「RIVERDALE」鑑賞


アメリカの人気コミック「アーチー」を原作にしたThe CWの新シリーズ。

「アーチー(・コミックス)」って日本ではあまり馴染みがないけれど、1940年代から出版されているアメリカでは誰もが知ってるような作品でして、出版社の名前もずばり「アーチー・コミックス」といって、1つのブランドになっているわけですね。むかしNHKでやっていたシットコム「サブリナ」もアーチー・コミックスの作品が原作な。スーパーヒーローものの作品も「ザ・シールド」とか出していたこともあるけど、メインの売りはなんといっても「アーチー」でして、平和な田舎町リバーデイルを舞台に、赤毛でドジだけど純情な少年アーチー・アンドリュース君と、幼馴染のベティ、およびお金持ちの娘のベロニカという二人の少女との三角関係が数十年に渡って展開されてきた少年少女向けのコミックなのです。

ティーンの恋愛といってもドロドロした関係とか性的な描写とかは一切なくて、素朴な白人男女が他愛ないラブコメを繰り広げる人畜無害の内容でして、たしか50年代にコミックス・コードが導入されたときも団体の代表として率先してコミックの表現規制を行っていたのが、当時のアーチー・コミックスの社長だったはず。

その一方では90年代にマーベルと組んで「Archie Meets the Punisher」という異色の作品(リバーデイルにパニッシャーがやってくる!)を出したことは語り継がれているし、2000年代にはケビン・ケラーというゲイのキャラクターを登場させて話題を呼んだり、やたらダークな「サブリナ」のコミックを出したりと、ここ10年くらいはエッジの効いた作品を出すようになって、より幅広い層にアピールしているわけです。大人になったアーチーが射殺される、なんて話もあったような。

んでこの「RIVERDALE」ですがコミックとはまた違った方向にダークな設定になっていて、「アーチー」のキャラクターを使った「ツイン・ピークス」といった感じ。高校の人気者であるチェリルとジェイソンが川に向かい、ジェイソンは死体となって発見される。いったい彼の身に何があったのか?という謎解きとともに、町の住人たちの暗い秘密が暴かれていく…といったあらすじ。

この世界ではベティの姉は精神を病んでいて、母親はベティに厳しくあたっており、ベロニカは父親が汚職で逮捕されて母とともにリバーデイルにやってきたという、いろいろヘビーな設定になっている。原作ではオタクっぽかったアーチー君もここでは腹筋の割れたアメフト部のジョックになっており、一方で繊細な音楽もやりたがっているという多才ぶり。さらにベティやベロニカと乳繰り合う一方で高校の音楽教師と肉体関係を持ってしまうという、まあ原作とはいろいろ異なったキャラになっています。それ以外のキャラクターも原作からとってきているようで、前述のケビン・ケラーのほか、スピンオフ映画もつくられたバンドのジョジー&ザ・プッシーキャッツなども登場しているよ。あとはアーチーの親友のジャグヘッド!原作では世俗の悩みを一切寄せ付けず、メシを食うことしか興味がないキャラクターだったが、番組ではもっとクールな、物語の語り手として登場している。ジャグヘッドをいかに扱うかで「アーチー」作品の面白さは左右されると言っても過言ではないだろう。

とまあ各キャラクターはコミックとはかなり異なる設定になっていて、それが許容できるかどうかで観る人の判断は分かれるかも。逆に言うと「アーチー」のキャラクターが出てくることを除けば、典型的なTHE CWのティーン向けドラマになっていることは否めない。ストーリーの組み立て方とか、そんなに悪くはないと思ったけどね。「アーチー」の知名度が低い日本では放送される可能性が低いかな?キャストもアーチーを演じる主演のK.J.アパってほとんど新人だし、若者のたちの親を演じるメッチェン・アミックとルーク・ペリーを除けばそんなに有名な出演者はいないような。

良くも悪くもクセがあるというかギミックに頼っている感じはするものの、原作を無視して内容がムチャクチャになれば意外と面白くなる番組かもしれないので、そこに期待。

「TABOO」鑑賞


トム・ハーディが父親のチップス・ハーディと共に企画したBBCのミニシリーズ。脚本は「イースタン・プロミス」のスティーブン・ナイトが手がけ、製作にはリドリー・スコットも絡んでいる。

舞台は1814年のロンドン。錯乱して死んでいった父親の葬儀に、何年も前にアフリカで失踪して死んだと思われていたジェームズ・ディラーニーが姿を現し、周囲を驚かせる。アフリカで財をなしたジェームスだが、父親が残したバンクーバーの小さな土地の所有権を受け取りに彼はやってきたのだった。実はその土地はイギリスとアメリカの領土争いの境界にあり、その土地を手にすれば中国への貿易の足がかりにすることができるため、イギリス東インド会社はジェームスの腹違いの妹から土地を買い取る予定だったが、優先的な所有権を持つジェームスが受け渡しを拒んだことで、ジェームスと東インド会社は対立することになる…というようなあらすじ。

全8話あるうちの第1話を見た限りでは、まだ登場人物が紹介される程度しか話が進まないので今後の展開はちょっと分かりにくいな。ジェームスがアフリカで何をしてきたのか、そして帰国した彼が何を画策しているのかが徐々に明らかになっていくみたい。そもそも題名がなぜ「TABOO」なのかは不明なのだが、ジェームスと妹のあいだで何かがあったことが示唆されている。また東インド会社が徹底的に邪悪な企業として描かれるようで、それが歴史家のあいだで論議を呼んでいるらしいが、あの会社ってムガール帝国を滅亡させたりと悪いことやってたよねぇ。

ジェームスを演じるトム・ハーディは寡黙なものの、怒れば暴力を振るうことを厭わないという人物でマッド・マックスそのまんま。過去のビジョンに悩まされているという点も似てるな。彼の妹を演じるのがウーナ・チャップリンで、東インド会社のボスがジョナサン・プライス。

いまのところは良く出来た歴史ドラマだな、という印象しか受けないものの、今後の展開によってはかなり面白くなる作品かもしれない。トム・ハーディが主演しているという点だけで見る価値はあるでしょう。

「SHERLOCK」シリーズ4開始


ここ数年はクリスマスに「ドクター・フー」を観て、正月に「SHERLOCK」を観るのが恒例になったな…と思いきやシリーズ3の放送ってもう3年前か。前シリーズは結構グデグデな終わりかたをして、時空を乱したメタな展開の「忌まわしき花嫁」は番外編的な扱いになっていたが、今回はシーズン第1話ということもあってか比較的「通常の」エピソードっぽくなっている。とはいえ大きな展開が起きる内容になっており、それについて言及せずに感想を述べることはできないので、以下はネタバレ注意。

いいですね?

マグヌセンの射殺とモリアーティの復活というクリフハンガーで幕を閉じた前シリーズだが、前者は政府の力でウヤムヤにされ、後者は「生前に撮影したメッセージだろ」とさっさと片付けられてしまう!まあ後者はさすがに後への伏線になってるでしょうが。よって無罪放免になったシャーロックはベイカー街に戻って以前にも増して難事件の推理に精を出し、ワトソンとメアリーのあいだにも子供が生まれて皆が大忙し。そんなところにレストレードが持ち込んだ事件を手がけたシャーロックは、事件の依頼人の部屋にあったマーガレット・サッチャーの胸像が何者かによって破壊されたことに興味を抱く。そして同様の事件が起きていることを知った彼は、やがてそれが彼の知人に密接につながっていることを発見するのだった…というあらすじ。

エピソード名は「The Six Thatchers」で、名の通りコナン・ドイルの原作の「6つのナポレオン像」をベースにしている。あとは「四つの署名」や「黄色い顔」あたりの引用がちらほら。脚本はマーク・ゲイティスでスティーブン・モファットが手がけてないせいか、変に話が入り組んだりせず、意外と原作に忠実に話が進んで行く。ナポレオン像を追ううちにシャーロックが発見したものが話の展開を大きく変えるわけだが、推理ものというよりは政治サスペンスの色合いが強かったかな。コードネームなんていくらでも都合のいいものを付けられるしねぇ。

そして登場人物の一人の運命が大きく変わることになりまして、これもまた一応原作どおり(明記はされていないが強く示唆されている)のでまあ驚くほどではなかった。しかしその一方では(以下白文字)マーティン・フリーマンとアマンダ・アビントンが破局したという、出演者の私生活に直結している内容だったので、なんか観た後にモヤモヤしたものを感じてしまったよ。脚本の執筆には関係なかったと思うんだけどね。あの登場人物の正体については1つの噂があったのだけど、結局は誤りだったのかなあ。

全体としては悪い出来ではなかったけど、3年(1年?)も待たされたことによる過度な期待に沿うものではなかったかな。主演二人が多忙になりすぎたことで、これが最後のシーズンになるかもしれないという噂もありますが、あと残る2話でモリアーティの伏線もきっちり回収して、満足のいく終わりかたをしてくれることを望みます。

「The Return Of Doctor Mysterio」鑑賞


毎年恒例の「ドクター・フー」のクリスマス特番だよ。今年はレギュラーシーズンの放送がなかったので、「CLASS」を除けば1年ぶりのドクター・フーとなるのであります。

クララたんが去ったことで今回はコンパニオンがおらず、代わりにマット・ルーカス演じるナードールが昨年のクリスマス特番に引き続いて登場するのだが、1年前の話なぞきちんと覚えてないので「誰だっけ…」という状態でした。彼はどうも来年のシーズンにもレギュラーとして登場するみたい。

そして話の舞台はニューヨーク。子供のときにドクターと遭遇したことでスーパーマンのごとき超能力を身につけたグラント少年は、成長してからは「ザ・ゴースト」というスーパーヒーローに扮し、ニューヨークの人々を危険から救っていた。その一方では一般人として、密かに想いを寄せる女性記者のルーシーの赤ん坊の世話をしていた。そんな彼のもとに久しぶりにドクターが現れる。彼はニューヨークの大企業における、エイリアンの地球侵略計画を調査していたのだが、エイリアンの魔の手はルーシーたちにも襲い掛かり…というようなあらすじ。

明らかに昨今のスーパーヒーロー作品に触発されてスティーブン・モファットが脚本を執筆したような内容で、まあスーパーヒーローもののパスティーシュだと思えばいいんじゃないですかね。冒頭でドクターが「スーパーマン」のコミック(ジョン・バーンのやつ)を読みながらクラーク・ケントとスーパーマンのアイデンティティーについて語るのだが、話のほうもザ・ゴーストとグラントという同一人物とルーシーの三角関係が軸になっている。最近のスーパーヒーローものってヒーローが自分の正体をやたらすぐ明かすのだが(おめーのことだよ「ザ・フラッシュ」)、自分がグラントだと明かせないザ・ゴーストとルーシーのやりとりはクリストファー・リーヴ時代のスーパーマンみたいで結構面白かった。

とはいえドクター・フーの世界にスーパーヒーローって必要なのかという疑念は残るし、エイリアンの地球侵略のプロットも詰め込んだおかげで逆に内容が散漫になってしまった印象は否めない。まあクリスマスのスタンドアローンのエピソードだし、深く考えずに楽しめばいいんですけどね。

ザ・ゴーストことグラントを演じるのは、ドラゴンボール・エボリューションの悟空ことジャスティン・ハトウィン。彼が「ドクター・フー」に出るとは思わなんだ。ルーシーを演じるチャリティ・ウェイクフィールドって、短命に終わった「ザ・プレイヤー」に出てた人か。

そして次のシーズンは来年の4月に始まるのかな?新しいコンパニオンも決まったし、ティーザーもいい感じだし、早く春になって新しいエピソードが放送されることに期待するばかりです。

「INCORPORATED」鑑賞

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Syfyの新作シリーズ。原案は「セルフレス 覚醒した記憶」のパストール兄弟で、製作には「グッド・ワイフ」のテッド・ハンフリーのほか、なぜかマット・デイモンとベン・アフレックが関わっている。

舞台は2074年。大規模な気候変動の影響により地球の資源は枯渇し、天然の食料は希少な存在となっていた。政府は破産し、代わりに巨大企業がのし上がって世界を管轄し、企業に勤めるエリートたちはグリーン・ゾーンというエリアに住み、それ以外の貧民たちはレッド・ゾーンという隔離された無法地帯に暮らしていた。大企業の1つスピガに勤めるベン・ラーソンは美人の妻を持ち幸せに暮らしているように見えたが、実は彼はレッド・ゾーンの出身者であり、行方不明になった知人を探すためにスピガへと潜入していたのだった。厳重に守られたスパイガのデータへのアクセス権を得るため、上司を陥れてでもベンは企業で出世をしようとするが…というあらすじ。

レッド・ゾーンの住民がグリーン・ゾーンに入ることが禁止されてるなら、グリーン・ゾーンでの道路工事やトイレ掃除などは誰がやってんだろ、と思うのですが、そういうツッコミは野暮かと。過度にテクノロジーが発達したディストピアという設定は「Black Mirror」に通じるところがあるものの、こちらは話を続ける必要があるのであそこまで風刺色は強くない。ライバル企業との競り合いとか海外でのテロ活動とか、面白そうな要素はあるのでもうちょっと過激な内容にしても良かったかなとは思うけどね。

主役のベンを演じるショーン・ティールはこれまたイギリス出身の俳優だが、ベネズエラ系ということでオスカー・アイザックによく顔が似ているかな。あとは「テラ・ノヴァ」のアリソン・ミラーのほか、「24」のデニス・ヘイスバートがスピガの不気味な社長を演じてますが、ヘイスバートの第1話でのシーンは少ないのでどのくらい重要な役なのかはよく分かりません。

設定が現代の移民問題とかグローバリゼーションを反映しすぎていて、かえって凡庸に感じられるきらいはあるものの、モンスターとかアクションにあまり頼らない、(比較的)知的なSyfyのドラマは久しぶりなので期待したいところ。今後の展開次第では結構面白くなるかもしれない作品。