日本じゃあまり報道されないが、アメリカではこの時期にサンディエゴで巨大なコミック・コンベンション(コミコン)が開催され、全米中のオタクどもがコスプレして集結し、マンガやフィギュア買ったりプロのアーティストのサインもらったりするわけですよ。
もともとは70年代に数百人ほどが参加した程度の集いだったが、特に21世紀に入ってからはジャンル映画の格好のマーケティングの場所であることに気づいた映画会社がスターなどを送り込んで大々的な宣伝やニュース発表を行い、もはやコミックというより映画やゲームの集いとなって10万人以上の参加者がやってくる大イベントになってしまった。今年はメタリカが来てライブをやったらしく、今後は音楽業界も絡んでいくのかな?
そんな数多の人々が集まるコミコンの姿を紹介したのがこのドキュメンタリーで、監督は「スーパーサイズ・ミー」のモーガン・スパーロックだが彼自身はカメラの前には登場しません。スタン・リーやジョス・ウィードン、ギレルモ・デル・トロ、グラント・モリソン、AintItCoolのデブ君などオタク好みの有名人がそれぞれのコミコン体験を語る映像を散りばめながら、コミコンに参加した何人かの一般人を追った内容になっている。
カメラが追う参加者はフィギュアのコレクター、アマチュアのコミックアーティスト、コミックのディーラー、コスプレのコンテストの参加者、そしてケヴィン・スミスのいる会場でガールフレンドにプロポーズしようと試みる少年など。コミコンの数日間のなかで彼らはそれなりの喜びや挫折を経験したりするわけだが(ちなみにプロポーズは成功するよ)、興味深かったのは自分のアートをコミック会社のブースに持ち込んで披露し、それが評価されたことで仕事を得るアマチュアのアーティストのところで、コミック会社がきちんとカウンセリングしてプロへの道を開いてあげる、という場は日本のコミケとかにもないんじゃないかな?その一方で作品を評価されずに落胆するアマチュアもいたりするわけですが。
また参加者のなかでいちばんパッとしなかったのは皮肉にもコミックのディーラーで、老舗オンラインストアのマイルハイ・コミックスの社長が出てくるんだけど、あまり期待したほどの売上も出せず「コミコンはもはやコミックのイベントではなくなった」と嘆くのが印象的であった。俺もむかしマイルハイを使ってたので寂しいのですが、ゲームや映画の派手な宣伝が行われてる片隅で、古いコミックを並べて売っているディーラーたちは確かに時代に取り残されていくのかも。
コミコンの裏事情を解説したりこれからの課題を問うわけでもなく、ただ参加者たちの様子を撮影したドキュメンタリーであり、金払ってまで観るようなものではないかもしれないけど、参加者の熱気はよく伝わってくるし悪い作品ではないですよ。いつか俺もコミコン行ってみたいなあ。