「ナイトメア・アリー」鑑賞

日本では3月25日公開。これアメリカではiTunesのようなTVODで出る前に、HULUおよびHBO MAXのようなSVODで配信されるという実に珍しい提供ウィンドウになってるのは何故だろう?すいませんが以降はガッチリネタバレするので注意。

全く前知識を持たずに観たのだが、これギレルモ・デルトロのオリジナル脚本ではなくて1946年の小説が原作で、1947年にいっかい映画化されてるのか。ホルマリン漬けの胎児などが飾られた、旅する見世物小屋の物語、というのはいかにもデルトロが好きそうな題材だが、いわゆるフリークス的な人たちは出てこないで、せいぜい小人のパフォーマーくらい。前作「シェイプ・オブ・ウォーター」で見せ物ではないにせよ半魚人が出てきたのに比べて、ちょっと控えめにしてるのかなと思ったよ。

そして話のキモとなるのは降霊術というか読心術の見せ物だが、これも勝手に心霊ホラーになるのかな…と思ってたら全く違って、トリックを用いて上客を騙すイカサマ男が主人公の物語であった。だから内容はホラーでなくサスペンスになるのかな。デルトロにしてはずいぶん地に足のついた設定だな、と思ったらimdb情報によると、かつてデルトロの父親がメキシコで誘拐された時に、真っ先に母親のところに怪しい霊媒たちがやってきたことがあるそうで、これはそういうイカサマ師についての映画ということらしい。(ちなみに誘拐された父親の身代金を払ったのはジェームズ・キャメロン。キャメロンいいやつ)

というわけでデルトロにしては珍しく怪物も幽霊も出てこない作品でして、そこはファンの評価も分かれるんじゃないだろうか。原作のプロットを忠実に映像化してるのか、2時間半という長い尺を誇る一方で、最後のオチは残り30分くらいのところで分かってしまうかもしれない。

主役を演じるブラッドリー・クーパーっておれあまり好きな役者でもないけど、今回は運命に翻弄される男性をよく演じていた。増長が破滅につながるパターンはありがちだけどね。あとはロン・パールマンやクリフトン・コリンズといったデルトロ作品の常連に加え、トニ・コレットやケイト・ブランシェット、ウィレム・デフォーにデビッド・ストラザーンといった有名どころが続々出ていた。

悪い作品ではないものの、自分がデルトロに期待しているものとはちょっと違ってたような。これが「シェイプ・オブ・ウォーター」の前に出た作品だったら感想もまた変わっていたかもしれない。