「スパイクTV」から改名したパラマウント・ネットワークの新作シリーズで、89年の映画「ヘザース/ベロニカの熱い日」をベースにしたもの。公式サイトでは「アンソロジー」と紹介されていて、ミニシリーズなのかオープンエンドのシリーズなのかちょっと不明。
舞台となるウエスターバーグ高校ではヘザーと名のつく3人の少女たち、通称「ヘザース」が生徒たちのあいだで絶大な権力を持ち、他の生徒を自在に仕切っていた。地味な女子高生のベロニカはそんなヘザースのもとでどうにか無難な学生生活を送っていたが、転校生としてやってきた、JDというどことなく陰のある男子に惹かれるようになる。そしてJDはベロニカとケンカしたヘザースのひとりを陥れるために、彼女の恥ずかしい写真を撮ろうと持ちかけるのだが、物事はあらぬ方向に進展し…というあらすじ。
劇場版「ヘザース」はアメリカの高校におけるスクールカースト(クリーク)を早いうちに描いたことでカルト的人気を誇っている作品だが、あちらのヘザースは3人とも白人のお嬢様っぽいキャラ設定だったのに対し、今回のヘザースは一人はデブ、一人は黒人、一人はトランスジェンダーの男子と、以前なら明らかにマイノリティとして扱われていたキャラクターたちが、ジョックやナードたちに君臨する存在になっているのが現代的なところか。また生徒たちの行為(醜態)はSNSを通じて世界中に瞬時に拡散されるため、いまどきの高校生は学校や地元どころか、世界的な評判を気にしなければならない、という描写が面白かったな。
ただこの「かつては体育会系が仕切っていた高校も、いまはマイノリティが人気がある」というのって、2012年の「21ジャンプ・ストリート」あたりがやったときは目新しいものの見方に思えたけど、最近はちょっとまたステレロタイプ化してきた気もする。特にこの番組ではここらへん明らかに狙ってんな、というセリフが多くてちょっと興ざめ。演技や撮影もちょっと安っぽくて、昨年のヒット作である「リバーデイル」ほどの出来ではないか。
あとこないだのフロリダの高校での銃乱射事件を受けて、高校生たちが結束してSNSを通じた活動を行い、大人の政治家を言い負かすような行動をしているのを見ると、アメリカの高校生って別にフリークの集団とかではなくて、意外とちゃんとしてるんじゃない?とも思ったりはするけど、まあそんな要素をブラックコメディの番組に求めるのは門違いというものか。
メインキャストはそんなに有名な役者は出ていないみたいだけど、JDの母親役として、劇場版のヘザーのひとりだったシャナン・ドハーティーがちょっと出ています。乳がんからは回復したのかな。あとはセルマ・ブレアも別の生徒の母親役で登場するみたい。
劇場版は生徒の地位の逆転劇を短い時間で描いて、文字通りドカーンと爆発して終わらせることができたのに対し、TVシリーズはどうやって話を引っ張るんですかね?予告編を観る限り、むしろヘザースが自分たちの地位をどう維持するか、という話になるのかな?まあポテンシャルはあると思うので、今後の展開に期待。