「恐怖のまわり道」鑑賞

こないだRotten Tomatoesのビデオキャストを観ていたらエロール・モリスが出て来て彼の好きな映画ベスト5を挙げておりまして、そのなかで「恐怖のまわり道」(Detour, 1945)なる低予算作品を史上最高のノワール映画だと讃えていたのが気になって、さっそくarchive.orgでダウンロードしてみたのであります。

物語の主人公はニューヨークのしがないピアノ弾きで、ハリウッドに行った恋人に会いたくなって西へヒッチハイク旅行をしていたところ、裕福そうな男性の車に乗ることに。そしたら何の因果かその男性が急死してしまい、仕方なしに主人公は彼の死体を隠して、彼の免許証を使って身分を偽り旅を続けることに。そして到着したカリフォルニアで1人の女性を乗せてあげるのだが、彼女は急死した男性のことをたまたま知っており、主人公が身分を偽っていることに対して恐喝をしてくるのだった…というのが大まかなプロット。

鬼女のごとく恐喝をしてくるアン・サヴェージの演技はなかなか迫力があるものの、まあ普通の作品かなあといった感じ。ストーリーの大部分が車中で進行していく点がイマイチなのかな。モリスに限らずアメリカでの評判は高い作品らしいけど、個人的にはさほど素晴らしい作品だとは思えなかった。

ちなみにモリスの最も好きな映画は、なんと原一男の「ゆきゆきて、神軍」なんだそうな!インタビューの対象が何を言い出すのか、まるで予想がつかない状況というのが彼にとっての憧れらしい。まあ確かに奥崎謙三が相手じゃ予想はつかんよな…。

「THE GRAVEYARD BOOK」読了

ニール・ゲイマンによるジュブナイル向け小説。ゲイマンの小説ってデビュー作の「ネバーウェア」が(彼のコミック作品に比べて)凡作だったのでちょっと敬遠してたんだけど、これはとても楽しめる一冊だった。

キップリングの「ジャングル・ブック」を下敷きに、悪者によって両親と姉を殺された赤ん坊が、偶然にも魔の手を逃れて墓場にたどり着き、そこに住む幽霊たちによってノーボディ・オーウェンズ(通称ボッド)と名付けられた赤ん坊は墓場で育ちながらさまざまな冒険を経験していくのでした…というのが主なプロット。各章がノーボディの成長にあわせた冒険譚になっており、ゲイマンの得意とするホラーとサスペンスとユーモアが絶妙にミックスされた文章のおかげで、読んでいてどんどん話に引き込まれていく。デイヴ・マッキーンによるイラストも数は多くないものの話の雰囲気を伝えるのに役立っている。

墓場にはいろんな時代からの幽霊が出てくるほか、魔女や狼人間や屍食鬼なども登場。その一方で「人間界」におけるノーボディ少年の冒険も描かれ、どの話も展開が速くて飽きさせない。幽霊たちの能力を身につけたノーボディと、彼の後見人であるサイラスがちょっと万能すぎるかなという気もしなくはないが、それでも最後の悪者との対決などはスリル満点の内容になっている。

児童文学の権威あるニューベリー賞を受賞したほか、ニール・ジョーダン監督で映画化も決まったとのことなので、日本でもいずれ訳書が出るだろうから多くの人に薦めたい傑作。原書も難しい英語では書かれてませんよ。

「THE WIRE」シーズン4鑑賞

前のシーズンからずいぶん間があいてしまった。いちばん出来のいいシーズンなんて評判を聞くと、メシでも食いながら気軽に観る気になれなくてさ。

当然シーズン5は未見なのでこれが本当に最高のシーズンなのかは不明だが、話がここまで進んでくると人物関係とかが非常に複雑に絡み合ってすごいことになってるなあといった感じ。シーズン3以上に市政に焦点をあてた内容になっていて、市長の座を目指すトミー・カーケッティの選挙運動と、彼の当選後に山積みにされた行政上の課題が、汚職にまみれたボルチモアの内情とともに描かれていく。それと並んで大きな焦点をあてられているのが教育制度の問題で、一部の教育者たちの努力にも関わらず、学校の予算の欠如や家庭内の問題などによって生徒たちがドロップアウトしていくさまが、4人の少年たちを中心に語られていく。地上波のテレビ局ではセレブな白人のティーンたちによる学園ドラマが相変わらずお盛んですが、それに対して黒人しかいない学校の物語というのは非常に斬新に感じられた。不遇な目に遭うのが子供たちということで非常に後味の悪い結末を迎えることになるけど。

なお刑事ドラマとしての部分は、犯罪班が最後まで結成されないことなどから捜査が一向に進まずかなり欲求不満な出来。ここらへんはシーズン5で挽回されることに期待しましょう。マルロ・スタンフィールドの一味って狡猾すぎるせいか、バークスデイル一味に比べてなんか面白みがないんだよな。

日本でも学級崩壊なんて騒がれてるけど、アメリカに比べればまだ可愛いもんですよ。医療制度にしろ教育制度にしろ、彼の国はどこかで進む道を選ぶのを誤ったんだよな。日本が同じようにならないことを願うばかりです。

ニュー・オーダーの近況

巷で話題になってますが、ピーター・フックが脱退したニュー・オーダーはブラーのアレックス・ジェームズをベースに加えて新しいバンドとして活動するそうな。その名も「バッド・ルーテナント」!

 カッコ悪い…。

よりによってニコラス・ケイジ主演で同名の映画が公開されるときに、こんな名前つけてどうすんだよ。しかもブラーだってこないだオリジナル・メンバーで活動再開したんじゃなかったっけ?アルバムが出せるくらいの収録はすでにしてあるという話だけど、とても企画倒れになりそうな気がする。ちなみにジョイ・ディビジョンの頃から続いていた、ナチスに関するバンド名というのはやめたんですね。

むしろフッキーがマニとアンディ・ルークと数年前に結成したというベース3人のバンド「フリーベース」のほうが気になるんだが、あっちも完全に企画倒れになっているようで…。