地元の恥

「狭山事件」第2次再審請求、最高裁も棄却。俺の育った土地である埼玉県狭山市で1963年に起きた「狭山事件」で、犯人として誤認逮捕された石川一雄さんの特別抗告が棄却されたとか。

実家とは少し離れた地区での出来事だということもあり、恥ずかしながら大学生になって興味を抱くまで詳細を知らなかったのだが、これは部落差別や女子高生の(強姦?)殺人といった日本社会ではおおっぴらに議論できないような要素が絡んでいる非常に特異な事件である。身代金を取りに来た犯人(とされる人物)を逃してしまった警察が名誉回復にやっきになったこともあり、部落出身の石川さんがスケープゴートにされたというのが真相らしい。

実は石川さんの逮捕後も関係者の奇怪な死が相次いでいるのだが、被害者が農家の出身であり、農村特有の閉塞性が関連しているという説もある。また被害者の人間関係などをもとに真犯人を指摘するような書籍やホームページもあるが、あくまで推測の域を出ない。
ただ地元の人間からしてみると、一部の人々が挙げている陰謀説や黒幕説はちょっと誇張されすぎかな、という印象も抱く。部落解放同盟や暴力団がうごめいてるほど大きな土地ではないので。ちなみに石川さんが徒歩で被害者(自転車に乗っており、見知らぬ人に付いていくような性格ではなかった)を連れ回したとされるルートは、実際に通ってみるとかなりの距離があり、これだけでも警察の主張の信憑性は疑わしいと思う。

石川さんが「再審請求中の無期懲役囚としては、異例の仮出獄をし」とあるように、検察側も石川さんが無実であることは認識しているものの、この事件の再調査が行われると部落問題などの日本の暗部に日の目が当たってしまうことから、このまま「仮出獄させたんだから、とりあえず犯人のままでいてください」と物事をうやむやにしてしまいたい気持ちがあるのではないか。

現在の狭山はベッドタウンとして団地が立ち並ぶ土地になったが(堤義明のおヒザ元でもある)、その陰でひっそりと被差別部落や農村が残っている。数十年前のこととはいえ、市民を護るはずの警察がこのような誤認逮捕を行ったことは地元民にとって大きな恥である。この恥を消すためにも、石川さんの一刻も早い無罪証明が望まれる。

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