「THE LAST BLACK MAN IN SAN FRANCISCO」鑑賞

ブラックライブスマター!、というわけではないが良い評判を聞いていたので。日本では「ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ」の邦題で10月公開だとか。

舞台はその名の通りサンフランシスコ。気の優しい青年のジミーは友人で劇作家志望のモントの家に暮らしていたが、ジミーの祖父が建築したというヴィクトリア様式の家を慈しみ、足繁くその家の前まで通っていた。やがてその家の住人が家を去ることを知ったジミーは、モントとともに家に不法に住み着くことにするのだが…というあらすじ。

出演者の大半は黒人だが必ずしもブラック・ムービーという内容ではなく、いろいろな側面を持ったサンフランシスコが変わりつつあるなか、古い家にこだわるジミーとモントの生活が淡々と描かれていく。

じゃあ内容が退屈なのかというとそうではなくて、映像がびっくりするくらいに美しいんですよね。海に面したサンフランシスコの自然や、洋館のなかの綺麗なインテリアとかが丁寧に映されていて、ただ画面を眺めているだけでも飽きない作品であった。撮影監督のアダム・ニューポート=ベラって主に短編やテレビ番組を撮ってる人らしいけど、これからもっと注目されてくるんじゃないのか。

監督のジョー・タルボット(白人)と主演のジミー・フェイルズの実質的なデビュー作で、脚本もこのふたりによるもの。フェイルズはそのままジミー・フェイルズという名の役を演じているので、自伝的な要素がいろいろ入ってるんだろう。デビュー作とは思えない落ち着いた雰囲気をもって、変わりゆく町における主人公たちの話が語られていく。まあ登場人物の背景が説明不足のような気もしたし、最後の演劇とかはちょっと頭でっかちな気もしたけど、タルボットもフェイルズもこの作品をきっかけに活躍していくんじゃないですか。

出演者もそんなに有名な人は出ていなくて、知った顔といったらモントの祖父を演じるダニー・グローバーくらいかな。この人いろんな作品に出ているよな。あと監督たちは「ゴースト・ワールド」のファンということで、最後にちょっとしたオマージュがあったりします。

クラウドファンディングで予算が集められたデビュー作とは思えないほど入念に作られた、よく出来た作品であった。サンフランシスコのことをよく知ってたらもっと楽しめるんだろうな。