Arrested Development

夜はフォックスの「Arrested Development」を観る。とにかくネタが凝縮されていて、凝りに凝った番組なのだ。30分番組とは思えないほどカットやセットが多く、まるで60分のコメディを観てるような気になってくる。技巧的なジョークに感心したのって、「シンプソンズ」以来じゃなかろうか。キャストが多いので日本語版を作るときは大変だろうけど。なぜかライザ・ミネリが出てたりする。

ゴールデン・グローブ

ゴールデン・グローブ賞の授賞式を、カレーを食べながらダラダラと観る。5年くらい前に今は亡きディレクTVが生放送したのを手伝ったことがあるので、生放送で観るのはこれで2回目ということになる。テレビと映画の両方をカバーしてるし、アカデミー賞ほど堅苦しくない(ハクがないだけだが)ので個人的にはアカデミー賞よりも好きなアワードなんだが、今年は例年になく「最有力候補」的な作品がなかったので、全体的にちょっと散漫な感じがしたと思う。とりあえず所見を:

「CLOSER」の2人が手堅く助演賞をとったあと、TVシリーズの助演男優賞は何とウィリアム・シャトナーに。式が始まったばかりなのに、もう顔が赤らんでるのは酒なのか健康状態なのか。やたら恰幅のよくなった姿は「Boston Legal」の役には向いてるんだけど、かつてのカーク船長の面影は消えてしまった。

TVシリーズドラマ部門の主演女優賞は「L&O: SVU」のマリスカ・ハージテイ。意外といえば意外だけど、俺の好きなシリーズなのでうれしい。スピーチも感動的だったし。母親(ジェーン・マンスフィールド)のこともちょっと言及してた。

TVシリーズコメディ部門の主演男優賞は「Arrested Development」のジェイソン・ベイトマンに。これも少し意外だけど、最高に面白い番組だから許す。ちなみに授賞式の裏番組だったというのが何とも皮肉。スピーチ長過ぎ。

最優秀TVコメディの作品賞と主演女優賞は「Desperate Housewives」に。よく出来たシリーズだし、いいんじゃないでしょうか。テリ・ハッチャーがまた人気者になるとは想像もつかなかった。

映画部門の方は観てない映画ばかりなので大きなことは言えないけど、前評判の高かった「Sideways」「Million Dollar Baby」「 Aviator」がうまく賞を分けたな、という感じ。個人的には「MR.インクレディブル」とか「エターナル・サンシャイン」に何か受賞してほしかった。

ちなみに功労賞はロビン・ウィリアムスに。好きな役者じゃないけど、幅広い演技が出来るのは認めよう。「昔ここで新人賞をもらって嬉しかったけど、その2年後にはピア・ザドラが受賞してた」というジョークには笑った。

式の合間に流されるノミネート作品のクリップを観てると、その多様性と演技の立派さ(特にTVムービー)に驚かされる。アイドル映画に賞をあげて自己満足してるような日本アカデミー賞とは格が違うのだよ。

宇宙空母ギャラクティカ

Sci-Fiチャンネルのリメイク版「宇宙空母ギャラクティカ」の新シリーズを観る。オリジナルは観たことがないし、昨年やったミニ・シリーズも観てないけど、評判が良かったのと「ディープ・スペース・ナイン」のライターだったロナルド・ムーアが大きく関わっていることに興味を引かれたのだ。内容は「DS9」を徹底的に暗くした感じで、えらく面白い。「故郷を破壊され、追われる人々」の絶望感と焦燥感がよく表現されていると思う。最近のシリーズの流行りとして、カメラが揺れすぎてるきらいはあるが。主演はエドワード・ジェームス・オルモスはヒゲを剃ったら別人のようだ。ぜひ来週も観よう。

People’s Choice Awards

DVDで「AVENGERS」を観る。もちろんリメイクの映画版ではなく、オリジナルの白黒のやつ。日本でも「おしゃれ?探偵」という題名で放送されていたらしい。軽い007映画、といった感じでえらく面白い。60年代のTVシリーズなのにセットとか撮影とかが凝っているのだ。やはりBBCは偉大なり。

夜はCBSで「People’s Choice Awards」をやっていた。これから先、大トリのアカデミー賞までにいろんな表彰式が行われていくわけですね。「People’s Choice Awards」はその名の通り一般の視聴者の投票によって受賞者が決まるので、あんまり意外性のあるような受賞者がいない(つまり選考基準が世俗的)のがつまらないのだが、「華氏911」が最優秀映画賞に選ばれたのはちょっと意外だった。マイケル・ムーアのスピーチも立派なものだったし、案外アカデミーも狙えたりして。「Mr.インクレディブル」が「シュレック2」に負けたのは納得できない。

TVドラマのエキストラ体験記

朝早く起きて、指示されたとおりにエージェントへ確認の電話を入れる。12時集合だと思っていたら、12時半になっていた。遅刻したら罰金をとられるので早めに家を出る。集合場所はLansdowne駅の北部なんだけど、予想していたよりも駅から遠かったのでちょっと焦る。しかし無事に12時過ぎに到着。既に100人近いスタッフやエキストラが来ていた。エキストラの中でも場慣れしたような人が多かったので、こうした仕事はよく行われているんだろう。でもこっちは初めてなのでえらく緊張してしまう。登録用の書類のほかに税金に関する書類を渡されるんだけど、俺はカナダ国民でも移民でもないので、税金用の書類に何と書けばいいのか分からず苦労する。
その後衣装チェックがあったけど、簡単にパスした。カジノの客らしい格好をしろと言われたのでカジュアルジャケットを着ていったが、Tシャツジーパンの人もいたのを見ると、何だって構わないのだろう。客以外の役をやる人たち(警備員とかディーラーとか)は統一した制服をあてがわれていた。ああいった人たちはエキストラではなく組合に所属した俳優であるらしい。

今回撮影が行われたのは「TILT」というマイケル・マドセン主演のESPNの新しいTVシリーズで、マドセンが所有するラスベガスのカジノを舞台に男たちの駆け引きが繰り広げられる…という内容らしい。ESPNといえばスポーツ試合やポーカー大会の中継で有名なケーブルチャンネルだが、ここ最近はフィクション番組の製作にも力を入れており、「TILT」はESPNにとって2つめのシリーズになるんだとか。

撮影現場はスタジオというよりも紡績工場か何かを改造したような建物で、中に巨大なカジノのセットが建てられていた(縦横50メートルくらい?)。とにかく巨大かつ立派なセットで、頭上に撮影用の証明があるのを除けば、まるで本物のカジノをそのまま持ってきたような出来。奥のほうにVIP専用の部屋とテーブルがあって、その周囲をポーカーやブラックジャック、クラップなどのテーブルがずらりと取り囲み、壁にはスロットマシンが飾られているようなデザインで、いくつかの小道具は飾りだったものの、スロットマシンは本物らしき台がいくつか置いてあった。実際にカジノで撮影するよりもセットを作ったほうが安上がりだということで建てたんだろうが、日本のドラマとは金のかけ方が違うなあと実感した次第である。

メインの出演者の撮影はセット奥に設けられたVIP用の小部屋(1段高くなっていて、周囲に壁はない)で行われたので、エキストラは彼らの背後でゲームに興じる客のふりをして、カメラの撮影位置に合わせてセットの右に行ったり左に行ったりするのが主な仕事だった。大半はテーブルに座ってポーカーなどをしてるのだけれども、スタッフの指示に合わせて席を立ったり、あちこち通路を歩くようなこともあった。一度だけマイケル・マドセンの近くを通り過ぎる役をやったけど、どのくらいカメラに映ったんだろう。1つの撮影を大体5テークくらい行い、あとは次の撮影の準備ができるまで待つ、というのが基本的なパターンか。話に聞いていた通り、撮影現場は「待ち」が多い。だから決して肉体的にきつい仕事ではなかったけれども、さすがに皆も飽きるか疲れるかしてくるわけで、つい時間の流れが気になってしまう。7時くらいに休憩があってサンドウィッチが配られたけど、半分も食べないうちにまたセットへ呼び戻される。ここらへんはなかなか酷だった。

でも今回の撮影で良かったのは舞台がカジノで、本物そっくりのテーブルやトランプがあるわけだから、皆でブラックジャックなどをして時間をつぶすことができたことか。ディーラーの役者さんはきちんと練習をしてるらしくカード配りなどが上手で、チップは使えなかったものの本場のカジノで遊んでるようだった。もちろんスタッフの指示に従って席を立ったり、周りを歩いたりしたけどね。最後のほうになると疲れて頭がボンヤリしてきて、仕事してるんだかトランプやってるんだか分からないほどだった。

当初の撮影終了予定は夜中の12時だったらしいけど、どうも延びるらしいというウワサが出回り始めたころにやっと夕食。ビュッフェ形式でサラダとか牛肉の煮込みを各人が皿にとって食べる。そんなに悪い食事ではなかったけど、スタッフ用に用意されてるものはずっと豪華だった。ここらへんはエキストラと明確な区分化がされてるわけです。他のエキストラともいろいろ話したけど、俺みたいにワーキング・ホリデーで来てる外国人や、初めて来た人もいる反面、長らくエキストラをやってる人も多かった。みんな夏にラッセル・クロウの「Cinderella Man」の撮影に参加してたらしい。劇場映画の撮影はどんなものなんだろう。
夕食が終わった頃はもう10時くらいなので、みんな帰りの電車などを気にし始める。でも撮影が夜中まで続けられることは事前に分かっていたので、誰も文句を言うようなことはなかった。まあトロントは24時間やってるバスとかがあるからね。日本だったら家に帰るのに一苦労してただろう。

あとは真夜中を過ぎても、淡々と撮影が続けられる。撮影の待ち時間にマイケル・マドセンが目の前でエキストラと話をしてたけど、黒のエルビス・ルックに身をつつんで低いダミ声で話す彼の姿はなかなか貫禄があった。会話を聞いた限りではとても気さくな人のようで。 そして撮影が終了したのは夜中の2時過ぎ。前述したように最後はもう疲れ切ってたので、仕事なんかそっちのけでブラックジャックをひたすらやってたんだけど、楽ができたエキストラに比べてスタッフは責任重大な仕事を14時間以上行ったわけで、彼らのタフさには本当に頭が下がる。それにディーラーやウェイトレスのようにセリフのない役をやった人たちも、みんなプロの俳優として働いてるんだなあと実感した。映画とかドラマはどうしても監督とか主演だけに注目が集まってしまうけど、数多くのスタッフに支えられているからこそ、いい作品が出来るわけだ。撮影が終わって支度室に戻ってきたとき、お疲れさま、といった感じにピザが何枚も用意してあったのが嬉しかったです。
あとは必要書類にサインをもらって解散。みんなあっという間に帰って行った。14時間働いて、エージェントの取り分を除けば収入は100ドルくらいか。エージェントへの登録料が相殺できた、という感じ。それからワーキングホリデーで来たという韓国人の青年とともに大通りまで歩き、あとは24時間バスを乗り継いで帰る。でもなかなかバスがこないものだから、家に着くまでに2時間近くかかってしまった。屋外でバスを待つのはえらく寒かったです。あまり頻繁にやりたいとは思わない仕事かもしれないが、撮影現場を直に体験できたのは非常に貴重な経験になったと思う。