「OLD HENRY」鑑賞

前知識なしで観た、ティム・ブレイク・ネルソン主演のウェスタン。以下はネタバレ注意。

舞台は1905年のオクラホマ。人里から遠く離れた荒地に息子と住む農民のヘンリーは、瀕死の男が倒れているのを発見し、さらにその近くに大金が入った袋があるのを見つけ、男と袋を家に持ち帰る。男を拘束しつつも息子とともに介抱するヘンリーだったが、彼を探して保安官と称する三人の男が彼のもとにやってくる。男のことは知らないとヘンリーは答えるものの、彼を疑う男たちによってヘンリーの家は襲撃される。こうしてヘンリーは銃を手に取って戦うことになるのだった…というあらすじ。

ヘンリーが謎めいた過去を持っていることは最初から示唆されていて、まあいわゆる「銃を捨てた老ガンマン」っぽいな、というのは大体察しがつく。妻が亡くなり子供とともに細々と暮らしているものの、やがてまた銃を持って戦うことになる…という展開はイーストウッドの「許されざる者」まんまでクリーシェじみているとは思うものの、そういう話の展開って個人的には嫌いではないですよ。そして肝心のヘンリーの過去についてはちょっと意外な事実が明かされ、設定の巧みさには関心してしまった。アイデアの勝利。

ティム・ブレイク・ネルソンの演技が素晴らしいことは毎度のことながら、今回はコメディ要素の全くない渋い役を演じ切っている。彼と戦う保安官役のスティーブン・ドーフも年取って渋くなってきましたね。監督&脚本のポッツィ・ポンチローリってこれまではコメディ番組の監督やプロデュースをやってた人らしいが、今作では女性が全く登場しない硬派な西部劇の世界を作り上げている。

クリーシェが多いことは確かだし、ウェスタンに新しい風をもたらすような作品ではないだろうが、評論家に高い評価を得ているのもうなずける良作。ウェスタン好きな人は観て損はないかと。