「The Personal History of David Copperfield」鑑賞

iTunes UKに残高があったので視聴。アーマンド・イアヌーチの新作で、チャールズ・ディケンズの「デイビッド・コパーフィールド」を映像化したもの。

あらすじは原作に忠実なものの、主人公デイビッドがドーラと結婚しないなど、それなりに脚色はされているみたい。父親亡きあとに生まれたデイビッドが冷酷な継父に労働に出され、貧しいミコーバー氏と暮らし、大叔母の恩恵を受けるもののまた極貧の生活に戻ったりする波乱の人生が語られていく。

イアヌーチ得意の社会風刺は抑え気味で、ヴィクトリア朝時代の貧困は現代の貧困に通じる…みたいな揶揄も特になし。その一方で彼の作品に通じるドタバタ演技が冴えていて、余計な部分は端折ってストーリーがグイグイ進むなか、登場人物が文字通り走り回って、逆境にもめげず逞しく生きる人々が活き活きと描かれている。

少しデフォルメされたセットとか、プロジェクションを多用した演出などはテリー・ギリアムのファンタジー映画を少し連想させました。あとデヴ・パテルが主役を演じる波乱の人生物語、という意味では「スラムドッグ・ミリオネア」を彷彿とさせるかな。

主人公デイビッドをインド系のデヴ・パテルが演じていることからもわかるように、この作品ではいろんな人種の役者たちが原作では白人だった役を演じている。白人のキャラクターの母親が黒人だったりするものの、人種に関する言及は一切なし。最近では黒人のキャラクターを白人が演じるのは政治的に正しいのか?みたいな議論も起きてますが、この作品のように割り切って人種が混ざり合ってるのもそれはそれで面白いと思いますよ。

それでもって出演者がとにかく豪華で、イギリスの名優たちを集めたような内容。イアヌーチ作品の常連であるピーター・カパルディを始め、ティルダ・スウィントンやヒュー・ローリー、ベネディクト・ウォンといったベテランが出演しているほか、卑劣な悪役のユーライア・ヒープを演じるベン・ウィショーが特に良かったな。貧乏人から変人から悪人までいろんな人が出てくるけど、みんなどこか憎めないキャラクターなのですよ。

観たらいろいろ元気にさせてくれるような作品。ギスギスしてる今の世の中で一見の価値はあるかと。日本でも劇場公開されるかね?