みんな大好きA24 製作の映画で、米HULUのオリジナルムービー。
ルーシーは夫のエイドリアンとともに何年も子供を授かろうとしていたものの妊娠することができず、夫の元上司である医師のヒンドルを訪れる。ヒンドルは画期的な生殖補助医療の手法を開発したと言う人物で、彼の治療を受けたことでルーシーは見事妊娠に成功する。しかし彼女は男子ふたりと女子ひとりを妊娠しており、3人が健康に生まれてくる可能性が低いことから減数手術を勧められる。ヒンドルの意見を拒んで女子ひとりを生かすことにしたルーシーだが、臨月が近くにつれて奇妙な幻覚を見るようになり…というあらすじ。
水子の霊に祟られる母親の話、ではなくて、妊娠したことで情緒不安になり現実と妄想の境界が曖昧になった妊婦の心理ホラーといったところ。何か大きな陰謀に巻き込まれているのではとパラノイア気味になる主人公の心境を見せているほか、彼女の体に関する決断も男性たちによって行われ、職場においても妊娠したとたんに地位を同僚の男性にとって代わられる世の中の差別を扱っていたな。
そのテーマからあちらの批評では「ローズマリーの赤ちゃん」と比べられてるようでして、あの映画って長すぎてあまり好きではないのですが、こちらも「主人公が怖い目に遭う」「妄想でした」「また怖い目に遭う」「また妄想でした」というパターンの繰り返しで、怖いシーンがあっても「また妄想でしょ?」と考えてしまうし、あまりストーリーに厚みがないのよな。ラストの光景はなかなか印象的だったけど。
ルーシーを演じるのはイラナ・グレイザー。コメディ・セントラルで「Broad City」という番組やってた人ですね。それがこんなホラー映画に主演していて、脚本も共同執筆している。監督のジョン・リーも「Broad City」の監督とかやってた人…ってあのキチガイ番組「WONDER SHOWZEN」のクリエーターなのか!あれと比べるとこの映画、ずいぶん普通なほうかも。エイドリアン役にジャスティン・セローで、ヒンドル先生役にピアース・ブロスナン。ブロスナンって肩に力が入った演技をすると下手なのだけど、このようにリラックスした不気味な医者の役を演じているとなかなか怖いね。
個人的にはそこまで面白い作品だとは思わなかったけど、これ女性が観るとまた違った感想を抱くのかもしれない。実際にグレイザーはこれの撮影後に妊娠したそうで、撮影が変なトラウマにならないと良いのですが…。