「Sweet/Vicious」鑑賞

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MTVの新作ドラマ。

舞台となるのは学生寮のある大学キャンパス。そこでは男子学生による女子への性的暴行が頻発していたが逮捕されるような者は少なく、男子たちは大手を振って生活していた。そんなとき暴行をした男子の一人が黒づくめの人物によってボコボコにされるという出来事が発生する。この人物の正体は女子学生のジュールズで、昼間は優秀な生徒である彼女は夜になると一人で男子学生たちに天誅をくらわせていたのだった。そして友達が少なくてコンピューターに詳しい女子のオーフェリアは、現場に残されたペンダントからジュールズの正体を知り、彼女を尾行していって結果的にジュールズのピンチを救うことになる。こうして二人はコンビを組み、悪い男子を懲らしめていくのだった…というようなあらすじ。

日本でも男子学生の横暴が報じられたりしてるけど、アメリカの大学での性的暴行というのは結構深刻な問題になっているらしい。こないだはローリング・ストーン誌が学生寮でレイプされたという女子の記事を掲載したあとに、どうも虚偽だったらしいとうことで叩かれていたけど、どれだけの事件が起きているのか明確になっていないというのも状況を深刻にしているのでは。女性を蔑視した発言をした人物が大統領になったりするとね、女性にとってはますます声を立てにくい世の中になってくるんじゃないですか。

そういった意味ではこの番組は絶妙なアンチテーゼになっているのかも。ジュールズとオーフェリアは忍者のごとき黒衣装(ブルカっぽくもある)に身を包んで、横柄な男子たちを痛めつけていく。ジュールズもかつて性的被害にあったことが示唆され、人が死んだりと真剣な展開がある一方で、MTVのドラマらしく流行の音楽(「Defying Gravity」の使い方は巧かった)とキャッチーなセリフに溢れており、ドラマなのかコメディなのかいまいち分かりにくいところもあるが、まあ今後の展開に期待しましょう。

ジュールズを演じるエライザ・ベネットはこれまたイギリス出身の俳優。若いけど結構なキャリアがあるみたい。オーフェリアを演じるテイラー・ディアーデンって「タイラー・ダーデン」みたいな名前だな…と思ってたらブライアン・クランストンの娘なのか!

当然のごとく反フェミニスト的な人たちには早くも叩かれているようだけど、こういう番組もあって良いと思うよ。

「Mech-X4」鑑賞

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ディズニーXDの子供向けSF番組。

ベイシティという街の高校生であるライアンはスポーツ万能の兄に対して平凡なオタク少年だったが、ある日自分が電子機器を意のままに操ることができる能力をもった、テクノパスという存在であることに気付く。さらに郊外の廃船のビジョンを経験した彼は、友人ふたりとそこに赴くと目の前に40メートルほどの巨大ロボットが出現した。ロボットの内部(巨大なので中に会議室みたいなのもある)に招かれた彼らの前に謎の男の映像が現れ、ロボットの名前が『メカX4』であること、テクノパスであるライアンが操縦できること、そしてその男自身が失踪したか死亡したことを伝えられる。こうして巨大ロボットを手に入れたライアンたちだったが、今度は街に巨大怪獣が出現。メカX4をきちんと操るには4人のクルーが必要(操縦・攻撃・防御・メカニック担当)であることを悟ったライアンは、彼の兄もクルーに入れて怪獣を無事に撃破。こうして彼らは怪獣の脅威から街を守りつつ、怪獣を送ってくる黒幕は誰なのか、そして映像に出てきた謎の男は何者なのかを明かそうとするのだった…というあらすじ。

巨大ロボットvs怪獣の特撮番組といえば胸がワクワクするような設定ではあるのですが、なんとなく残念な出来に終わっている。メカX4の内部のセットとかは金がかかってるし、CGのアクションも決して悪くはないのだけど、「パシフィック・リム」とかで目が肥えてしまっているから、アサイラム社の「アトランティック・リム」程度にしか見えないのが残念。

ストーリーもね、主人公が突然超能力を身につけて、さらに巨大ロボットが与えられる、というのはいくらなんでも都合が良すぎるだろう。子供向けの番組でもそこらへんはもうちょっと練りこんでほしかった。ちなみに怪獣を送り込んでくる黒幕は学校の校長先生であることが途中でわかるのだけど、異なる動物の遺伝子(イカとヘビとか)を組み合わせて怪獣を生み出してるさまは「仮面ライダー」っぽくて楽しそうでありました。

そして最大の問題はやはり主役ロボのメカX4がカッコ悪いことでして、名前もイケていないのだが顔もXというかバッテンが貼り付けられていて、何とも感情移入しにくい顔。これなら日本の「Xボンバー」(古い)のほうがイケメンだったぞ。
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ロボの操縦方法はライアンの動きをトレースする「パシリム」方式だがパイロットに腰ヒモみたいなのが付いてるだけなのがなんか安っぽい。体型も細くて貧弱そうだし、こんどの劇場版「パワーレンジャーズ」のロボットといい、短命に終わったゲンディ・タルタコフスキーの「Sym-Bionic Titan」といい、なんであちらのメカには重層感がないのか…ここらへん日本の特撮の着ぐるみから学ぶことができるのでは。右手からヒート武器を出すことができて、白熱した手刀が必殺技になるのは「Gガンダム」みたいでちょっとカッコよかったけどね。

メカX4の防御を担当するアジア系のガリ勉君とか、登場するキャラクターはいい感じだし、いろいろ面白くなりそうな要素はあるのだから、凡庸な子供番組で終わらずにもうちょっと上を目指してほしいところです。なお早くもシーズン2の放送が決まったとか。

「CLASS」鑑賞

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BBCの新シリーズで「ドクター・フー」のスピンオフ作品。これキャラクター紹介がまんまネタバレになるので以下は注意。

舞台となるのは「ドクター・フー」でクララが勤めていたコール・ヒル高校で、あの番組にも登場した先生たちがちらほら出ています。つうかコール・ヒル高校って1963年の「ドクター・フー」の第1話にも登場したという、由緒(?)正しい学校なんですね。そこに時空の切れ目が生じたことで、奇妙で恐ろしい存在がいろいろ学校に出現することになり、そこの生徒であるエイプリルたちは学校を守ろうとするのだった…というようなあらすじ。
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話の主人公となるのは4人の生徒と一人の教師で、上の写真の左から説明すると:

・タニヤ:厳格なナイジェリア人の母を持つ女生徒。頭脳明晰なため飛び級で年長のクラスに属している。
・チャーリー:一見は内気なゲイの青年だが、正体は他の星に存在していた文明の王子。反乱軍と戦っているあいだに「影の眷族」に星の住民を皆殺しにされ、ドクターに救われてミス・クイルとともに地球に逃げてきた。
・エイプリル:明るい性格だが友達のいない孤独な女生徒。心臓に特徴あり。母親は事故により車椅子に乗っている。
・ラム:スポーツマンでモテ男だが繊細な面もあり。「影の眷族」に襲われ重傷を負うが…。
・ミス・クイル:口の悪い科学教師。実はチャーリーの王国に反旗を翻したレジスタンスのリーダーであったが、捕獲されて脳に蟲を入れられ(!)、チャーリーの護衛をするよう精神的な束縛がされている。またこの影響で一切の武器を使う事ができない。

とまあ、みんな特徴的な面々が揃ってます。チャーリーのボーイフレンドも彼の正体を知ってるような描写があるのだが、準レギュラー的な扱いなのかな。生徒たちが肉体的にも精神的にもトラウマを抱えていて、セクシャリティとか家庭環境についても悶々としたものを抱いていることが丁寧に描かれているかな。その一方で悪態をつきまくるミス・クイルは悩みなんぞなくて、武器が使えないのに細腕でケンカを売ろうとするあたりがサイコー!みんなキャラが立っていて面白いですよ。あとは学園ものにしては比較的珍しく、生徒たちと親とのやりとりにもしっかり時間が割かれていた。

年末まで「ドクター・フー」の全権を握っているスティーブン・モファットは裏方に徹し、原案と脚本はパトリック・ネスが担当している。彼のことは知らなかったけど、邦訳も出ているヤングアダルトSFの作家なんですね。なんかちょっと暗いSFを書く人らしく、この番組の雰囲気に合っているかも。

学園を舞台にした「ドクター・フー」のスピンオフといえば「サラ・ジェーン・アドベンチャー」があったけど、あれよりかは明らかに大人向けで、セックスのない「トーチウッド」といったところか。ゴア描写もそれなりにあって、ラムが毎度血しぶきを浴びるのはランニング・ジョークを狙ってるんだろうか。そして1話あたり4〜5人の犠牲者が出ているのだが、そんな危険な学校はすぐさま閉鎖されてるだろ!

あと第1話はドクター出てきますよドクター。話が生徒たちからの視点になっているため、「なんかヤバそうなオッサン」という扱いになっているのがなかなか新鮮であった。

ティーンが抱える特有の繊細さと不安が、学校の不気味さとうまくマッチしていい暗さを醸し出している作品。逆にCGのクリーチャーが出てくるとちょっとショボくてガッカリするので、クリーチャー出さずに雰囲気だけで勝負したほうが面白いかもしれない。何にせよ今後の展開に期待。

「THIS IS US」鑑賞

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第1話が高い評価を受けているNBCの新シリーズ。確かに面白かった。

話の主人公となるのは5人の男女で、肥満に悩む女性と、その双子の弟で役者の仕事に疑問を抱いている男性、自分を赤ん坊のときに見捨てた父親を見つけて対面する黒人男性、そして子供の出産のために病院へ運び込まれる夫婦。彼らはみな同じ日に36歳の誕生日を迎えており、それぞれの悩みを抱えながらも生きていこうとする姿が描かれていく。

5人(というか2組と1人)の人生は絡み合うようで全く絡み合わずに話が進んでいくわけだが、誕生日が同じということでスピリチュアルなつながりがあった、みたいなティム・クリングあたりが考えそうな展開になるんじゃないかと懸念してたんですね。そしたら全く違って、まるで予想していなかった、しかし完全に腑に落ちる事実が明かされて彼らのつながりが最後に明らかになり、「おおっ!」と感心してしまいましたよ。

監督と脚本は「ラブ・アゲイン」の人たち。出演者はマンディ・ムーアを除けば殆ど知らない人たちだが、それが登場人物の一般人っぽさに貢献しているかと。

問題は第1話で完璧にオチをつけてしまったことで、じゃあこの後の展開がどうなるかがよく分からないのですね。家族ドラマなのかラブストーリーなのか、どういう方向に話は進んでいくのか。あまり奇をてらった展開も望めないだろうし。

でも何にせよ第1話はとてもよくできた短編映画を見ているようで楽しめましたよ。小説でもああいったオチはうまく描けないんじゃないだろうか。映像の力をフルに生かした内容になっているというか。本国での人気もこれからどうなるか分からないし、日本でも放送されるかは全く不明だけど、機会があれば第1話は見ておく価値がある作品。

「Designated Survivor」鑑賞

Designated Survivor, Season 1
ABCの新シリーズ。

ワシントンDCで住宅都市開発長官を務めるトム・カークマンは温厚な性格で出世欲もなく、弁護士の妻にそれを嘆かれるほどだった。自分が提案した案件についても大統領の教書演説から省かれ、おまけにモントリオールへの左遷を命じられてしまう。しかしその晩の教書演説には出席せずに、有事に備えて一人で別のところで待機している役目「デジグネイテッド・サバイバー」に彼は任命される。そして教書演説は何事もなく進むかのように思われたが、何者かが仕掛けた爆弾によって議会議事堂が大爆発を起こし、大統領をはじめとするすべての議員たちが命を落とすという大惨事が発生してしまう。この混乱のなか、唯一残った議員としてトムはアメリカ合衆国大統領に任命されることとなる。明らかに経験不足の彼に不満を抱くホワイトハウスのスタッフもいるなか、トムは大統領として事態の沈静化を図るのだったが…というあらすじ。

新米の大統領が国を治めようとするなか、いったい何者が爆弾をしかけたのかという謎解きが進行し、さらにはなぜトムがデジグネイテッド・サバイバーに任命されたのか?という謎が絡んでくる政治スリラー。今後はこれらの要素がどう絡み合ってくるかによって、話の面白さが左右されるだろうな。トムは学者肌の穏健な人物として描かれているものの、テロを受けて不穏な動きを見せはじめたイランに対して早速武力行使をチラつかせるあたり、大統領に求められているのってそういうことなんですかね。それでも彼の穏便さに不満を抱いたタカ派の将軍がクーデターを示唆したりして、いろいろドロドロした展開が望めそうです。

「これは9/11以来の規模のテロだ」というセリフもあるけど、大統領と議員みんなが殺されたらそれ以上のテロだよなあ。その割にはワシントンDCの道路とかが比較的落ち着いているし、ナイトクラブがそのまま開いているあたりはご愛嬌。ホワイトハウスの危機管理センターの描写とかはよく出来てますよ。

主人公のトムを演じるのがキーファー・サザーランド。かつてはアメリカ本土が核攻撃されようともきっちり24時間でカタをつけていた彼だが、今回は急な展開に困惑する優さ男を好演している。彼よりも気の強そうな妻を演じるのがナターシャ・マケルホーンで、事故現場で調査にあたるFBIエージェントにマギーQ、大統領のスピーチライターにカル・ペンと、結構豪華なキャストが揃っている。カル・ペンは一時期役者業を休んでホワイトハウスで働いていたこともあり、シリーズのコンサルタントでもあるのだとか。

今後はサスペンスをどれだけ飽きずに継続させられるかが人気のカギになってくるだろうけど、第1話を見た限りではかなり期待できるシリーズになるかもしれない。