「BRASS EYE」鑑賞

イギリスの極悪風刺番組「BRASS EYE」のDVD(輸入版)を発見したのでさっそく鑑賞。 1997年にチャンネル4で6話ほど放送されたこの番組は、ニュース特集番組(「NHKスペシャル」みたいなやつ)の形式をとりながら、毎回「ドラッグ」「セックス」「犯罪」といった様々なテーマに焦点を当てていくのだけど、その風刺の度合いがハンパじゃなく凄いのだ。例えば「セックス」の回ではエイズを「良いエイズ」(輸血による感染)と「悪いエイズ」(性交による感染)に分類したり、「ドラッグ」の回では麻薬の怖さを子供に教えるため、両親が麻薬で突然死したと伝えるとか、やらせとはいえキワドすぎるネタが連発されていく。
とにかくネタのそれぞれが細かくできていて、「東京ではこんなものが流行っています」なんて言いながら「犬の体内を通して麻薬を濾過する装置」のコマーシャルがきちんと日本語で紹介されたのには、爆笑するとともに感心してしまった。「肺にズドンと効きます!」だって。

また国会議員や芸能人が毎回ダマされて、ありもしない問題に対するメッセージをカメラに向かって語るネタが最高に面白い。電線から落ちて人を直撃する「重い電気」(もちろんこんなものは存在しない!)の恐怖について真面目に語るラジオDJとかの姿を見てると、あまりのバカバカしさに「これもやらせじゃないの?」と思うけど、架空のドラッグについて本当に国会で質問した議員がいたとか。

よくこんな番組を地上波で放送できたなと驚いてしまうけど、「ペドフィリア(小児性愛)」を扱った2001年の特番は本当にヤバい。刑務所で全身麻痺になったにも関わらず機械のスーツを着て子供を襲おうとする男や、エミネムまがいの性倒錯のラッパーとかが登場し、最後には子供たちの「いつかはOKするけど、今はダメよ」なんていう合唱で幕を閉じたりして、とにかく観てて真っ青になるくらいの危険なネタが続出するのだ。

例によって有名人も次々にダマされ、「子供の姿がおぼろげに映ってる写真でも、倒錯者は一目で興奮します」と語るゲイリー・リネカーや、存在しない小児性愛反対キャンペーンのTシャツを着てカメラに訴えるフィル・コリンズとかが登場。「倒錯者はこんな顔に変装できるんです」と言ってホール&オーツの写真を出してくる国会議員には大爆笑した。
当然ながらこの特番には数千件の抗議が殺到し、タブロイド紙にコテンパンに叩かれたほか、国会でもかなり問題になったとか。でも番組を糾弾した議員の何人かは、実は番組を観てなかったというオチもある。

この番組で主演・脚本・製作・その他を担当したクリス・モリスは、ニュース番組の形式をとることで社会問題に対するメディアの姿勢を風刺したかったらしいが、あまりにもネタがきついので普通の視聴者なら怒るだろうに。また「社会に貢献する」メッセージを有名人がいかに鵜呑みにするかを痛烈に皮肉ってるけど、フィル・コリンズなんかは本当に番組を訴えようとしたらしい。
クリス・モリスはラジオの生放送中に部屋をヘリウムで充満させようとしたとか、チャンネル4のボスの悪口をサブリミナル・メッセージで放送したという筋金入りのプランクスター。こんな人が今でも番組を製作できるイギリスのテレビ業界はやはり侮れない。

I wonder why the wonder falls

去年の3月に僅か4話だけ放送され、あっという間にキャンセルされたTVシリーズ「WONDERFALLS」のテーマソングをXTCのアンディ・パートリッジが担当していたことを知って驚く。XTCは8歳の頃からファンなのであります。 さっそくその曲「I Wonder Why The Wonder Falls」を聴いてみた。良くも悪くもパートリッジ節が炸裂した曲で、必ずしも新鮮味は感じられないものの、彼の久々の新曲とあれば好きにならずにはいられない。あまり芸のないビデオもこのサイトで入手できます。ところでXTCの新譜はまだでしょうか、パートリッジ先生?

「WONDERFALLS」は未見だけど、ナイアガラを舞台にした「ドラメディー」だとか。それなりに根強いファンがいるらしく、こないだ全13話を収録したDVDセットが発売されていた。最近はいろんなTVシリーズのDVDセットが発売されてるが、このように放送されなかったエピソードも(それなりに)手軽に観れるようになったのは歓迎すべきことかと。数年前にUPNでやってた誰も知らない傑作「SPECIAL UNIT 2」とか、またDVDで観たいなあ。

Ex- FBI official was ‘Deep Throat’

ニクソン大統領とウォーターゲート事件の関係をワシントン・ポスト紙がすっぱ抜くのに貢献した最重要人物であり、その正体が30年ものあいだ謎となっていた内部告発者「ディープ・スロート」の正体が突然公表されていたので仰天する。当時FBIのナンバー2であった人物、マーク・フェルトが自ら認めたとか。 ディープ・スロートの正体についてはブッシュ親父とかキッシンジャーとかも候補に挙がっていたわけだが、30年もの謎というと途中でいろいろ尾ヒレがついてきて、実際の話よりも大きなものに感じられてしまうわけで、それがいざ解明されてしまうと、どうしても肩すかしをくらったような気分になってしまう。「JFK狙撃の真犯人判明」とか「火星人発見」なんてことが将来あったとしても、実際は意外とショボく感じるのかもしれない。

彼はアメリカの歴史の中でも1度しかない「大統領の任期中の退任」の原因となった人物だが、ニュースを見る限りでは「国のヒーロー」的な見方をされているようだ。これが日本だったらどう扱われるんだろう。「反日分子」とか?

「VERONICA MARS」第1話

弱小ネットワークであるUPNで昨年開始され、低視聴率ながらもギーク連中にカルト的な人気を博した少女探偵ドラマ「VERONICA MARS」がやっとカナダで放送されることになったので、さっそく観てみる。 金持ちの子弟と、その金持ちたちに仕える人々の子弟が通うネプチューン高校に通うヴェロニカ・マーズは、1年前までは親が大金持ちのボーイフレンドがいて、友達がたくさんいて、非常に楽しい毎日を送っていた。しかしある晩、ボーイフレンドの妹であり、ヴェロニカの親友だった少女が遺体となって発見されたことから彼女の生活は一転する。ボーイフレンドには突然フラれ、保安官だった父親は事件の捜査ミス(?)のために職を失い、母親は家を出ていってしまう。他にも悲惨な目にあったヴェロニカは、私立探偵となった父親を手伝うようになるが、ある依頼がどうも自分の母親に関係があることを知って衝撃を受け、どんな目に遭おうとも一連の事件の謎を解明しようと誓うのだった…というのが第1話の大まかな話。

金持ちのクソガキどもにバカにされ、教師にも嫌われてる高校生の疎外感がよく表現されてた。でも内容は決して暗いものではなく、むしろヴェロニカが頭脳を使って相手を懲らしめていく、といった比較的明るいトーンになっている。強いて言えば「聖少女バフィー」に似てるところがあるかな。第1話を観た限りでは過去のフラッシュバックが多用されてて話の流れがつかみにくいところもあったものの、次回も観てみたくなるような作品になっている。アメリカのTVシリーズの常として、20代半ばの役者(クリステン・ベル)がティーンエイジャーを演じてるのがちょっとアレだけど、日本で放送してもそれなりに人気が出そうな番組だと思う。

「KINSEY」鑑賞

約1万8000人もの男女にセックスについてインタビューして性科学の分野の地平を開き、1960年代のいわゆるセックス革命のきっかけをつくったアルフレッド・キンゼイ博士の伝記映画「KINSEY」こと「愛についてのキンゼイ・レポート」をDVDで観る。邦題は大ウソなので、デートムービーと勘違いして恋人と観に行ったりすると非常に気まずくなると思うのでご注意を。日本ではボカシかけるのか? 1894年に生まれ、厳格なキリスト教徒である父親のもとで育ったキンゼイは、野生動物の生態に興味を抱き、やがてタマバチの研究で名を馳せるようになる。しかし結婚したときに妻とのセックスに失敗したこと(両者とも初だったのだ)などをきっかけに性科学に興味を抱くようになり、アメリカで一般的に考えられている「普通で正しいセックス」と実際に人々が抱いている性的嗜好がいかに大きくかけ離れているかをまとめた通称「キンゼイ・レポート」はアメリカ社会に大きな衝撃を与える。しかし彼の研究は議論の的となり、彼は保守系グループからの激しい批判にされされるのだった…というのが大まかなストーリー。

個人的にはこの映画が公開されるまでキンゼイ博士のことをまったく知らなかったのだけど、強い信念を持って研究を達成しようとする彼の姿をリーアム・ニーソンが好演。最近では「お師匠様」の役ばかり演じてる感の強いニーソンだが、むしろ「マイケル・コリンズ」とか「シンドラーのリスト」みたいな、苦悩する男性の役のほうがこの人には似合ってると思う。そして彼の研究に困惑しながらも(そりゃそうだろう…)、彼を陰で支える妻を演じるローラ・リニーもいい感じ。他にもオリバー・プラットやディラン・ベイカー、ジョン・リスゴーにウィリアム・サドラーといった実に濃いオヤジたちが続出します。そしてキンゼイの弟子を演じるピーター・サースガードに至っては、文字通り体を張った怪演を見せつけてくれる。

監督と脚本は「ゴッド・アンド・モンスター」のビル・コンドン。あの映画と雰囲気はよく似ているけど、密室劇だった「ゴッド〜」に比べ、こちらの作品はより幅の広いテーマを扱っている。文句があるとすれば、時間の都合のために、長年にわたるキンゼイの研究の光景をずいぶん省略したような感じがすることか。そのためキンゼイ博士が深い洞察力を持って入念に研究をした人なのか、むしろ猪突猛進的に進んでいった人のか、どうも分かりにくいところがあったかな。
あと題材が題材だけに、「真面目なジョン・ウォーターズ映画」(そんなものがあればだが)のように見えてしまうシーンもあって、ついゲラゲラ笑ってしまうこともあった。これも監督の意図か?

性がずいぶん開放された現在においても「キンゼイ・レポート」は論議の対象になっており、この映画が公開されるにあたってキリスト教団体からクレームが来たらしい。それだけ性と文化のタブーは密接に繋がっていると言うことか。でも観る人全員にとって何かしらの関連性をもった作品なので、観て損はしないと思う。

ちなみに観たDVDは2枚組で特典が大量に付いていて、キンゼイの研究をもとにしたテストなんてものも含まれている。それによると俺は「あんまり性的に興奮せず、(妊娠や性病とかの)リスクを考えてしまうと萎えるタイプ」だそうだけど、本当なんでしょうか。