「Justice League: The New Frontier」の発売が間近なDCコミックスのDVDムービーですが、新作「BATMAN: GOTHAM KNIGHT」のプレビューが早くもネットで公開されてた。この調子だと「Teen Titans: The Judas Contract」よりも先に発売されるのかな。日本のアニメのスタイルになるということで個人的にはちょっと不安があったんだが、プレビューを観る限りなかなかいい感じになりそうだ。デッドショットがかっこいい。6つのショートストーリーからなるアンソロジー形式で、ブライアン・アザレロが脚本を書いた話もあるようなので期待しよう。
カテゴリー: アメコミ
「BLACK DOSSIER」読書メモ その6
今回でとりあえず終わり。最後の部分だけあってネタバレ的要素が多いので注意。
・「黒本」を読み終えたミナとクォーターメインはそのままロケットに乗ってスコットランドの目的地へ向かう予定だったが、ロケットに着陸機能が無かったため命からがらパラシュートで脱出することに。それを追ってすぐに駆けつけるボンドたち。捕まる寸前だったミナたちを救ったのは意外なキャラクターだった。
・このキャラクターが誰なのかはここで書かないが、それなりに議論の的になりそうなキャラクターであることは間違いない。彼を登場させたムーアの意図は?
・ダウンしたボンドとエマ・ピールに代わってミナたちの後を追うブルドッグ・ドラモンド。ここでまた一悶着あって隠された事実が明らかになりますが、詳細はここでは書きません。
・無事ボンドたちから逃れたエマたち一行は、気球に乗って彼らの本拠地「ブレイジング・ワールド」へ向かいます。この「ブレイジング・ワールド」は色彩と空間がラリリまくった不思議な世界で、絵はすべて赤と青の3D処理がされているためきちんと読み進むには本の付録である3Dメガネが必要となります。ちなみに3D処理はかなり凝っていて、赤と青のどちらか片方で見ると姿がまるで異なるキャラクターがいるなど、従来の3Dコミックよりもずっと奥の深いものになっている。
・「ブレイジング・ワールド」に降り立ったミナたちはオーランドーと再会。ここからの展開は加速的にラリっていきます。しばらく辺りを歩いた彼女たちはプロスペローに遭遇。彼に「黒本」を渡して任務完了となるのでした。
・最後はプロスペローがこれまた難しい大演説を行って終了。うーん、こういう終わり方でいいんだろうか。「Black Dossier」、最初から最後まで常識を逸脱したコミックであった。読み応えがあったのは間違いないけどね。
ちなみに「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン」の冒険はこれで終わりではないぞ。次は「Century」という3巻シリーズが刊行予定で、それぞれ1910年、1968年、2008年を舞台に「リーグ」の活躍が描かれるそうな。いま判明しているあらすじをざっと紹介すると:
第1巻 1910年
舞台はロンドン。ハレー彗星が夜空に浮かぶなか、謎めいたオカルト教団がムーンチャイルドをこの世にもたらそうとしていた。その一方では19世紀末の殺人鬼が再び登場し、再び人を殺し始める...。恐らくこの頃の「リーグ」のメンバーはカーナッキやオーランドーなどで、「黒本」に書かれていた冒険も描かれるのでは?殺人鬼というのは切り裂きジャックのことだろうが、ここでもその正体はウィリアム・ガルなんだろうか?
第2巻 1968年
サイケデリック・ブームに沸くロンドン。その裏ではギャングたちとオカルト集団が手を組もうとしていた。ここでもムーンチャイルドの出現を防ぐため、ミナ率いる新生「リーグ」が出動する…。「リーグ」のメンバーは誰になるか不明だが、3〜4人程度になるらしい。ジェリー・コーネリアスが登場するらしいが、「リーグ」の一員になるのかも分からない。
第3巻 2008年
世界は破滅に近づいていた。「リーグ」はもはや存在せず、ムーンチャイルドはついに生まれ、その恐るべき宿命を全うしようとしていた。中東では戦争が続き、カシミールでは原爆を搭載した潜水艦を操るシーク教徒が原爆戦争の引き金を引こうとしている。そしてロンドンの精神病院には、全ての答えを知っていると主張する女性患者が収容されていた…。
あらすじだけでも非常に興味をそそられるんだが、ムーアによるとこの3巻のテーマは現実の歴史に即した「文明の堕落」であり、とってもとっても暗い内容のものになるらしい。「ミラクルマン」の終盤みたいになるのかな。読んで鬱になるようなものだったらどうしよう。何にせよ早ければ今年中にも第1巻が発売される見通しなので、今から期待しておこう。
「BLACK DOSSIER」読書メモ その5
久しぶりにちょっと更新。
・「黒本」の中身の続き。「THE CRAZY WIDE FOREVER」なる小説の引用が数ページ続く。これはジャック・ケルアックの「路上」(オン・ザ・ロード)の主人公サル・パラダイスが書いたものという設定なんだが、全編がビートニク調の話し言葉で埋め尽くされ、文の区切りがほとんどない「意識の流れ」的な文体になっていて読みづらいったらありゃしない。おそらく「BLACK DOSSIER」の中でもいちばん読みづらい文章なんじゃないかな。いったい何が書かれているのかを理解するのは至難の業なんだが、とりあえず例によってクトゥルフ神話の怪物が言及されるほか、ウィリアム・バロウズの小説の登場人物や、ダシール・ハメットの探偵コンチネンタル・オプについても言及されてるみたい。そして「路上」のもう一人の重要人物であるディーン・モリアーティは実はあのモリアーティ教授の孫ということになっており、アメリカに来ていたミナ&クォーターメインと一緒に、フー・マンチューの孫であるドクター・サックスと戦う…というのが話の山場らしい。「路上」の原書って読んだことないけど、こんなに読みにくい文体で書かれてるのか?
・ちなみにこの小説のあいだには8ページのティファナ・バイブルが挟まれている。「1984」の工場を舞台に、横の女性労働者に発情した主人公(ウィンストン・スミスか?)がベルトコンベアの上で彼女とヤるものの、特高に捕まって101号室送りになる…という純然たるポルノ。こういうのが何の脈絡もなく挟まれているのが最近のムーア作品の特徴ではある。
・「黒本」の最後のページ。”M”のレポートという形式をとっていて、アメリカに渡ってイギリス政府からの連絡を絶ったミナ&クォーターメインに対する断絶的な情報が語られる。1950年代のミナたちはアメリカで登場していたスーパーヒーローたちに出会っていたらしい。こういう形であれ、ムーアがメインストリームのスーパーヒーローについて言及するのはちょっと珍しいかな。
「黒本」の中身の紹介はこれで終わり。物語はいよいよ終盤へ!
「BLACK DOSSIER」読書メモ その4
なんか夏に「The Black Dossier」のAbsolute Edition版が発売されるんだって?既に本としては完璧な装丁がされている作品なのに、これに何を足すってんだろう。スケッチとかスクリプトとかかな。値段がバカ高くなってそうだから買う気はないけど。
・逃避行を続けるなか、バーミンガムの宇宙港へ足をのばすミナとクォーターメイン。見学なんかしてる暇はあるのかね。
・一方ではボンドやエマ・ピールたちも、ミナたちが出会った”M”の元同級生からのタレ込みにより彼女たちの居所を知り、宇宙港へと向かう。
・宇宙港では数々のロケットや宇宙生物が登場します。ここは「ダン・デア」およびゲイリー・アンダーソンの初期の作品からの引用が多いみたい。
・ボンドたちと遭遇したミナとクォーターメインは格闘に巻き込まれるものの、宇宙船XL-5号(の1つ前のモデル)に乗り込んで宇宙港を脱出。
・ひと安心した彼女たちは逃避行の行き先であるスコットランドにロケットを向け、「黒本」の読書にとりかかります。
・ミナの第二次「リーグ」に関する政府のレポート。第二次大戦の戦火が激しくなるなか、「リーグ」がイギリス政府との接触を絶って消息不明になったことが書かれている。
・その後に設立された代理「リーグ」に関する説明。このときのメンバーはジョーン・ウォーラルソン、ウィリアム・サムソン・ジュニア、透明人間などなど…。誰も知らんなあ。この「リーグ」は最初の冒険が失敗に終わり、その後すぐに解散したことが述べられる。
スーパーヒーローは離婚しちゃいかんのか?
アメコミ界で最近話題になってるのが、「スパイダーマン」シリーズにおける「ONE MORE DAY」というストーリー。
(以下ネタバレあり)これはこないだの「CIVIL WAR」 でスパイダーマンが全世界に自分の正体を明かしてしまったことが発端で、彼の家族までが悪人に狙われることとなってメイおばさんが狙撃されてしまう。ピーターは彼女を救おうと努力するものの、すべてが徒労に終わっていた。そんな彼のもとに悪魔メフィストが現われ、ピーターとメリー・ジェーンの結婚と引き換えにメイの命を救ってやるという究極の選択をつきつける。そしてピーターとメリー・ジェーンは話し合った結果メフィストの申し出を受けることになり、歴史が修正されて2人の結婚は「なかったこと」になり、ピーターはメイおばさんと同居してる状態に戻り、数年前に死んだハリー・オズボーンもなぜか甦り、ピーターとメリー・ジェーンはただの知人となって、新しい人生を踏み出すことになるのでした…。というのが大まかなあらすじ。
歴史が修正され、今までの設定や出来事が「なかったこと」になるのはアメコミだと良くあることだけど、ここまで大きな修正をこれだけ強引な手法でやってしまったのは前代未聞じゃないだろうか。これの根底にあるのは、スパイダーマンを「結婚しているヒーロー」として描いていくことに限界が見えてきたからなんだろうな。かといって子供たちのヒーローである彼を離婚させるのもマズいから、あくまでも「自己犠牲」という形に持っていったのか。でもメフィストって基本的には「ゴーストライダー」のようなオカルト系ヒーローの敵役であって、スパイダーマンの前にはそんなに登場したことがなかったのに、突然「機械仕掛けの神(悪魔か)」のごとく出てきて物事をお膳立てするのって無理があるよな。このあまりにもな展開は本国のファンにもボロクソにケナされているようで、早くも90年代の「クローン・サーガ」並みの大失敗だという声も高い。
コミックって役者のいる映画やTVドラマと違って、登場人物が本当に老けたり死んだり降板したりすることがないんだから、こんな強引な歴史修正をしなくてもメリー・ジェーン抜きのピーターの生活を描くことはいくらでもできたと思うんだけどね。結婚前の時代を舞台にしたタイトルを出版するとか。「ULTIMATE SPIDER-MAN」だって2人が結婚してない話だし。DCのスーパーマンなんかはタイトルによって結婚する前と後の話がうまく分けられてるじゃん。
さらに言わせてもらえば、スーパーヒーローが離婚するのはNGなのか?そりゃヒーローが子供たちに対して「悪い例」となるのは問題だろうが、アメコミの購買層って30代が中心じゃなかったっけ。それに今やティーンの憧れのアイドルが平気で妊娠したり離婚したり酒や麻薬でリハビリに通う時代でっせ、「悪い例」なんてのは巷に氾濫してるんだから、コミックのキャラクターが離婚したってそんなに影響はないと思うんだけどね。むしろ離婚したスパイダーマン、というのは面白そうな設定じゃないか?離婚したスーパーヒーローなんて希有な存在だからね。俺が知ってる限りではXメンのサイクロプスが妻子を捨てて元彼女のもとに走った例があったけど。
まあ今回の例が示すようにコミックなんて「何でもあり」の世界だから、この一連の騒動もいずれ「なかったこと」にされる可能性もなくはないが。メイおばさんなんて90年代に一度死んでるのに、ちゃっかり生き返ってるからね。ただ最近のマーヴェルは「HOUSE OF M」や「CIVIL WAR」などでファンの期待を裏切り続けているので、もうちょっとちゃんとして欲しいところです。今回の歴史修正ではピーターの正体バラしも「なかったこと」になったらしいが、じゃあ1年前に「CIVIL WAR」であれだけ煽ってたのは何だったんだよ。