「ガンダーラ」鑑賞

「ファンタスティック・プラネット」や「時の支配者」などで知られるフランス・アニメの重鎮、ルネ・ラルーの「ガンダーラ」(1988)を観た。

地上の楽園ガンダーラでは人々と動物が平和に暮らしていたが、そこに何者かが攻撃をしかけ住人たちを石化させてしまう。事態を重くみたガンダーラの指導者たちは、シルバンという若者を調査に派遣させる。ミュータントたちの住む土地を通り抜けたシルバンが見たものは、石化光線を放つ黒いロボットの集団だった…というような話。

事件の黒幕というかロボットたちを操る存在のところまでシルバンが比較的容易に辿り着いてしまうので、一瞬あれ?と思うんだけど、そこからの展開が長い。ガンダーラにロボットたちが侵攻するなか、突然シルバンは1000年もの睡眠に入ることになって、目が覚めたかと思たら知り合いのミュータントがいて「お久しぶり!」なんて言い合うし、1000年後の世界に来たという雰囲気がまるでないんだよね。「時の支配者」では最後に突然タイム・パラドックスが出てきてそれなりに意外性があったけど、この作品ではプロットを不必要に難解にしてるような気がする。

ルネ・ラルーの作品のストーリーテリングって日本人のテイストからすると徹底的に「何か」が欠けているところがあって、それはそれで異国情緒というかセンス・オブ・ワンダーの感じを生み出しているんだが、この作品ではそれがいまいち弱いかな。もしかしたらこれはアニメーションの出来が良いことに起因してるのかもしれなくて、「ファンタスティック・プラネット」では動きの少ない絵本のような作画スタイルにおいて人間が狩られ殺されていく描写がとてつもなくインパクトがあったけど、この作品はアニメの出来がいいだけに逆に「見慣れた」感じがしてしまうのかもしれない。それでもガンダーラの奇妙な動植物とかミュータントの描写は、日本のアニメじゃまず目にしないものなので見てて楽しいけどね。

この作品よりも「ファンタスティック・プラネット」や「時の支配者」を先に観ましょう、といった出来の作品。

アロノフスキーの新作

ベネチアで金獅子賞か。へえ。

今までの作品とはずいぶん違ったものになってるみたいだけど、評判はいいので期待したいところ。

ちなみにこの映画の脚本家は「オニオン」の元スタッフ。「The Onion Movie」の脚本書いた人の作品が国際的な評価を受けようとは、誰が想像できたことかしらん。

「タイム・アフター・タイム」鑑賞

前から観たかったニコラス・メイヤー監督の「タイム・アフター・タイム」を鑑賞。

H.G.ウェルズが発明したタイム・マシンを使って切り裂きジャックが1893年から1979年に逃亡。それを追ってウェルズもタイム・マシンに乗り込むが、20世紀の世界は彼が予想したようなユートピアではなく、貧困と暴力が蔓延していることに彼は愕然とする…。といったようなストーリー。H.G.ウェルズを演じるのはマルコム・マクダウェル。

切り裂きジャックがテレビに流れる暴力的な映像を指して「これは俺の世紀だ。世界は俺に追いついて、俺を追い越した」なんて語るシーンは、アラン・ムーアの「フロム・ヘル」に通じるものもあって「おおっ!」と思ったものの、その後の展開は比較的凡庸で、テレ東が昼間によく流してる映画のような内容になってしまったのは至極残念。ウェルズとジャックの知的な勝負を期待してたのに、ラストの対決もなんか一方的に終わってしまったのは興ざめだった。

あとウェルズが恋仲になるヒロインをメアリー・スティーンバージェンが演じてるんだが、仏頂面なうえに声がやたら甘ったるく、作品のなかでは浮いた存在になっている感が否めない。タイムトラベラーと恋仲になる女性という意味では「スタートレックIV」(脚本がニコラス・メイヤー)のキャサリン・ヒックスのほうがもっと生き生きとしていたぞ。

決して悪い作品ではないものの、期待してたほどではなかった作品。あと30分くらい短くても良かったかな。

「SAMURAI GIRL」鑑賞

タイトルを読んだだけで脱力感に襲われたABCファミリーの番組「Samurai Girl」を観る。

日本の名家で育ったヘブン・コゴ(これで日本人の名前らしい)は親の意向によりサンフランシスコで政略結婚をさせられようとしていたが、結婚式を忍者の集団(!)が突然襲撃し、彼女の兄が殺されてしまう。コゴ家に伝わる刀とともに逃げ延びた彼女は、サムライの奥義を学び、彼女を狙う集団と戦うのであった…。というのがおおまかなあらすじ。ここから「キル・ビル」みたいな暴走した展開を期待する人もいるかもしれないが、アクションはショボいし演技もヘタで、観てて面白いところは殆どなし。「ロズウェル」のブレンダン・フェアが出てるけど、あいつあんなに演技が下手だったっけ。

主人公を含む多くの登場人物が日本人という設定ながらメイン・キャストに日系人俳優がいないことからも分かるように、アメリカの日本に対する中途半端なイメージがそのまま映像化されたような番組。おかげで着物とか建物のデザインは中華やコリアンが入り混じってちゃらんぽらん。いちおう原作があって、キャリー・アサイなる日系人(?)が書いたジュブナイル小説らしいんだが、番組の出来から察するに日本文化の勉強なんてろくにやってないんだろうな。まああれですよ、「ティファニーで朝食を」でミッキー・ルーニーが訳の分からない日本人を演じてたのと同じで、我々日本人としては苦笑いしながら観るしかないような代物。

アメリカは黒人が大統領になりそうだってのに、アジア人は相変わらず理解されてないなあ、と実感させてくれる番組ではあった。

トレーラーの声の人

アメリカの映画のトレーラー(予告編)のナレーションって、「ポケモン」みたいな作品でもやけにドスのきいた声が使われていて、なんでみんな同じように聞こえるんだろうと昔から不思議に思っていたのだが、何のことはない、単にみんな同じ人がナレーションをやっていたからだったのか!

それがドン・ラフォンテーンという声優さんなんだそうだけど、こないだ他界してしまったそうな。残念。でもトレーラーのスタイルを確立させた人だから、今後も彼の声を真似たナレーションが多様されることになるんだろうな。