映像のインターネット配信について

アメリカのiTMSでフォックスの番組が販売されるようになった。とりあえず提供されているのは「24」「PRISON BREAK」「STACKED」「UNAN1MOUS」など、実にまあ食指の動かない作品ばかり。フォックスが力を入れてる作品て、どうしてあんなツマらなそうなんだろう。「クラシック」のカテゴリに「ファイヤーフライ」があるのはちょっとだけ興味あるけど。せめて「アレステッド・ディベロップメント」なんかも提供して欲しいなあ。 そしてこれと似た話で、ワーナーがビットトレントを通じて映画を提供するようになるとか。作品DVDと同じ頃に販売開始され、DVDと同じくらいの値段なんだけれども、DVDより画質が悪くて、DVDなどに焼けないDRMがくっついてくるらしい…ってロクなメリットがないじゃん。アマゾンとかでDVDを買ったほうがずっと良いような気がするけど?まあiTMSも当初は「CD買ったほうが全然いいじゃん」みたいなことを言われててあそこまで成長したわけで、今後の映像配信ビジネスはどんなものになるかとんと予想がつかないのです。

このようにメジャー・スタジオがインターネットでの金儲けに力を入れてきた一方、草の根的な運動も行われているわけで、こないだ紹介した「Star Wreck: In the Pirkinning」の製作者たちが、皆が自由にアドバイスを交換できる映画製作用のサイトを立ち上げようとしてるんだとか。そのうちに世界各地のスタッフがネット上で共同作業して作った映画、なんてものが出来たりして。

「DOCTOR WHO」新シーズン開始

こないだ新シーズンの始まった「ドクター・フー」が非常に面白い。 新ドクターを演じるデビッド・テナントはちょっと若すぎるかもしれない、と以前に書いたけど、前ドクターのクリストファー・エクレストンがそのキツい訛りのせいか少し演技が大味に感じられるのがあったのに対して、テナントはコメディとシリアスの両方を巧妙に演じて、ドクターの素頓狂な性格をうまく醸し出している。脚本も前シーズンに比べて手慣れてきた感じがするし、セットやSFXも80年代のショボいやつに比べて格段に向上しているのが嬉しい。もっとも子供の頃はあれが最先端のSFXだと思って観てたんですけどね。

ドクターのコンパニオンを務めるローズ役のビリー・パイパーが相変わらずドブスなのはアレだけど、こないだなんかは昔のコンパニオンだったサラ=ジェーン・スミスとか犬型ロボットK9が再登場したりして、オールドファンへのサービスも忘れてはいないのです。アメリカのSFドラマはどうしてもドンパチに重点が置かれがちなのに対し、このシリーズはドクターが知識とウィットを使って事件を解決していくのが面白い。未来の地球やヴィクトリア王朝時代など、毎回違った世界を舞台にしてドクターが活躍していくのはSFの醍醐味ですね。

そして今度はついに宿敵サイバーメンが再登場するそうで、これからも目が離せないシリーズになりそうだ。

スティーブン・コルベアー 対 ジョージ・ブッシュ

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こないだホワイトハウス記者会による夕食会が、ブッシュ出席のもとで行われた(チェイニーは欠席)。多くのメディアはブッシュのそっくりさんが登場したことを報じているけど、むしろ特筆すべきはトリのスピーチをスティーブン・コルベアーが行ったことだろう。 コルベアーといえば自分の番組「コルベアー・レポー」でブッシュべったりのホストを演じるふりをして現政権の風刺を行うという芸風で知られているわけだが、今回のスピーチもまさしくそのスタイルで、しかもブッシュ本人の目の前でキツい風刺をかますという離れ業を見せつけてくれたのです。

まずは「こんな場でスピーチができるなんて夢のようだよ。誰か僕をつねってくれ。でも僕は熟睡するほうだから、それじゃ不十分かな。誰か僕の顔を撃ってくれ」というチェイニーへの皮肉からはじまり、「大統領が偉大なところは、決して信念を変えないことです。月曜日に信じていたことを、水曜になって変えるようなことはしない。火曜日にどんな出来事が起きたとしてもです」とか「皆はホワイトハウスの人事異動をタイタニック号での席替えだなんて揶揄しているけど、この政権は沈むような船じゃない。むしろ上昇していっているんだ。例えるならば、ヒンデンブルグ号(爆発炎上した飛行船)での席替えのようなものさ」など、政権を褒めているようでしっかり批判しているスピーチを繰り出していくのが見事。明らかに彼が緊張していたのと、会場の客のノリが悪い(他愛のないジョークでは笑い、辛辣な風刺では黙ってしまう)ことなどから、いつも番組でやってるほどのキレは感じられなかったものの、ブッシュの目前でここまでやってくれたのは非常に立派。ブッシュ本人はどんな気持ちでスピーチを聞いてたんだろう。

どうやってコルベアーがこの役に抜擢されたのかは知らないけど、大統領出席のもとでこんな会が開かれるっていうのは、やはりアメリカの懐が広いことを示してるんだろうか。日本じゃコイズミが目の前で徹底的に風刺されるのを黙って見てるなんてこと考えられないからね。

スピーチの映像はこちら。テキストはこちら

「LOOK AROUND YOU」鑑賞

きのう言及したインタビューにおいて、マット・グレーニング先生が「LOOK AROUND YOU」(2002)なるイギリスのコメディ・シリーズを絶賛してたので早速鑑賞してみる。

いやー。世の中にこんなすごいシリーズがあったとは知らなんだ。

このシリーズのコンセプトは要するに70年代の教育番組のパロディで、NHK教育でやってるような味気ない科学の番組をパロったもの。タイトルも「身近なものに目を向けてみよう」といった意味になっている。コンセプト自体は他愛ないものに聞こえるかもしれないが、とにかくその懲りようとシュールさが半端じゃないのだ。レトロな感じを出すために古いフィルムや実験機材を使ったり、「教科書のXXXページを開いてください」とか「このことをノートに書いておきましょう」といったナレーションが入って典型的な教育番組を完全に模倣してるほか、「カルシウム」「硫黄」「音楽」といったテーマが毎回とりあげられ、それらに関して想像を絶するような珍事実が淡々と説明されるのだ。例えば:

●水にガスを通すとウィスキーが精製される
●バイ菌(germs)はドイツ(Germany)から発生した
●幽霊は帽子をかぶれる
●硫黄とシャンペンを混ぜて飲むと、目から怪光線が出る
●豆を切開すると、豆の脳が出てくる

といった、もうムチャクチャな科学的事実が紹介されていく。普通のコメディ番組なら少しはウケ狙いをするというか、笑いをとる間なんかをとりそうなものだけど、この番組はもう徹底的に観客を突き放した感じで、ひたすら淡々とジョークを飛ばしまくってるのが凄い。もはや前衛映画の域に達していると言ってもいいくらい。こういう番組はアメリカや日本からはまず出てこないだろうなあ。「シンプソンズ」によく出てくる、レトロな教育映画(トロイ・マクルーアが出演してるやつ)とコンセプトが少し似てるので、グレーニングはそこを気に入ったのかもしれない。

今回観た第1シーズンは各エピソードが10分(パイロットは20分)というものだったけど、第2シーズンは各エピソード30分になってるとか。また観たら報告します。

マット・グレーニング インタビュー

こないだ「村上隆はマット・グレーニングを見習え」みたいなことを書きましたが、偶然にも今週のオニオンのインタビューはマット・グレーニングで、やはり「シンプソンズ」の海賊版グッズに対する愛着を語ってくれてたりする。「みんなが昼夜働いて海賊版を作ってくれてるから、どんどん僕はそれらを戸棚に飾っていくんだ」というコメントが大人だよなあ。

ちなみに「フューチャラマ」のDVDムービーは4本製作されることが決定してるものの、まだストーリーなんかは構想中なんだとか。うーん早く観たい。