「DRACULA」鑑賞


NBCの新作シリーズ。タイトル通りドラキュラ伯爵が主人公なのだけど、いま流行りの色白なティーンのゴスものではなく、スチームパンクなノリの作品になっていた。

舞台は19世紀末のロンドン。血を与えられて長い眠りから甦ったドラキュラは、アメリカ人のアレキサンダー・グレイソンと名を変えてイギリスの社交界に登場する。そこで彼はケーブルも不要な無料のエネルギーを披露して技術者たちを驚かせるが、彼の真の目的は世界を裏で操る組織「オーダー・オブ・ザ・ドラゴン」の壊滅にあった。ドラキュラの新しいエネルギーによって自分たちの支配が脅かされることを危惧する「ドラゴン」の幹部たち。そしてドラキュラと「ドラゴン」の争いに、新聞記者のジョナサン・ハーカーと婚約者のミナ・ハーカーが巻き込まれていく…というようなプロット。

The CWの「Reign」とかこれとか、今年は地上波局に時代劇の番組が進出してきているような?グリーンスクリーンの進歩により、大掛かりなセットを作らなくてすむようになったからかな。相変わらず有色人種のキャストが少ないのは感心しませんが。主役は「Tudors」のジョナサン・リース=マイヤーズで、品格のある感じは良く出ているんじゃないですかね。アメリカ訛りのアクセントがひどいという評判もあるようだけど、俺はあまり気になりませんでした。それ以外のキャストは特に有名な人はいないかな。

ドラキュラは屋敷の下に巨大な装置を備えていて、そこから無尽のエネルギーを引き出して「ドラゴン」を潰そうとするわけで、「これからは技術の時代だ!」とか言ったりするからパワーゲームが主体の話になるかと思いきや、さっそく実力行使に出て「ドラゴン」の幹部を夜道で惨殺してたりする。あと切り裂きジャックが吸血鬼だったと示唆されるようなセリフもあったりして、こういうスチームパンク(架空歴史?)的な要素は今後の展開にどのくらい絡んでくるんだろう。第1話は舞台のセットアップに時間が費やされていて、ミナとジョナサンの役割もいまいち不明だったな。でも話の持っていき方によっては、かなり面白くなりそうな可能性を秘めた作品だと思うので、NBCがちゃんとサポートしてくれると良いのですが…。

「The Thundermans」鑑賞


ニコロデオンのガキンチョ向けシットコム。

メンバーそれぞれが超能力を持ったサンダーマンさんち一家を主人公にしたもので、父親のハンクと母親のバーバラはかつてはスーパーヒーローとして活躍していたが、4人の子供たちを持ったことからヒーロー稼業を引退し、一般人として郊外に暮らしていた。ティーンの娘のフィービーも普通の女の子として生活したいものの、スーパーヴィランになりたい双子の兄のマックスや、パワーで遊びたがる妹のノーラと弟のビリーが邪魔をして…というようなお話。

設定はもろに「Mr.インクレディブル」の流用。パパさんが呑気な力持ちで、普通の暮らしをしたいのにいろいろボロが出て、正体がバレるたびに引っ越さなければならないところとか。ちなみにハンクは怪力のほかに飛行もできて、バーバラは電気を操れ、ノーラは目から熱線を放ち、ビリーは高速で移動でき、フィービーとマックスはテレキネシスなど複数の能力を持っているという設定らしい。目から怪光線を出してチキンを焼いたりするノーラがかわいいな。

昨今のスーパーヒーロー・ブームに露骨に便乗した内容だし、所詮は低予算の他愛ないシットコムなんだけど、このユルさはこれはこれでありなんじゃないでしょうか。「一般家庭のスーパーヒーロー」というとABCが数年前に「NO ORDINARY FAMILY」という番組を作ってコケてたけど、変にサスペンス要素を絡めたあの番組よりも、このようにコメディに徹したほうが面白いんじゃないですかね。大げさに言えば、スーパーヒーローものの実写化の1つの答えがここにあるのかと。

「Super Clyde」鑑賞


ルパート・グリントとスティーブン・フライが出演したシットコム。シリーズ化されることはなかったものの、パイロット版がCBSのサイトで公開されていた。ボツになったとはいえパイロット版がこうして公開されるのは良いことだと思うので、NBCの「ワンダーウーマン」とかフォックスの「Locke & Key」なども公開されるべきだろう。

主人公のクライドはスーパーヒーロー・コミックが好きな内気な少年で、若くして両親を亡くしてからは兄と姉とともに裕福な叔父に引き取られて暮らしていたものの、その叔父も亡くなり、さらに彼の遺産がクライドたちには譲られなかったころからファストーフード店でバイトするしがない日々を送っていた。しかし叔父の遺産が実は遺言によって、彼の死後しばらくの間はクライドたちに譲るなと命じられていたことが判明し、突然クライドたちのもとに大金が舞い込んでくる。兄や姉がその金を私利私欲につぎ込む一方で、クライドは叔父がその財産を人助けのために使っていたことを知り、自分もヒーローになろうと思って、叔父の執事だったランドルフとともに人助けを試みるのだったが…というようなプロット。

話の設定はね、悪くはないんだけどねぇ。実際に観てみると確かにつまらなくて、シリーズ化されなかったのも無理はないかなという感じ。どうも話のテンポが悪いというか、ジョークのあとに変な間があるというか、なんか観ててスッキリしないんだよな。ルパート・グリントも話し方に力が入りすぎていて軽快さがないし、彼ってこんなに演技が硬かったっけ。タイラー・ラビーン演じるクライドの兄とかも、話にいまいち絡んでこなくて存在意義がよく分からん。タイラー・ラビーンは毎年新たなシットコムに出て打ち切られている感があるが、今年はついに放送されることもなかったか。

あとクライドがコミックのファンだということで、劇中のフォントにコミックサンズが使われてたり、映像がマンガコマのようになったりするんだが、あれ観て喜ぶようなコミック・ファンっているのかね?あの駄作「ジョナ・ヘックス」の冒頭クレジットもモーションコミックっぽくなっていたけど、コミックに関係した内容だからコミックっぽい映像にしようね、という考えは安直だと思うのは俺だけでしょうか。

アメリカのTVシリーズにイギリスの俳優がどんどん出演しているなか、知名度の高い俳優が2人も出ているのにシリーズ化されなかったのは皮肉ではありますが、来年あたりまた頑張って再挑戦して欲しいところです。

「MASTERS OF SEX」鑑賞


Showtimeの新シリーズ。公式サイトで第1話が視聴可能だよ。

ドキッとするような題名だが内容は決して卑猥なものではなく、50年代から90年代にかけて性科学の研究を行ったウィリアム・H・マスターズとヴァージニア・ジョンソンを主人公にした話になっている。産婦人科医であったマスターズは男女における性的興奮などに興味を持ち、勤務する病院が難色を示すのにも構わず独自に研究行為を行っていく。その彼に秘書として雇われたジョンソンは彼の有能な助手として働き、やがてパートーナーとなるのだが…というようなプロット。

当然ながら男女の裸もたくさん出てくるのですが、電極をいろいろ付けられて科学者の前で行為に及んでたりするのを見るとなんか萎えますね。カメラをつけて女性の内部を調べよう、なんてことを大真面目にやってるのは結構笑えたりする。テーマ的にはどうしても「愛についてのキンゼイ・レポート」に似ていて、マスターズが美人の妻を持ちながらも性には完全に素人で、そのため性を科学的に研究しようと思い立つあたりも「キンゼイ」に似ているかな。一方でジョンソンは性的に奔放で、その経験をもってマスターズを助けていたりする。

マスターズを演じるのがマイケル・シーンで、ジョンソンを演じるのがリジー・キャプラン。マイケル・シーンの演技を毎週観れるというのは、結構特筆すべきことなのでは。他にもボー・ブリッジスやマーゴ・マーティンデールなどが出演していた。

マスターズとジョンソンが実生活で結婚する(後に離婚)することを考えると、病院での研究だけでなく私生活のほうでもドロドロとしたドラマが描かれていくのかな。また彼らの研究は当時でも現在でも大きな議論を呼んだもので(同性愛者の「矯正」なども試みたらしい)、大きなタブーをきちんと扱っているのには好感が持てるのですが、時代的には60年代の活動が中心になるのかな?ウーマンリブや公民権運動などが絡んでくることも示唆されてます。

「AVクラブ」では今年の新シリーズのうちでも最良のもの、というような褒め方がされていたけど、個人的にはこれって「キンゼイ」でやってなくね?という感想でした。でも「マッドメン」みたいに高い評価を受ける作品になる可能性は高いかもしれない。

「HELLO LADIES」鑑賞


「THE OFFICE」以来、リッキー・ジャヴェイスと組んでいろいろコメディ番組を世に出してきたスティーブン・マーチャントが、ジャヴェイス抜きで主演・脚本・監督を担当したHBOの新シリーズ。第1話がyoutubeにアップされていた

主人公のスティーブンはロマンスを求めてイギリスからロサンゼルスにやって来たウェブデザイナー。女の子をゲットするために律儀にクラブに行って「やあ彼女たち!」と声をかけたり、知り合った女性を食事に誘ったりするもののすべて失敗続き。その一方で彼の友人たちはうまく女性たちをものにしていて…というようなプロット。

少なくとも第1話はあまり話らしきものがなくて、スティーブンの奮闘ぶりがひたすら描かれる内容になっている。コメディ番組とはいえゲラゲラ笑えるようなものではなくて、同じくイギリス人が絡んだHBOの「エキストラ」とか「FAMILY TREE」みたいな、ペーソスが入り混じったコメディドラマになっているかな。クラブでカッコつけるんだけど相手にされず、酒だけ奢らさせられる主人公の姿は他人事とは思えないですね。

ただやはり立派な家を女友達とシェアしていて、一緒にクラブ行くような男友達がいて、ウェブデザインで生活していて、身長2メートルある主人公が非モテというのはなんか無理があるんじゃないだろうか。本当にモテないというのはなあ、といろいろ書き連ねたいのだがそれはまた別の機会にする。1人でさびしく夕食を電子レンジで温めてる姿なんかは似合ってるんだけどね。

第1話のパターンがこのまま続くようだとキツいだろうが、今後の展開はどうなっていくのかな。こないだの「FAMILY TREE」なんかは話が進むにつれてどんどん面白くなっていったので、そういうことになるのを期待。