「Seven Psychopaths」鑑賞


「ヒットマンズ・レクイエム」に続くマーティン・マクドナーの長編第2弾で、相変わらず過度なバイオレンスとブラックなユーモアが混じり合った傑作。

ハリウッドで脚本家をやっているマーティはライターズ・ブロックに陥っており、「7人のサイコパス」という作品の脚本が書けずに酒ばかり飲んでいる状態。そんな彼を心配した友人のビリーは実在の連続殺人犯の話をしてネタにさせ、さらには「サイコパス求む!」という広告を出したためにマーティのもとにヤバそうな人がやってくる羽目に。一方でビリーは公園で犬を誘拐し、飼い主が懸賞金をだしたところで「返却」するという詐欺行為で小金を稼いでいたのだが、マフィアのボスの犬を盗んだために相棒のハンスとともに狙われる身になってしまい…というようなプロット。

題名通りにサイコな人たちがたくさん出てくる展開になっており、マフィアのボスなんてのはまだ可愛いほう。マフィアを狙う連続殺人鬼とか、数十年前からシリアル・キラー殺しをやってるカップルとか、なんかヤバそうな人たちがいろいろ出てきます。しかも「こいつは普通そうだな」と思ってた人が後になってどんどんサイコになっていくあたりの展開がすごい。登場人物はみんな頭のネジが緩んでるので会話が微妙にかみ合わなかったりするんだけど、それでも話がグイグイと進んでいく感じ。

サイコさんの小話とかフラッシュバック、さらにはマーティの脚本の中の話などが随所に挿入される構成は、いかにも作家による脚本だな、という気もするが、どれも奇想天外でぶっ飛んでるので観てて飽きがこない。現実世界でも空想のなかでも人がバンバン撃たれて死んでいっております。

キャストも無駄に豪華で、コリン・ファレルやクリストファー・ウォーケン、サム・ロックウェル、ウディ・ハレルソンなどに加え、トム・ウェイツ、ハリー・ディーン・スタントン、ガボレイ・シディベ、オルガ・キュリレンコなど実に濃い人たちがいろいろ出演。どうもクリスピン・グローバーも一瞬出てるらしい。あとミッキー・ロークも出るはずだったのが監督とケンカ別れしたのだとか。

前回の「ヒットマンズ」はブルージュという小さい街の話だったために、まだ舞台劇っぽさが残っていたが、今回の舞台は砂漠などにも繰り広げられ、砂漠に光る月の映像なんてのがとても美しいぞ。ただ砂漠に移ってからの展開は少しダラけたかな。

巧みな台詞回しと過度なバイオレンスのためにタランティーノ作品と比較されるのは避けられないが、やたらオマージュを捧げたがるタランティーノよりも、もっとブラックでドライな展開が続くこっちのほうが個人的には好きだな。人が次々と死ぬ話の展開ながらも、ゲラゲラと笑える内容になっておりました。日本でもきちんと公開・宣伝すればカルト人気を誇れるであろう傑作。