「ゴッド・ブレス・アメリカ」鑑賞


WORLD’S GREATEST DAD」のボブキャット・ゴールドスウェイトによる新作。

フランクはしがない中年のサラリーマンで、妻子とも別れてひとり寂しく暮らしていた。毎晩のように放送されるゴミのような番組やニュースに嫌悪感を抱きつつもテレビを眺める凡庸な生活を送っていたのだが、ある日ハラスメントの容疑をかけられて職場を解雇されたうえに頭に脳腫瘍が見つかるという災難に見舞われてしまう。これによって自殺を考えるフランクだが、いっそ死ぬ前にテレビで見かけた生意気なクソガキを殺してから死のうと考え、彼女の通う高校に向かう…というストーリー。

フランクの所業に惚れ込んだロキシーというサイコな女子高生が彼に加わり、2人がアメリカ各地をまわりながら殺戮を繰り返していく内容になっていて、2人の裁きをうけるのはリアリティー番組に出てくるアホなティーンや、ティーパーティーのデモ参加者、ニュース局の保守コメンテーターなどなど。とはいえフランクは極端なリベラルとかアナーキストというわけではなく、単に世の中のゴミっぷりに当惑してるごく普通の中年として描かれている。ここらへんは監督の世間に対する考えがストレートに出てるみたい。サイコな女子高生が相棒にいることもあり雰囲気的には「スーパー!」に似てるんだけど、あっちよりもより社会的で暗い内容になってるかな。

ちなみにアメリカの病理(というかトラッシュ的なところ)を扱った作品なので、彼の国の時事ネタとか文化にはある程度精通してないと十分に楽しめないかも。アメリカン・アイドル(特にウィリアム・ハンのやつ)とかビル・オライリーとかウエストボロ・バプティスト教会とかについてはざっと知っておいたほうがいいでしょう。あと基本的にサタイアなので、話にリアリティーが無いとか文句言うのはダメよ。

ストーリー自体は安直とはいえカタルシスを与えてくれる展開が楽しめるんだけど、最後までヒネリがあまり無かったかな。トレーラーが話を8割くらい語ってしまっているというか。またニューヨークやハリウッドなどでロケを行ったりしてそれなりに製作費はかかっているものの、どことなく全体的に散漫な感じになってしまったことは否めない。高校という小さな世界における中年男の悲哀を描いた前作のほうが、話としてはうまくまとまっていたのではないかと。

なお一番のめっけものはロキシー役を演じるタラ・リン・バーという女優で、もう18歳らしいが背が低いこともあり童顔の高校生の役がやたらハマっていた。ハッとするくらい美しい表情を見せる一方でニコニコしながら銃を乱射し、アリス・クーパーや「或る夜の出来事」をさらっと引用してたりすんの。これからの活躍が期待できそうな役者ですね。

個人的には「WORLD’S GREATEST DAD」と比べて必ずしも優れているわけではなかったけど、芸能人がメシ食ってるだけの番組を観て、彼らを毒殺したいと思ったことのある人にはお薦めの作品ではないでしょうか。

しかしウィリアム・ハンって、現在は犯罪アナリストとして働いてるのか…。