「RUBBER」鑑賞


殺人タイヤの襲撃!というぶっとんだコンセプトのおかげで日本でも(一部で)話題になっていた作品。フランス人監督のカンタン・ドゥピューってミスター・オワゾという名義で活動してるミュージシャンらしいが、知らんなあ。

舞台となるのはアメリカの砂漠地帯で、意識を持った古タイヤがむっくりと起き上がるところから話は始まる。このタイヤ(クレジットではロバートという名前が付いている)は出会ったものを片っ端から破壊していくような気が荒い奴なのですが、いかんせんオンボロのタイヤであるために空き瓶も踏みつぶせない。しかしロバート君には秘密兵器があって、全身を震わせて意識(?)を集中させることで念動力を使うことができ、これで小動物や人間の頭を「スキャナーズ」よろしくボーンと爆発させることができるのでした。この能力をもってロバート君はモーテルや近くの町で惨劇を繰り広げていくのでした…というのが主なストーリー。

これだけ聞くと変なB級ホラーのように思えるかもしれないが、話にはもう1つメタフィジカルなコメディの要素があって、映画の冒頭から町の保安官が車のトランクから出てきて「『ET』のエイリアンはなぜ茶色なんだ?恋愛映画の登場人物はなぜ狂おしい愛に落ちるんだ?(略)それらに理由なんてありはしない。君たちがいまから観る映画にだって理由なんかないんだ。」なんてカメラに向かって語りだす次第。おまけにご丁寧にも10人くらいの「観客」がこの映画に登場していて、ロバート君の行動を双眼鏡でリアルタイムで観察しながら「いまのは念動力だぜ!」なんていらぬコメントをつけてくれたりしている。

やがて上述の保安官がロバート君の事件を担当したり、観客がひどい目にあって保安官のところに向かうなど、メインの話とメタな部分がどんどん絡み合っていくのだが、こういうのってイヨネスコあたりを意識してるんだろうか。でもこういった不条理さとB級ホラーって決して良い組み合わせではないようで、下手な楽屋オチを見せられた気分というか、話が進むにつれて誰が死のうがタイヤがどうなろうが結構どうでも良くなってくるのは否めない。あとタイヤに追いかけられるゴスのフランス娘は意外と可愛いんだが、ここはやはり金髪のスクリームクイーンが欲しかったな。

トレーラーをから真っ当なホラーを期待してると壮絶な肩すかしをくらわせられるし、劇場で金払って観るほどの作品ではないだろうけど、笑えるところは笑えるし、音楽も結構いいのでレンタルビデオとかで観るぶんには悪くない映画かと。