今日のゴールデングローブ授賞式でもおそらく何かの賞を穫るであろう、今年の賞レースの目玉作品。イラク戦争の初期(2004年)を背景に、都市部のあちこちに隠された手製爆弾の解除にあたる部隊の姿を描いたもの。
とにかく爆弾がバンバン爆発する映画で、地面や荷物や車に隠された爆弾がいつどこで爆発するか分からず、登場する人たちもどんどん死んでいくために次の展開がまるで読めないうえに、爆弾の解除をしている周りにリモコンの起動装置を持ったテロリストが潜んでいるかもしれないという要素が加わり、非常に緊張感に満ちた場面を作ることに成功している。
このように各場面はとてもスリリングで、夜中の追跡劇のシーンとかも手に汗握る演出になっているのだが、そうした各場面をつなぎ合わせる軸となるようなプロットはあまり存在してなくて、主人公たちの任務と日常が次々に描写されるような展開になっている。「フルメタル・ジャケット」の後半に似ているといえば分かってもらえるかな。印象的なシーンはいくつもあるものの、全体を貫くストーリーはないというか。少なくとも「プライベート・ライアン」のような「映画の終わりまでに捕虜を救出する」といった時間制限が絡んだような緊張感はなかったな。これってイラク戦争の終わりが見えていないことにも関係しているのかもしれない。
ジェレミー・レナー演じる主人公は今までに何百もの爆弾を解除してきたプロという設定で、その常識とは異なる手段での爆弾処理は彼を一匹狼的な存在にしていて、ふざけた奴のようで仲間想いのところもあるし、連日の爆弾処理によって極度のストレスも感じていることが描かれている。そうしたストレスを感じる一方で、戦争が与えてくれるスリルの中毒になっていることが示唆されるんだが、いかんせん無口なうえに落ち着きすぎているので、彼の内面が分かりにくいところがあるかな。
あとイラク戦争に関する予備知識がないと、ちょっと話が掴みづらいところがあるかもしれない。主人公が着ている防護服は爆弾に対してどれだけ効果があるのかとか(万能ではないことが冒頭で描写される)、なぜテロリストはリモコンですぐ爆弾を爆破しないのかとか、そこらへんは観てて疑問に感じた点だった。
あとね、やっぱり非アメリカ人が観ると主人公の兵士たちに感情移入できないところがあるのですよ。ストレスがどうだとか、こんな所にはもういたくないとか言ってるけど、人さまの国を勝手に侵略しておいて勝手なこと言ってんなよと。あんたらよりもイラクの住民のほうが迷惑してんだってば。というわけで少なくともアカデミー賞の作品賞にはノミネートされるだろうし、受賞することも十分あり得る作品であるわけですが、個人的には今シーズンのベスト作品というわけではなかったな。あと日本ではいつ公開されるんだろう。本来ならば昨年公開される予定だったんだけどな。