映画業界事情

カナダの放送局CBCの報じるところによると、2004年にカナダでの映画撮影が大幅に減ったのを受けて、ケベックやオンタリオでは映画製作に対する免税率を上げてハリウッドからの仕事の誘致を狙うそうな。2005年は去年よりマシな年になるだろうとのコメントが載っているけど、そううまくいくものだろうか。

これと前後して、ニューヨークも映画製作に対する免税を行うというニュースが流れていた。国外への仕事の流出についてハリウッドはえらく過敏になっているから、もし免税後の製作費が同じくらいであればカナダはアメリカに比べて圧倒的に不利な立場にあるわけで、2005年もカナダの映画業界は苦しい状況に置かれるんじゃないだろうか。

こうした話を聞いていると、日本への映画撮影の誘致はまず不可能だということがよく分かってくる。物価は高いし、スタッフは英語を話さないし、撮影許可を得るにもお役所の面倒な手続きを通さないといけないし。「ラスト・サムライ」がニュージーランドで撮影されたのがいい例だろう。

ちなみにトロントではデビッド・クローネンバーグの次回作「A History Of Violence」の撮影が既に終了していたらしい。原作のコミックがかなり暴力的な作品で、それをクローネンバーグがどう映画化するのかに興味があったのだけど、撮影現場を見ることはもう無理になってしまったのか。

ウィザーズ

DVDでラルフ・バクシの「ウィザーズ」を鑑賞。結論から言うと明らかに失敗作で、アニメーションの出来も悪いしストーリーも十分に練れてないような気がするが、それでも興味深い作品であることには変わりない。あまりにもアンチクライマックスな最後の戦いには度肝を抜かれたけど。「指輪物語」でも多用していたロトスコープの映像がカッコいい。
ラルフ・バクシというとアングラなイメージがあるけど、この作品は大手スタジオの20世紀フォックスが配給したもの。その公開2週間後にフォックスが出した「スター・ウォーズ」が大ヒットしたため、「ウィザーズ」はヒットしていたにも関わらず上映館を次々と外されていったというバクシのコメントが涙を誘う。

This Is Spinal Tap

DVDで「スパイナル・タップ」を観る。欧米ではカルト的な人気を誇るドキュメンタリー風のコメディで、監督はロブ・ライナー(初監督作)だけど、その偽ドキュメンタリーのスタイルは主演のクリストファー・ゲストの後の作品(「ドッグ・ショウ」とか)にそのまま通じている。人気が落ち目のハードロック・バンド、スパイナル・タップのアメリカ・ツアーの光景を追ったというストーリーはシュールなジョークに溢れていて楽しい。あからさまなギャグに持っていかず、マヌケなんだけれども現実味のある内容になっているのが秀逸。
スパイナル・タップ自体はイギリスの70年代〜80年代初期のバンド(ブラック・サバスとか)をモデルにしているが、その自信過剰な言動や人気の衰え具合などは80年代後期に山ほど出てきて消えていったアメリカのメタル・バンドそのまんまなのが笑える。作品自体は1984年に公開だけど、ポイズンとかファースター・プッシーキャットとかいったバンドのドキュメンタリーと言っても通じるくらいのリアルさがあるんじゃないだろうか。最後に日本で新天地を求めるところなんか、本当によく出来ていると思う(王貞治のTシャツを着てライブをするラストには爆笑した)。なぜ日本ではまだDVDが出てないのだろう。絶対にウケると思うんだが。

クリスマス

前日からの雪がたっぷり残っているので文字通りのホワイト・クリスマスになったのだけど、これだけ雪が積もってるとうっとおしい気がする。
こちらのクリスマスは日本の正月のようなものなので店はみんな閉まってるし、やることもないのでスナックをつまみながらDVDをのんべんだらりと観たりしてた。

とりあえず観たのはジム・ジャームッシュの「コーヒー&シガレッツ」。モノクロのショート・クリップ集という、いかにもジャームッシュらしい作品なのだけれども、どのクリップも小綺麗にきまりすぎてて、観た後にはあまり何の感想も残っていなかったりする。2〜3人がコーヒーやタバコを味わいながら話をするだけ、というシンプルな設定なので役者の技量がストレートに出てしまっているのが特徴か。そういう意味ではホワイト・ストライプスの2人が出たやつが一番ダメで、アルフレッド・モリーナとスティーブ・クーガンのクリップが一番面白かった。サクッと観れる映画としてはいいんじゃないでしょうか。

ポーラー・エクスプレス

映画館で「ポーラー・エクスプレス」を観る。作品そのものにはあまり興味がなかったが、IMAX 3Dでやってるのを観ておきたかったので。スクリーンはむかし高島屋にあったやつよりも大きいかもしれない。本編が始まる前にIMAXの説明をするレーザーショーがあって、もうこれだけでお腹いっぱいという感じ。スクリーン裏にあるスピーカーなどが見れて面白かった。
それで肝心の映画は、まああんなものか。一部には気色悪いと言われていた人間のCGはそんなに気にならなかったし、ストーリーも率直でいいんじゃないかと。3Dだと画面が目の前にあるようで結構楽しい。頭を傾けると画像がブレるのが欠点か。たぶん3Dでなかったら、あまり面白くなくなっていただろう。あとスティーブン・タイラーはどう考えてもいらないでしょう?