批評家のあいだで高い評価を受けたライアン・ゴズリング主演のサスペンス。
主人公は物静かなドライバーで、昼間はメカニックや映画のスタントドライバーとして働き、夜は強盗の逃走を手助けする運転手という2つの顔を持っていた。そんな彼が同じマンションに住む子持ちの若い女性と仲良くなったとき、刑務所に入っていた彼女の夫が出所して帰ってくる。そして悪い仲間たちから仕事の依頼を受けて困っていた夫を主人公は助けることにするが、予期しなかった展開になり…というようなストーリー。
洗練されつくしたシネトグラフィーに、無駄な要素をそぎ落とした脚本と編集のおかげで、LAを舞台としたサスペンスなのにまるでヨーロッパのアートフィルムを観ているかのよう(監督のニコラス・ウィンディング・レフンはデンマーク出身)。主人公の名前が劇中で明かされず、役名がそのまんま「ドライバー」となっている点なども作品のストイックさを象徴しているといえよう。
でもサスペンスの臨場感は非常に楽しめるし、カーチェイスのシーンも迫力があって良かったよ。アメリカでは「ワイルド・スピード」みたいな内容を期待してたのに!と実際に訴訟まで起こした物好きがいるようだけど、ボンクラなアクション映画なんぞよりもずっと面白いよ(本当にボンクラなアクション映画を期待してるなら話は別ですが)。80年代っぽいシンセポップを多用したサントラも、不似合いのようで実はとても効果的だった。
寡黙に自分の仕事を行う主人公を演じるライアン・ゴズリングは非常にカッコよくて、仏頂面なんだけど子供の前などではニンマリ笑うあたりがいいなあと。物事の状況が悪くなっていくにつれ服がどんどん血に染まっていくあたりはかなりサイコな人なのですが、絶妙なバランスでアンチヒーローとしてのスタンスを保っている。彼に仕事をもちかける役のアルバート・ブルックスも、従来のコメディアンのイメージとはうってかわって腹黒いボスを好演。ヒロイン役のキャリー・マリガンは毎度のことながら薄幸な女性を演じてますが、まあ似合ってるんだから文句は言うまい。他にもブライアン・クランストンやロン・パールマン、クリスティーナ・ヘンドリックスといったケーブル局の人気番組で活躍する役者たちが脇を固めているぞ。
主人公がちょっと万能すぎるような気もするし、LAってもっと渋滞してない?というツッコミもあるのですが、非常に完成度の高い洗練された作品。ただその洗練度のゆえに万人受けするものではないかな。あとトレーラーが意外とネタバレ満載なので要注意: