原作の大ファンなので「コンスタンティン」を観に行く。駄作であることを確認するために行ったのだけど、やはり期待は裏切られなかった。マチネー公演で4.25ドルという破格の値段で観れたのがせめてもの救いか。 ニール・ヤングがコンサートをやるというんで見に行ったらポール・ヤングが出てきた、というような感じの映画。キアヌ・リーブス演じる主人公ジョン・コンスタンティンは、俺が愛する原作コミック「HELLBLAZER」の主人公ジョン・コンスタンティンとは似ても似つかぬキャラクターなので、今後は区別のためにキアヌ版を「コンスタンティソ」と呼ぶことにする。
原作は15年以上も続いてる人気シリーズだが、主人公のコンスタンティンはまず何よりも「イギリス人」である。しかも金髪で(モデルはスティング)、ヒーローというよりもトリックスター的なふざけた奴で、みすぼらしい三枚目といったタイプなのだ。オカルトには精通しているものの魔法が使えるわけではなく(彼の能力は意図的に謎めいたものになっている)、腕に変なタトゥーもないし、十字架まがいのカッコ悪い機関銃を持って悪魔と戦うようなこともない。つまり映画のカリフォルニア製コンスタンティソとはまったくの別人なのだ。ここまでキャラクターの設定を変えるなら、コミックを原作にせず完全にオリジナルの作品にしたほうがマシだったろうに?
さらには彼の相棒であるチャズは原作だとコンスタンティンの幼なじみで、オカルトに無縁の気のいいタクシー運転手だけど、映画では黒魔術に憧れる若造になってしまっている。コンスタンティンが別物になるというのは事前から話は聞いてたけど、チャズがあそこまで小生意気な奴になるとは知らなかったので、俺は本気で怒りましたよ。
こうなると麦茶をウイスキーだと言われて差し出されたようなもので、何を期待していいのかまるで分からなくなってしまったが、肝心の映画の内容も何だかどうでもいいようなものだった。まあ典型的なホラーがかったアクション映画で、それなりに見所のある特殊映像なんかもあるものの、原作のファンとしてはどうしてもコンスタンティソの行為すべてに違和感があり、話に集中できず十分に楽しめなかった次第である。しかも変なところで原作そっくりのシーンが登場したりするんだもんなあ。それに原作のコンスタンティンは天国も地獄も嫌ってるような孤独な人間だけど、映画版では死後に迎え入れてもらうため天国に「媚びる」奴になっていたのには失望した。あとラストシーンのコンスタンティソの行動にも激怒したけど、エンドロール後の「おまけ」にもかなりムカついたので、エンドロールが始まった途端に劇場から悪霊のごとく退散することをお勧めします。
原作はもっと大人向けの洗練されたホラーなんだから、アクション映画でなくもっとオフビートの内容にすればよかっただろうに…。「シックス・センス」みたいな。DCコミックスはワーナーが親会社である都合上、どんなコミックでも大衆向け娯楽作品に映画化されてしまうのが痛いところか。頼むから他のヴァーティゴ(DCコミックスの大人向けレーベル)作品を映画化するときは、もっと原作に忠実に作ってくれ。
本編開始前にリチャード・リンクレイターの「暗闇のスキャナー」のトレーラーが流されてたが、「コンスタンティン」もどうせ同じキアヌを主人公に持ってくんだったら、「スキャナー」同様にロトスコープによるアニメ風のスタイルにしたほうが原作らしくなったかも。
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