「月世界の女」を観る

フリッツ・ラング監督のサイレント映画「月世界の女」をDVDで鑑賞する。以前に六本木の俳優座で上映してたのを観そびれたので。

このブログで映画について偉そうなことをいろいろ書きこんでるわけだが、俺が今まで観た映画のなかでナンバー1の作品は、実はラングの「メトロポリス」だったりする。色や音がなくても壮大なスケールの物語を見事に描ききったたあの映画はまさしく「失われた芸術」であり、現在の製作者がどんなに金をつぎ込もうともあの雰囲気をだすことは不可能だと思うのだけど、どうだろう。サイレント映画はセリフがない(もしくは少ない)ぶん、内容を頭の中で勝手に補完できるところが魅力ですね。

でも本作は3時間近くあるので(完全版?)、途中でずいぶんダラけるところがあったのは否めない。月ロケットが発射されるまで、1時間半も悪役との押し問答が続くのは何なんだ?
そして内容そのものは意外なくらいにハードSFしている。メリエスの「月世界旅行」みたいなファンタジーかなと思っていたら、ロケットの打ち上げや無重力状態などが(1920年代年当時としては)綿密に描写されているのが興味深い。ちなみにロケットの打ち上げにカウントダウンを用いたのはこの映画が初めてだとか。まあ月面に空気があるのはご愛嬌ということで。
あと当時の作品にしては珍しく(サイレント映画の女性ってみんな美人じゃありません?)ヒロインがあまり魅力的ではないような気がしたけど、ラストにはちょっと感動した。

「メトロポリス」だけでなく「M」や「ニーベルンゲン」といったラングの他の作品に比べれば明らかに劣る映画だけど、当時の科学観などが分かって面白い。一見の価値はある映画かと。

笑って健康ゲラゲラTIME

インターネット放送局「あっ!とおどろく放送局」の1コーナー「笑って健康ゲラゲラTIME」に、今月は知人であり高田馬場のカレー屋「ラージプート」でおいしいおいしいチャパティつきの(ナンじゃないよ)カレーを作っておられた宮崎弘子さんが出演しておられます。彼女のカレーに対するこだわりは非常に熱いものがあります。興味がある方はぜひ見てみてくださいませ。

しかしインターネット放送局って、どのくらい需要があるものなんだろう。「あっ!とおどろく放送局」はどうも複数の会社が共同で運営してる試験的なチャンネルのようだけど、番組製作費は相当安いんだろうなあ。地上波テレビ局のニッチを攻めて行かなければならないのだから、あんなテレビ埼玉みたいな番組構成じゃなくてもっと偏ったものにしないとキツいんじゃないか、と思うのは素人意見でしょうか。いつでも自分の見たい番組が見れるのは便利だろうけど。生きる屍と化したBS民放よりは成功のチャンスがあるかしらん。

アメリカの安楽死論議  その2

真面目に考えるべき話であるのは分かってるけど、一連の騒動が面白すぎるのでまた書く。

テリ・シャイボが延命装置を外され徐々に死に向かっていくなか、延命装置の再装着を拒否した判事のもとには脅迫状が山のように送られ、おかげでボディーガードがつけられるようになったとか。さらには尊厳死を求めた彼女の夫を殺した奴に250万ドルの賞金をあたえるというメールを配布した男が逮捕されたらしい。人に尊厳死を与えるのはダメだけど、それを求めた奴を殺すのはオッケー、という理論が実に単純で微笑ましい。

また彼女の両親は彼女が発した(とされる)「アー」と「ワー」という声は「I want to live」という意味だと主張し、最後まで戦い抜く気でいるとか。「アー」と「ワー」。

植物状態の人間はどこまで意思があるのか、というのが今回の件の抱える大きな問題だけど、天下のフォックス・ニュースは(自称)超能力者を持ち出してきて「彼女には我々のしてることが理解できるんです…」なんて言わせていた。ここまでくると何でもありの世界だよな。「ミリオンダラー・ベイビー」(ちょっと似たテーマを持つ)が現在公開されていたらどんな反響を呼んでいたろう。

アメリカの安楽死論議

現在アメリカでマイケル・ジャクソンの裁判やマーサ・スチュアートの帰還よりも話題になっているのが、15年前に心臓発作のため重度の脳障害に陥ったフロリダの女性、テリ・シャイボの生死の問題である。植物人間の状態のまま生きることを彼女は望まないはずだと考えた彼女の夫は、栄養補給装置を外すことによる安楽死の許可を裁判所から得たものの、これに彼女の両親が反発、しかもキリスト教右派の議員がイースター休みにもかかわらずどんどん介入してきたのだ。栄養補給装置がなければ1〜2週間で彼女は死ぬため、しまいにはブッシュまでが休暇を返上して(!)ホワイトハウスに戻り、彼女を生かし続ける条例に署名してしまった。しかしこれにフロリダ地裁が反発、彼女に栄養補給装置を再接続するかどうかが最高裁まで持ち越される展開になってしまった。

確かに医学倫理や宗教などが絡んだ非常に複雑な問題ではあるのだろうけど、個人の問題に政府がそこまで口を出すかよ、といった感じである。議員の方々は「命の尊重を…」なんて言ってるらしいが、しょせんは票稼ぎのためにやってることがミエミエで、アメリカ人の7割近くもそれを察知してるらしい。そもそもブッシュはテキサスで知的障害者を含む何人もの人間を死刑にしてるわけで、そんな奴に命の尊重を説かれてもピンとこないのだが。

そんななかで「デイリーショー」が「これでどの程度の病気にならないと政府が助けてくれないかが判明した。喘息や糖尿病の連中なんて政府にとってはクソくらえってわけさ」と相変わらず痛快にコメントしていた

とりあえず遺書は早めに書いとこうね、というのが今回の教訓でしょうか。

‘Spamalot’ Debuts to Broadway Laughter

先日も書いた「Monty Python’s Spamalot」がついにブロードウェイでデビューを果たした。会場にはモンティ・パイソンの面々が勢揃いしたとか。

チケットの売上は記録破りとまではいかなくとも非常に盛況で、あの「プロデューサー」並のヒットも狙えるだろうとか。そうなるとチケットの入手がかなり先まで困難になってくるわけで、ネット上で調べてみたところいい席では400ドル以上、一番後ろの席でも100ドルくらいの値がついてしまっている(しかも公式の販売サイトはサファリだと閲覧できない)。来月あたりにニューヨークへ行って観てこようかと思ったのに、この値段では諦めざるを得ないかもしれない。殺人ウサギのヌイグルミでも買っきて我慢しようか。