「Cloak & Dagger」鑑賞


別名「Marvel’s Cloak & Dagger」で、その名から分かるようにマーベルの同名コミックをもとにしたFreeformの新作シリーズ。原作のクリエイターはロケット・ラクーンと同じくビル・マントロ御大な。Freeformとしては初のマーベル作品だけど、過去にもABCファミリー時代にコミックを映像化した傑作「THE MIDDLEMAN」とかやってたのでそんなに違和感はない。

先に原作のコミックのほうを説明しておくと、「クローク&ダガー」という名前が一般的に指すミステリーやサスペンスのジャンルとは関係なくて、光でできた短剣(というか飛びナイフ)を操る白人女性のダガーと、フード付きの巨大な外套をまとい、それに包まれたもの(自身を含む)を自在に瞬間移動させる能力を持った黒人男性のクロークというふたりのティーンのスーパーヒーローを主人公にしたもの。

初登場は1982年のスパイダーマン誌で、そこからスピンオフして独自のミニシリーズ、さらにはオンゴーイングシリーズなどで活躍していったキャラクターだが、いわゆるスーパーヴィランと戦うような内容というよりも、当時社会問題だったティーンの家出とか麻薬問題などを扱った話が多かったらしい…すいません俺ほとんど読んだことありません。まあキャラクターが地味なんだよね。クロークの外見とか能力って少し前に登場したダズラーとよく似たものだったし、クロークは背後でむっすりしてるだけで特徴的なところはなかったし。他の作品にたまにゲストキャラで出てくる人たち、という印象が強かったかな。

マーベルのキャラクターとしてはデアデビルやパニッシャーのようなストリート系ということで、映像化も安上がりに済みそうだと思われたんだろうか。さらに主人公がティーンということでFreeformで放送されることになったとか?とにかくスーパーヒーローの番組というよりも、ティーンの青春ドラマという雰囲気が強い内容になっている。

主人公のタイローン(クローク)とタンディ(ダガー)は幼いときに、ニューオリンズ沖で起きたロクソン・コーポレーション(マーベルではおなじみの悪徳企業)の実験施設が爆破したときの衝撃を水中で受けた結果特殊な能力を身につけたものの、本人たちにはその自覚もなく、また事故の記憶も殆どなかった。しかし事故と前後してタイローンは兄を悪徳警官に射殺され、タンディは父親がロクソンに関わっていたと逮捕され、両者はそのトラウマによって周囲になじめないティーンに成長していた。やがて彼らの能力が覚醒し始め、タンディは光の短剣によって人を傷つけてしまい、タイローンは意図せずに遠く離れた場所へとワープするようになる。その能力に困惑する二人は、やがて大きな運命に導かれて出会うようになり…というあらすじ。

最初の2話まで観たけど話のペースが非常に遅くて、クロークとダガーの能力が発動するのは数回のみ。悪者をバッタバッタと倒すスーパーヒーロー活劇を期待していると、壮大な肩透かしをくらうことになるだろう。タンディの家庭が崩壊寸前で彼女が非行に走っているところとか、兄を失ったタイローンが家でも学校でもいろんなプレッシャーに苦しんでいるとことか、いかにもFreeformっぽい作品だなとは思うものの、それってマーベル作品に期待しているものなのかな、という気もする。

タンディ役は歌手もやってるオリヴィア・ホルト、タイローン役はオーブリー・ジョセフ。まああまり知られてない若手俳優ふたりですかね。有名俳優といえばタイローンの母役に「ER」のグロリア・ルーベンが出ているくらいか。

原作にはない神秘的な予知夢(?)のシーンとかもあって、マーベル作品としては一風変わった出来になっているし、今の段階でも少なくとも「インヒューマンズ」よりは面白くなるだろうとは思うものの、いかんせん話のペースが遅すぎて今後はどうなるかわからんなあ。主人公ふたりが自分たちの能力を完全に使いこなせるようになれば話が面白くなるんだろうけど、それがいつのことになるやら…。

「The Disaster Artist」鑑賞


ジェームズ・フランコ監督&出演、デイブ・フランコ主演というフランコ兄弟のコメディ映画。

2003年に公開されるなり、その演技の安っぽさと脚本の意味不明さが口コミで話題になって、監督&主演を務めたトミー・ワイゾーの強烈なキャラクター性とあいまって早くも「今世紀最低の映画」という評価を得るものの、その内容(コメディ映画ではない)のヒドさが逆に笑えるとして深夜上映などで人気を博し、未だにアメリカのどこかで上映されているというカルト映画「THE ROOM」の製作現場の裏側を描いた同名の本をもとにしたもの。なお「THE ROOM」自体はおれ観てません。

本を執筆したのはデイブ・フランコ演じるグレッグ・セステロで、彼は1998年にサンフランシスコの演劇教室でトミーに出会う。ニューオリンズ出身と言いながらもキツい東欧訛りを持ち、年齢不詳のトミーだったが、その空気を読まない無鉄砲さにグレッグは興味を持ち、ふたりはスターになることを夢見てサンフランシスコからロサンゼルスへと向かう。なぜかトミーは無尽蔵に金を持っており、彼が所有するアパートに移ったふたりは役者稼業を始め、グレッグにはエージェントがつく一方でトミーには何の仕事もやってこなかった。業を煮やしたトミーは自分で映画を製作することを決心し、機材を一式購入して(レンタルでなく。しかも35ミリ&HDの機材両方)、自分は監督と出演を行い、グレッグにも出演させて撮影を開始するのだが、もとから才能のないトミーのおかげで現場は大混乱に陥り…というあらすじ。

簡単なセリフを覚えることができずに何十回もテイクを繰り返すようなトミーを演じるのがジェームズ・フランコで、そのクセのあるアクセント(be動詞がない)をはじめ、トミーの撮影現場での野人のような振舞いを体を張って熱演しています。ほかにもアリソン・ブリーやセス・ローゲン、シャーリーン・イー、ポール・シアー、ネイサン・フィルダー、ハニバル・バーレスといった人気コメディアンがいろいろ出ているほか、ジャド・アパトーやブライアン・クランストン、ザック・エフロン、シャロン・ストーンなどといった有名人がたくさんカメオ出演しているのが観ていて楽しいかも。

エンドクレジットでは実際の「THE ROOM」と今回の映画で再現したシーンの比較も披露されていて、どれも非常にそっくりに作られていて関心するのだが、これってやはり元ネタを知ってる人が、その再現ぶりを観てニヤニヤするたぐいの、内輪ネタを狙った作品だよねえ。例えば「エド・ウッド」では同じくダメ監督を扱っていても、主人公の映画製作に対する情熱が描かれていたものだが、こちらのトミーはひたすらセットで横柄に振舞うだけでキャラクターの内面が描かれていないのだもの。トミーは当然ながらまだ存命だし、ジェームズ・フランコは撮影中にいろいろ彼と話したらしいが、インタビューでも自分のことについてろくに語らず、怒ると電話を切ったりする人でもあるので、あまりパーソナルなことは聞き出せなかったんだろうか。

なお劇中では国籍と年齢が不詳とされるトミー・ワイゾーだが、その後の調査(?)で1955年にポーランドで生まれたことが判明しているらしい。しかし彼がなぜ潤沢な資金力を持ち、500万ドルともされる「THE ROOM」の製作費を賄うことができたのかは、今でも謎のままであるらしい。そこを追ったりしていれば面白い話になったろうになあ。

まあとにかく「THE ROOM」を先に観ていれば、これとはまた違った感想を抱いていたかもしれない。しかし今世紀最低と呼ばれる映画をわざわざ観る気には、どうもなれんのです。

「デッドプール2」鑑賞


面白い映画でございましたよ。前作よりも予算があがって、それが監督降板の一因でもあるらしいけど、アクションシーンとかもうまく派手になってて良かったんじないかと。ざっと感想を:

・ダイヤルの目盛りが11まであるのは、もうお約束だよねー。

・前作に比べると準備期間が短かった作品だが、セリフでダブステップが言及されるたびにダブステップが流れるとか、いろいろ細かいネタが仕込まれていて飽きさせない。いろいろ見逃したネタもあるんだろうな。

・「エセックス」ってXメンのほうの伏線になっているかと思いきや、こっちのほうにも出てきていた。今後はデッドプールとXメンの絡みってどうなっていくんだろうか。ディズニーの口出しも出てくるだろうし、別々のフランチャイズとして仕切ったほうが良いような気もする。

・ジョシュ・ブローリンのケーブルはタッパこそないものの、もともと面白みのない原作のキャラにうまく味付けができていて良かったな。それに比べてシャタースターはあんな扱いでいいのか?Xフォースで今後登場させたりしないのか?

ネタバレ防止で簡単な感想しか述べませんが、感情的に盛り上がるところは盛り上がるし、今のところ今年のスーパーヒーロー映画のなかではいちばん楽しめるんじゃないかな。変に銀河的な規模になってしまったアベンジャーズやジャスティス・リーグよりも、こういうストリートレベルで戦う作品のほうが面白いですね。

「犬ヶ島」鑑賞


公開したばかりなので簡単な感想を。

・ウェス・アンダーソンの人形アニメとしては前にも「ファンタスティック Mr.FOX」があるのだが、失踪した子供を探すドタバタ、という点ではむしろ「ムーンライズ・キングダム」に近い内容であった。ただし話が進むにつれて犬と人間の共存が大きなテーマになってくるので、観ていて連想したのはリブート版「猿の惑星」シリーズであったよ。

・内容はまあ典型的なアンダーソン風というか、お馴染みの役者たちが今回は声優として登場していて、シュールな展開が繰り広げられるというか。ほぼ主役の犬の声をあてたブライアン・クランストンがアンダーソン作品は初参加かな?

・アニメと実写を比べるのも何だが、前作「グランド・ブダペスト・ホテル」の濃厚なストーリーテリングに比べるとクオリティは落ちる。話の展開もベタだなと思うものの、アニメならではのアクション多めの冒険譚にもなっていて、話が盛り上がるところは盛り上がるし、観ていて飽きない内容ではありましたよ。

・欧米では日本人の描き方がステレオタイプではないか、というような批判もあったみたいだけど、架空の都市の話ということもあり、観ていてそんなに気にはならなかった。少なくとも悪気はないわけだし。活躍するのがアメリカ人の交換留学生、というのが少しご都合主義だったかな?

・劇中の日本語もまあ容認できたけど、主人公の少年の声をはもうちょっと感情を込められる役者を使ったほうが良かったろう。かなり棒読みのように感じられたので。

・犬だけでなく猫をもっと見たかったなあ。

・これを言うと白い目で見られるのだが、おれ犬が大嫌いでして、もう一度言うけど大嫌いでして、街の犬を捕獲して隔離する施策はそんなに悪いものではないと思うのだ。おれならあの市長に投票するね!

「キリング・ガンサー」鑑賞


アーノルド・シュワルツェネッガー出演のアクション・コメディ。日本では7月公開。以下は作品の重要な部分について述べてるのでネタバレ注意。

世界の殺し屋のなかでもトップに立つ男、それがガンサー。狙った標的は必ず仕留めるという伝説的なヒットマンだがその正体は誰も知らず、謎に包まれた人物であった。そんなガンサーを倒せば自分こそが世界ナンバー1の座につけると考えた若き殺し屋ブレイクは、毒物や爆弾などの様々なスキルを持った仲間のヒットマンたちを集め、さらにガンサー殺しの記録を残すために撮影クルーを雇い、ガンサーに偽の依頼をしかけて彼をおびき出そうとする。しかし何者かの行動によって彼らの計画はすべて裏目に出てしまい…というあらすじ。

話の顛末はほぼすべてが上記の撮影クルーが映した映像、というつくりになっていて、いわゆるモキュメンタリー的なスタイルをとっている。殺し屋を追ったモキュメンタリーといえばベルギーの名作「ありふれた事件」があるけど、あれよりもずっと緩い内容になっている。

ブレイクを演じるのはコメディアンのタラン・キラムで、彼は監督も務めている。彼の奥さんのコビー・スマルダーズもチョイ役で出演していて、なんか家内制手工業的な雰囲気があるのも悪くはないです。この作品、あとで述べるようにつくりが惜しいところがあるのだけど、その惜しさが劇中で計画がうまくいかずに苦労するブレイクの姿と重なり、まあ応援したくなる小品ではあるのよな。聞くところによるとキラムは「SNL」のレギュラーを降板してまでこの映画作ったそうだし。

とはいえやはり映画としては大きな欠陥がある作品でして、それが何かと明かすとネタバレにもつながるのですが、シュワルツェネッガー演じるガンサーが残り時間3分の1になるまで登場しないということ。その一方では上のポスターのようにシュワルツェネッガーが主人公であるかのような扱いを受けているわけで、主人公が1時間近く登場しない映画というのは何なのかと。劇中だとブレイクたちが「ガンサーの正体は何者だ??」とかやってるのだけど、そんなもんシュワルツェネッガーだというのは観る前から分かってるがな!みんなシュワルツェネッガーを期待して観る作品なわけで、そんな彼が話の半分過ぎたところまで出てこないというのは観客の辛抱を試す内容になっていると思うよ。

さらに肝心のシュワルツェネッガーも実のところミスキャストで、アクションするにも体がもう動かなくなってるし、えらく陽気なキャラという設定なんだけど訛りがきつくてジョークも不発だし。セリフの数々が彼の過去作のオマージュになっているそうで、それなら過去によく演じてきた寡黙な男を演じさせたほうがよかったのでは。

思うにこの映画、シュワルツェネッガーが出演していることを徹底的に隠したほうが面白くなっていたと思う。そうすれば観客はいつシュワルツェネッガーが登場するのかを気にしながら観る必要もないし、後半になって大物俳優が突然登場するということで話題になっただろうし。しかしその一方ではシュワルツェネッガーが登場していることを宣伝しなければまず客を集められなかっただろうし、そこらへんのバランスは難しいな。ネームバリューのある役者を脇役で使用するやり方について、いろいろ考えさせられる映画であったよ。