「MOB CITY」鑑賞


「ウォーキング・デッド」をクビになったフランク・ダラボンが新たに製作した、TNTの新シリーズ。

舞台となるのは1947年のロサンゼルス。街にはミッキー・コーエンやバグジー・シーゲルといったギャングの大物たちによる汚職が蔓延し、対するLA市警はウィリアム・パーカー本部長たちを筆頭にギャングの撲滅運動を図っていた。太平洋戦争帰りのジョー・ティーグはLA市警の警部だがギャングのための仕事も請け負っている人物で、ギャングとの取引において用心棒を務めるよう、あるコメディアンから依頼を受けるのだったが…というのが第1話のプロット。

冒頭では1920年代のニューヨークが登場するので禁酒法の時代の話かな?と思いきや単に若い頃のバグジーが出てきただけで、舞台はあくまでも40年代のロサンゼルス。実際の事件や人物を追った本が原作になっているらしい。当時の雰囲気を出すのにそれなりに凝った工夫がされているものの、16ミリで撮影をして陰気な感じを出していた「ウォーキング・デッド」に比べると、全体的に小綺麗というか、いかにもセットとグリーンスクリーンの前で撮影してんな、という感が否めない。

観てていちばん引っかかったのはやはり主人公のジョーの立ち位置で、犯罪撲滅を狙う正義漢でもないし、汚職に完全に手を染めた悪徳刑事でもないし、どうも煮え切らないところがあって感情移入できないんだよな。警察とギャングのあいだで揺れ動く彼の姿が今後の大きなテーマになっていくのだろうけど、話の中心にぽっかりと穴が空いているような。

そのジョーを演じるのはジョン・バーンサル。「ウォーキング・デッド」から引き抜かれたキャスティングですかね。あとはニール・マクドノーとかエドワード・バーンズなどが出演している。バーンズが出ている時点で個人的にはアウトなのですが、第1話には登場してなかったかな?代わりにサイモン・ペッグがサエないコメディアンの役でゲスト出演していて、主人公たちよりもずっと良い演技をしております。

アメリカの評判もイマイチのようなので、「ウォーキング・デッド」並みのヒットは期待できないどころか、もしかしたら第1シーズン(全6話)こっきりになるんじゃないかとも思われる作品。サイモン・ペッグが主人公だったなら全話みるんだけどね…。

「The Day of The Doctor」鑑賞


ついに放送されたのだよ「ドクター・フー」50周年特番。

久しぶりの再会を果したドクターとクララだったが、直後に英国政府のヘリコプターによってターディスごとトラファルガー広場に運ばれてしまう。そこではブリガディアの娘が彼らを待っており、イギリスおよび世界を揺るがしかねない危険がせまったときのみに開封されるというエリザベス1世(2世じゃないよ)のメッセージをドクターに伝える。その調査にあたったドクターは時空の歪みに出会い、それを通じて10代目ドクターに遭遇する。さらに「タイム・ウォー」を虐殺により終わらせようとしていた、8代目と9代目のあいだの「ウォー・ドクター」も彼らのもとに現れ、3人はともにイギリスの危機を救おうとするが、そもそも彼ら3人を引き合わせた存在は何なのか…というプロット。

ここから先はかなりネタバレになるので白文字にします:

ウォー・ドクターの野望を2人のドクターが阻止する物語になるのかと思いきや、前半は姿形を自在に変化させられる異星人ザイゴンに3人が力を合わせて対抗する話になっていて、後半もタイム・ウォーの虐殺をいかに止めるかを3人が知恵を絞って考えるというような内容になっていた。つうかウォー・ドクター、話の分かる人じゃん!かなりシリアスな話になるかと思いきや細かいギャグか散りばめてあって、それはそれで「ドクター・フー」の本領発揮ですな。

10代目ドクターに加えてドブスのローズも再登場するが、本人役ではなく兵器のインターフェースによる幻影という扱いで、2人のドクターとのかけ合いなどはなし。もちろん9代目ドクターが再登場しないのは残念だが、たしかに登場人物が多くなったらかなり話が散漫になっていたかも。最後の「あの人」のカメオ出演は本人が事前にガッチリとバラしていたので驚きはなかったが、それでも感慨深いものがありましたよ。むしろ「次の人」が一瞬だけ出たことに感激。

本国では3Dで放送(公開?)されたとのことで3Dを意識した画面作りにところどころなっているが、どのくらい効果的だったのかは当然分からず。ドクターの歴史が修正され、次なる冒険への道が開かれるという点では50年の集大成というよりも1つの大きな特番といった感じだったかな。なお再生の制限回数のことが何も言及されてないのは少し意外であった。結局11代目は実は12代目であり、次の13代目が最後になってしまうのか?ほかにもツッコミ所は多いんだけど、何も文句は言いません。クリスマス・スペシャル、および次のドクターにおいてより多くの謎が解明されていくでしょう。

・「手をヒラヒラさせんと話が出来んのか?」
・「12人か?」「13人います!」
・「次は耳が目立たないと良いが…」

「An Adventure in Space and Time」鑑賞


50周年特番をいよいよ明日に控えた「ドクター・フー」のさらなる関連番組で、50年前の番組開始時の裏側を描いたドキュドラマ。

時は1963年。BBCより30分の放送枠を埋めるための番組を製作するよう伝えられたプロデューサーのシドニー・ニューマンは、自分がSFファンであったことから子供向けのSF番組を作ることを考案し、かつての助手だったヴェリティ・ランバートに製作を担当させる。ヴェリティは監督のワリス・フセインと組んで番組作りに奔走し、頑固な老人というタイプキャストに悩んでいたウィリアム・ハートネルを説得して主人公を演じさせる。男性中心だったBBCにおいてヴェリティたちはさまざまな困難に立ち向かいながら、ついに新番組「ドクター・フー」を完成させる。しかし第1話の放送はケネディ大統領暗殺のニュースに埋もれてしまい…といようなプロット。

前半はBBCの女性初プロデューサー(あと劇中では言及されないがユダヤ系)のヴェリティと、BBC初のインド人ディレクターのワリス(ついでにゲイ)が女性差別や人種差別に直面しながらも番組を立ち上げていくさまが描かれ、後半は彼らが番組を去ったあと、ドクター役のウィリアム・ハートネルが高齢と病気によってセリフを憶えられずに苦悩する姿が描かれている。60年代のBBCを舞台にしていることでは「THE HOUR」に似ているところがあるな。生放送ではないのに編集が4回しかできず、小道具が故障しようとハートネルがセリフをトチろうと、ひたすら撮影が進んでいくさまが熱気があって面白いぞ。

脚本はマーク・ゲイティス兄貴。当時のスタッフや「ドクター・フー」の歴史に対する敬意が随所で払われていて非常によく出来た内容になっている。もともとは40周年のときに考案したものらしいが、50周年にもってきたことでさらなる円熟感が加わっているかと。最後に「あの人」が出てきたシーンは感動的でした。出演者はあまりよく知らない人たちばかりだけど、デイビッド・ブラッドリー演じるウィリアム・ハートネルは本人そっくりでよろしい。あと名物プロデューサーのシドニー・ニューマンをブライアン・コックスが演じていて、やはりあの人の演技は巧いよなあ。

ウィリアム・ハートネルって撮影現場でも実際にガンコで差別的だったという話を聞いて、個人的には必ずしもお気に入りの役者ではなかったんだけど、実際はもっと奥の深い人物であったことをこれを観て実感しました。作る側が熱意をこめて楽しんで撮影したことがひしひしと感じられる傑作ですよ。

「The Night of the Doctor」鑑賞


来週末の「ドクター・フー」50周年特番「The Day of the Doctor」に向けてファンの期待は高まるばかりでして、本家BBCもそれに絡んだ番組をじゃんじゃかと投入しており、ブライアン・コックス(学者のほうな)がドクター・フーの科学について語る番組とか、初放送時の裏側を描いたドラマなどが放送されるほか、twitterのハッシュタグの宣伝映像なんてものまで作られているわけです。

そしてこの「The Night of the Doctor」は特番に先駆けて放送(配信?)された7分ほどのミニエピソードで、主演はなんと8代目ドクターことポール・マッガン!彼のドクターは1996年のTVムービー(おれリアルタイムで観たよ)にのみ登場しただけで、その後アメリカでシリーズを作る話が頓挫したために旧シリーズと新シリーズのあいだのミッシング・リンク的な存在になっていたのだが、まさか約20年ぶりに彼がドクターを演じるとは。事前のインタビューで「自分は特番には出演しない」と発言していたのでファンを失望させてたのだが、ミニエピソードで登場させるとは憎いねスティーブン・モファット。

エピソードの内容はダーレク族とのタイム・ウォーが激化するなかで、出会った女性を救えなかったドクターが命を落とし、カーンの女たち(4代目ドクターのときのキャラクターらしいが、俺は知りませんでした)によって一時的に蘇生され、次のドクターの姿や性別などを選べると告げられた彼は、戦争を終わらすための「ウォー・ドクター」となることを決意する…とうようなもの。

ジョン・ハート演じるこの「ウォー・ドクター」が50周年で中心的な役割を果たすわけだが、「じゃあ9代目から11代目は、実は10代目から12代目になるのか?」などとさまざまな憶測がファンのあいだでは流れているらしい。まあここらへんはあと1週間待つしかありませんな。予算がなかったのか特撮がいつも以上にショボいのには目をつむるとして、マッガンのドクターって長髪だったせいかもっと女性的な印象があったけど、今回は短髪でもっと骨太な感じ。あと彼が主演のオーディオブックのキャラクターが言及されてるのかな?

久しぶりに顔を見たかと思いきやすぐに死んでしまうのは勿体ない話ですが、今までの大きな謎がこれで1つ明かされたわけで、いっそ今からでも8代目ドクターの出てくるプリクエルとか作っても良いんじゃないかと思うわけです。そしてすべては来週の特番で明かされるのか…?

「THE RETURNED」鑑賞


昨年フランスで放送されたTVシリーズ。原題は「Les revenants」で、同名の劇場映画(邦題は「奇跡の朝」)をもとにしているらしい。

舞台となるのは山に囲まれた小さな町。そこでは4年前に子供たちを乗せたバスが谷底に落ちて全員が死亡するという惨事が起きており、彼らの両親はそのショックからようやく立ち直ろうとしているところだった。そしてある日突然、犠牲者の1人だったカミーユという少女が家に戻ってくる。彼女は事故の記憶を持たず、姿も年齢も当時のままだった。死んだはずの彼女の帰還に、喜びよりも戸惑いを見せる彼女の家族たち。さらに10年前に自殺したサイモンという青年や、30年前に亡くなったコスタス夫人といった死者たちの当時の姿で親族や友人たちの前に現われる。そしてこれに合わせたように町のダムでは水位が謎の低下をはじめ、さらに町は不可解な現象に見舞われるのだった…というようなプロット。

ゾンビものというよりも、超常現象的なスリラーといった内容。日本の「黄泉がえり」と似ているとの声もあるようだけど、あちらは観てないのでよく分かりません。山のなかの小さな町を舞台にしたスリラー、という点では「ツイン・ピークス」を彷彿とさせるな。生き返った殺人鬼や不思議な力を持った少年、ダムの底に沈んだ動物たちなどとさまざまな超常現象が起きるものの、あくまでも帰ってきた人たちに対応する町の住民たちを中心にしたドラマになっている。登場人物が多いので誰が誰だか把握するのに時間がかかるけどね。

ヨーロッパ本土のドラマにありがちな、やけに暗い画面作りはあまり好きではないけれど(彼らはなぜ家でも明かりをつけんのか)、山やダムの光景などは非常に美しく、神秘的でもある。さらにモグワイ(スコットランドの彼らね)が音楽を手がけていて、その重厚かつ不気味な旋律が雰囲気にものすごくマッチしている。というか先に音楽を作ってもらって、それにあわせた撮影をしたらしい。

本国では来年にシーズン2が放送されるらしく、どのような結末を迎えるのか想像もつきませんが、第1話を観た限りではとても良くできた作品。例によって英語版のリメークも作られるようなので、どちらかが日本で放送される可能性はあるんじゃないかな。

このチャンネル4の予告編、音楽はあまり良くないな。