「SHERLOCK」鑑賞


言わずと知れたコナン・ドイルの「シャーロック・ホームズ」ものを現代風にアレンジしたBBCの新作ドラマ。90分が3本のミニ・シリーズになるのかな?

アフガンでの戦争でPTSDにかかり帰国した軍医のジョン・ワトソンは、ロンドンでの下宿と同居人を捜していたところ、シャーロック・ホームズという無愛想な青年を紹介される。彼はその明晰な頭脳を活かし、難事件に対して警察に助言を行う自称コンサルタントであった。そして一見無関係の男女が次々と服毒自殺を遂げるという怪奇な事件が発生し、ホームズはワトソンと共に事件解決のため奔走するのだが、彼らを監視する人物が現れて…というのが第1話のプロット。

「A STUDY IN PINK」というエピソードタイトルが示すように「緋色の研究」をベースにしたストーリーになっていて、携帯電話やタクシーといった現代のアイテムが巧みに取り込まれた上質のミステリーになっている。ホームズが発見する情報がいちいち口頭で説明されたりせず、文字情報として画面に表示される仕組みも功を奏しているかと。

ベネディクト・カンバーバッチという、いかにもな名前を持つ役者が演じる現代版ホームズはジェレミー・ブレットのバージョンよりも遥かに横柄で人付き合いが悪く、猟奇事件の発生に喜びを得ることから、彼に嫌々ながら助言を求めるレストラーデ警部の部下たちには「サイコ野郎」と呼ばれている始末(これに対し本人は「僕は高機能社会病質者だ!」と答えている)。「今のロンドンではタバコもろくに吸えない」と言って、パイプをくゆらせる代わりにニコチン・パッチを腕にあてて考えをめぐらせる姿も面白い(ただしドラッグをやっているような描写はある)。ただし視聴者が引いてしまうほど冷酷にはならず、その奇抜な振る舞いにもどこかユーモラスなところがあるのは、ダークなドクター・フーを連想させるかな。ちなみにこのシリーズの原案者は、「ドクター・フー」を現在指揮しているスティーブン・モファットだよ。

また「オフィス」のティム役で知られるマーティン・フリーマンもワトソンを好演していて、原作よりも思慮深く、ホームズの行動に翻弄されながらも自分なりの方法で彼を助けようとするワトソンをうまく演じている。彼自身も無意識のうちにスリルを求める人間になっているという描写が巧いな。

ラストの謎解きが少しウヤムヤになっているところはミステリー・ファンにとっては不服だろうが、ホームズを狙う「あの男」の存在が示唆されて、今後の展開にも非常に期待が持てる。ぜひ日本でも放送してほしい良作。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です