「カセットテープ・ダイアリーズ」鑑賞

自宅待機者用に米HBOがいろいろ番組を無料提供してまして、VPNをゴニョゴニョして鑑賞。日本では4月17日に公開予定だったが延期。

舞台は1987年。イギリスのルートンに住むパキスタン系移民のジャベッドは作家志望の少年だったが伝統を重んじる保守的な父親のもとで暮らし、町ではスキンヘッドに差別を受けるなど、さえない日々を送っていた。そんな彼の生活は、同じくパキスタン系の同級生からブルース・スプリングスティーンのカセットを聴かされたことで一変する。ザ・ボスの歌詞が自分の環境と重なることに感激した彼は、スプリングスティーンの素晴らしさを周囲にも伝えようとするのだった…というあらすじ。

当然ながらスプリングスティーンの楽曲が全編に使われていて、彼の音楽に力づけられたジャベッドがガールフレンドを見つけたり、文章を書いたり、親のプレッシャーに抵抗するような内容になっている。ミュージカルみたくみんなで合唱するシーンもあるけど、基本的にはストレートな青春映画かな。インド(パキスタン)系の男性が主人公の音楽映画ということでダニー・ボイルの「イエスタデイ」と比べる人もいるようだけど、あっちはもっとファンタジーっぽいし内容はかなり別物であった。

サルフラズ・マンズールという音楽ジャーナリストの自伝をもとにした話ということで、良くも悪くも地に足のついた話になっている。どこまで事実に基づいているのか分からないが、ジャベッドの日々の生活が描かれているだけで、全体的な話の盛り上がりがないんだよな。後半になってジャベッドは念願のニュージャージー参りを果たすものの、そこでザ・ボスによってコートニー・コックスよろしくコンサートでステージ上に引っ張り出される…というような展開も当然ありません。

監督は「ベッカムに恋して」のグリンダ・チャーダで、インド(パキスタン)系のティーンエイジャーの物語はお手のものですかね。キャストは有名どころだとヘイリー・アトウェル、ロブ・ブライドンあたりが出ている。

まあブルース・スプリングスティーンをどれだけ知ってるかでこの映画の楽しみ具合も変わってくるんじゃないでしょうか。劇中でも1987年の時点ですでに彼は時代遅れのロッカーとして扱われていて、ジャベッドのガールフレンドにも「あれロナルド・レーガンが聴く音楽でしょ」とか言われてるのは妙にリアルであった。ちなみに1987年の映画ながら、同年出たアルバム「トンネル・オブ・ラヴ」には全く言及が無いのは何故なんだろうとか、映画の原題が「BLINDED BY THE LIGHT」なのだが、この曲はマンフレッド・マンのバージョンの方が圧倒的に有名だよなあ…とかしがないことを考えながら観てました。