前から興味のあったA24製作の作品。つうか「ファニー・ページ」の邦題で昨年末に日本で公開されてたの?
人のカリカチュアを描くのが好きな高校生のロバートは、アングラなコミック作家になりたいという漠然とした夢を持っているものの、それを実現するために何をするという訳でもない生活を送っていた。しかし美術の教師が目の前で交通事故死したのをきっかけに、大学進学も諦めて親元を離れ、狭いシェアハウスに住みながら法律事務所とコミックショップでバイトしながら暮らしていこうとする。そして法律事務所にやってきた中年男性のウォレスがイメージ・コミックスでカラー・セパレーター(カラリストではなくて)をしていた経歴があることを知り、勝手に憧れてコミック作りを教えてもらおうと嘆願するのだが…というあらすじ。
監督・脚本のオーウェン・クラインってケヴィン・クラインとフィービー・ケイツの息子だそうで、「イカとクジラ」で情緒不安定になる弟を演じていた役者でもある。あの子役がもう30代か!と思う一方で、そんな有名人たちの息子の初監督作がこんなオフビートの映画で良いのか、と思うくらいの内容だった。冒頭で服を脱いで肥満体を晒しながら俺を描け!と命じる美術教師をはじめ、温度設定を高めにしたシェアハウスでバーコードハゲから汗をたらす大家とか、明らかに言動がおかしいウォレスとか、脂ぎったオヤジたちが次々と出てくる展開なので、オシャレなA24映画を期待して観るとガックリくるでしょう。
個人的にはアメコミ要素を期待して観たのだけど、ロバートの描くマンガは初期のロバート・クラムのような、オッパイとチンコだらけのアンダーグラウンド・コミックなのに、イメージ・コミックスのスーパーヒーローものに携わったウォレスに反応するのがよく分からんのよな。ハイ・ラマズのショーン・オヘイガンが手がける軽快な音楽(あまり流れてないけど)も内容にマッチしているとも思えず、なんか各要素がいまいちカチッとはまってない印象を受けた映画だった。
プロデューサーにサフディ兄弟がいることもあり「アンカット・ダイヤモンド」みたいな雰囲気がなくはないものの、もっと昔の70年代のブラックコメディを見ているような感じだった(監督もラルフ・バクシなんかの作品の影響を公言している)。若手監督なのにそんなオッサンくさい作品撮って良いのかとも思うけど、次作はどんなものになるか結構興味はある。