「ザ・インタープリター」鑑賞

シドニー・ポラック監督の「ザ・インタープリター」(THE INTERPRETER)を観た。個人的には「つかみ」が何も感じられない作品だったんだけど、まあショーン・ペンが出ているということで。

ストーリーはアフリカのマトボ共和国の出身で、現在は国連の通訳として働いている主人公シルビア(ニコール・キッドマン)が、独裁者として悪名高いマトボの大統領を暗殺するという何者かの会話を国連本部内で偶然耳にしてしまう。シルビアはすぐに当局に通報するものの、まるで誰かが彼女の命を狙っているような出来事が身の周りで頻発するようになる。そしてシークレット・サービスのエージェントであるトービン(ショーン・ペン)は事件の調査に乗り出すものの、やがてシルビアが過去に活動家であったことを知り、彼女に対する疑念を深めていく…といったもの。

結論を先に言うと、凡作。一般人がひょんなことから事件に巻き込まれて…といった形のシンプルなスリラーにしておけばよかったのに、政治的ドラマや主人公2人のロマンス、さらにはシルビアの過去の話などが途中でどんどん追加されて、ずいぶん話の焦点がぼけたものになってしまっている。冒頭の展開がやけに速いのに比べて、主人公の過去が明らかになってくるあたりから話がずいぶんこんがらがって、ラスト間際では耳にした会話の件なんてどこかに消えてしまってるのは問題かと。しかも物語の背景にはアフリカでの反体制活動家の弾圧という非常に真剣なテーマがあるにもかかわらず、それが主人公のロマンスやトービンの身の上話(いずれも中途半端)といったチンケなプロットに邪魔をされている。本当に国連本部を使用したシーンや大統領の護送シーン、バスの大爆発といった規模の大きい見せ場が随所にあるものの、主人公たちの物語ををやけに前面に押し出しすぎたせいで、それらが十分に活かされていないんじゃないだろうか。特にバスの爆発に至るまでのテンションの上げ方はうまく出来ていたのに、先の読める展開になっていたのは残念(主人公が途中で死ぬわけないでしょ?)。

そもそもこの映画を楽しめるかどうかの基準って、ヴェスパを乗り回すアフリカ出身の金髪で長身の美人が、国連で通訳を務められるくらいに頭脳明晰で、とても暗い過去を持った政治活動家で、シークレット・サービスや殺し屋を出し抜けるくらいの腕前を持っている、ということを素直に受け入れられることが出来るかどうかにあると思うんだが、悲しいかな俺の目には役を淡々とこなすニコール・キッドマンの姿しか映らなかった。しかも変なところでリアリティを持たせたかったのか、言葉に奇妙なアクセントがあったのが好きになれなかった。トップレベルの通訳なんだし普通の英語を喋ってもよかっただろうに。またいつもなら演技の冴えるショーン・ペンも、謎の女に振り回される役柄というのが今回は災いして、どうも奥の深い演技が見られなかった感じがする。彼の相棒役であるキャサリン・キーナーに至っては見所がゼロ。いい役者なのに。むしろキッドマンとキーナーの役柄を交換したほうが良かったんじゃないか、と思ってしまう。

アフリカの政治をテーマにしたドラマなら、ちょっと趣向は違うけど「ホテル・ルワンダ」を観ましょう。

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