レジデンツの正体!

レジデンツが舞台裏で素顔で演奏している映像なるものを、YouTubeで発見。こりゃ世紀の大発見だと思って観てみたら、ビッグフットやネッシーの写真並みのピンボケ状態。しかし熱狂的なファンには分かるようで、「あの額はホーマー・フリンに違いない!」なんてコメントが寄せられている。

やはりホーマー・フリンはレジデンツの一員だったのか?

「怒りのキューバ」鑑賞

隠れた傑作「怒りのキューバ」こと「SOY CUBA」を観る。この邦題からはまるでシルベスター・スタローンがキューバに潜入し、反体制ゲリラと結束してカストロ政権を転覆させる映画のような印象を受けるけど、当然そんな映画ではなくて、これはカストロによるキューバ革命を記念した1964年の国策映画。

当時同盟関係にあったソビエトからスタッフを借り出し、ミハイル・カラトーゾフ(監督)やセルゲイ・ウルセフスキ(撮影)などが携わって作られた映画だが、もう映像の美しさがハンパじゃないんですよ。キューバだけでなくソビエトからも援助を受けた潤沢な予算を活かし、膨大な数のエキストラ、凝ったセット、美しい大自然の光景、モノクロの画面に映える絶妙なライティング、縦横無尽に動くクレーンショット、延々と続く長回しなど、驚愕するシーンやカメラワークが次々と披露されていく。「ちょっと待て!いまの場面どうやって撮ったんだ!」と思うことが何度あったことか。例えば有名なプールの長回しのシーンなんかは、複数のカメラマンが並んでカメラを順にかつぐことで長回しを実現し、さらに潜水艦の潜望鏡に用いられる特殊なレンズを調達し、水中でもカメラのレンズが曇らないようにしたんだとか。そんな労力を惜しみなくかけてしまっているのがすげぇ。共産主義は偉大なり。両国民による鑑賞を念頭においてるため、スペイン語のすべてのセリフのあとにロシア語のセリフがかぶさる作りになってるのは耳障りだけどね。

原題は「I AM CUBA」つまり「私はキューバ」という意味だが、キューバの大地そのものが狂言回しの役となって、革命に至るまでの4つの物語がオムニバス的に語られていく。その4つを順に挙げると:

1、白人の資産家に体を売って暮らす貧しい娼婦の話。
2、悪名高きユナイテッド・フルーツ社へサトウキビ畑を売られることになった老小作の話。
3、反体制運動へと目覚めていく学生の話。
4、政府軍の爆撃に息子を殺され、革命軍に参加する農民の話。

いずれの話でも革命前の人々の暮らしがいかに弾圧されていたかを巧みに語っているんだが、あまりにも映像が美しすぎるため皮肉にもメッセージ色が薄くなっており、よって公開時はキューバ国民にもソビエト国民にも総スカンをくらったそうな。そのため長いあいだ忘れられた作品のような扱いを受けていたが、90年代になってやっとアメリカでも鑑賞されるようになり、スコセッシやコッポラといった有名監督の後援をうけて再評価されるに至ったらしい。

ハリウッドとは無縁のところで、映画がひとつの完成形に達していたことを証明する貴重な作品。現代のアメリカ映画でも、この映画のカメラワークを流用している作品が結構あるらしいぞ。日本もチャチな恋愛映画とかを作っておらずに、いっそ国家予算を使った巨大プロジェクトを立ち上げ、国民を総動員した超大作をガツンと1本作ったほうが世の中のためになるんじゃないだろうか。

ジョージ・タケイ結婚

今のところはこないだカリフォルニア州で承認された同性同士の結婚の許可証を入手しただけで、挙式するのは9月だとか
おめでとうございます。

前にも書いたけど、大戦中に日系人の強制収容所に入れられた経験のある有名人なんてそういませんぜ。俺が「スター・トレック」をはじめて観たのは80年代後半くらいだったけど、あの時点でも日系のハリウッド俳優というのは珍しく、あとはパット・モリタとショー・コスギくらいしかいなかったんだよな。ゲイの日系人という点でも、日本でもっと評価されていい存在のはず。

それにしても毛唐どもはなぜTAKEIを「タカイ」と発音するんだろう。

「クライ・ベイビー」のミュージカル閉演

さいきん開演したばかりのような気がする、ジョン・ウォーターズの「クライ・ベイビー」のミュージカル版が早くも閉演するそうな

こないだのトニー賞で何も受賞できなかったのが直接の原因らしいが、最優秀ミュージカルにノミネートされておきながら、受賞できなかったという理由で閉演するというのはシビアだよなあ。既に支払った制作費をどうにかリクープしようとする映画と違い、ミュージカルは上演すればするだけコストがかかるから打ち切りの度合いが高いということなのか。

「ヘアスプレー」は今でも上演されてるらしいから、これでウォーターズ作品のミュージカル化の流れが途切れないでほしいところです。次は「セシル・B・ディメンティド」か「ポリエステル」あたりでどうでしょ。

「MANT!」鑑賞

ジョー・ダンテ監督の、俺が死ぬほど好きな作品「マチネー/土曜の午後はキッスで始まる」(観ろ!)の付属作品である「MANT!」をついに観る。これは「マチネー」の主な舞台である映画館において公開されるホラー映画という、いわゆる劇中劇的なもの。

下の動画を観てもらえれば分かるように、内容は50年代のB級ホラー(具体的にはウィリアム・キャッスルの作品)のパスティーシュ。キャッスルの得意技だった怪しいギミックももちろん含まれていて、何の脈略もなく場面が映画館の中になり、劇中の観客が実際の観客に向かって「あなたの後ろに怪物がいるわ!気をつけて!」なんて叫ぶシーンがあったりしてすげえ楽しい。残念ながらフル尺の映画ではなく20分ほどのものだが、放射能によってアリと同化した男が凶暴化し、しまいには巨大なアリの怪物になって街を破壊する、というのが主なストーリー。人とアリの怪物だから「MANT」。なーんて安直なネーミング。

でもB級ホラーをバカにしたパロディには決してなっておらず、ちゃんと50年代に活躍した役者たちを起用するなど、ダンテの屈折してるようで実直な(あるいはその逆)オマージュがひしひしと感じられる佳作になっている。「マチネー」はDVDも入手困難になっている状況だが、ぜひまた観たいなあ。B級映画監督を描いた作品としては「エド・ウッド」よりも優れていると個人的には思っているのです。

これが「MANT!」のトレーラー:

でこっちが「マチネー」のトレーラー: