ウォーレン・エリス&ジョン・カサディの傑作コミック「プラネタリー」の最新単行本にして最終巻。刊行の歴史を見れば分かるように、最終話の#27が出るのが非常に遅れたので、前回から5年ぶりの単行本になるのか。
全体的な展開としては従来の「地球の奇妙な歴史を調査する」という話が減り、プラネタリーの宿敵である「THE FOUR」との対決に向けて盛り上がっていくところに重点が置かれている。また「THE FOUR」がファンタスティック・フォーの奇怪なパスティーシュであるのを始め、さまざまなコミックやパルプ小説の登場人物をモデルにしたキャラクターが出てくるのが「プラネタリー」の最大の特徴だったんだけど、今回はローン・レンジャーとザ・シャドウに似たキャラクターが出てくる程度で、多元宇宙やデジタル物理学(のようなもの)、ミクロコスモスといった理論に焦点をあてた、よりSF色の強い内容になっている。
ウォーレン・エリスの作品ってアイデアは抜群な一方で話が進むとすぐにダレるイメージが強かったんだが(「トランスメトロポリタン」とか)、この「プラネタリー」では年に数話というスケジュールが役立ったのかどの話も読み応えがあるし、伏線もきちんと回収されていて上出来。これに加えてジョン・カサディのアートも大変素晴らしい。こないだ邦訳が出た「アストニッシングX‐MEN」で彼のアートに興味を持った人はこちらを持った人はこちらをチェックしてみてもいいんじゃないかな。
スーパーヒーローものにSFやパルプ小説、香港映画といったさまざまな要素を絡め合わせた「プラネタリー」は唯一無二のコミックであった。もはや新刊を首を長くして待つ必要はないものの、これで終わりかと思うと少し寂しい気もするのです。