「The Complete D.R. and Quinch」読了

まだ駆け出しだった頃のアラン・ムーアが、アラン・デイビスと組んで80年代前半に「2000AD」誌に連載していたコミック作品を全話収録したもの。ジェイミー・デラーノがストーリーを担当したカラーの話も収録されてるほか、ムーアのスクリプトもちょっとだけ紹介されてるぞ。

これはウォルド・”D.R.” (Diminished Responsibility”)・ドブスとアーネスト・エロール・クインチという2人のエイリアンのティーンエイジャーが巻き起こすトラブルを描いたコメディ・タッチのSF作品で、空飛ぶバイクを暴走させながら銃をぶっ放す2人のイタズラは半端じゃなく極悪非道だったりする。第1話からしてタイムマシンを使って地球の歴史を改竄し、しまいには地球を破壊させるような話だからね。その他の話もDRとクインチが軍隊に入れられたり、恋人ができたりとプロット自体は一般的なものだが、大量の犠牲者が出てオチになる展開はかなりシニカルなものがあるな。

ウィキペディアによると2人のモデルは「ナショナル・ランプーン」誌のキャラクターにあるとのことだけど、あれは読んだことないので良く分かりません。むしろ「BEANO」とか「DANDY」といったイギリスの少年向けコミック誌に出てくる、デニス・ザ・メナスのような悪ガキたちのSF版といった感じがしたな。ムーア自身もDRとクインチのことを「核兵器を持ったバッシュ・ストリート・キッズ」なんて表現していたような記憶がある。ただしあちらの悪ガキたちは最後はイタズラの報いを受けて父親や先生に尻を叩かれるオチが大半だったのに対し(当時はああいう体罰が普通に描かれてたけど、今はどうなんだろう)、DRとクインチはどれだけ周囲に迷惑をかけようともノホホンとしてるあたりが、ムーアの毒々しさを感じさせるな。

まあ後のムーアの作品に比べるとストーリーはとても単純だし、デイビスのアートも既に巧いとはいえまだ粗削りなところがあるし、これを買うお金があったらムーアの他の作品を先に買うことをお勧めします。というかムーアの初期の作品としてはぜひ「マーヴェルマン」を再販してほしいところですが…。

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