダ本人が従軍しているのではと噂されてるほどだが、残念ながら映画版に続いて今回もフォンダに似てない役者が演じています。また戦争においてあらゆることを金儲けのタネに使おうとする舞ロー・マインダーバインダーは風刺の点からするとヨッサリアン以上に重要なキャラだが、TVシリーズではそこまで大きく扱われてはいないみたい。

小説はいま読んでも十分面白い一方で、いまそれを映像化して何の風刺になるのかな?という気がしなくもない。第二次大戦なんて現在の戦争のスタイルとは大きく異なってしまったし、特に政権やメディア批判につながっているわけでもないし。そういう意味ではどうも目的が曖昧な作品になってしまったのかも。とはいえ原作のファンとしては全話観るつもりであります。

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